一線の見極め
「はあぁぁ!」
ズバァ
「ピギュィィ!」
防壁入り口。アルスとダンテはひたすらに、ただひたすらにオークを切り続ける。
「うがああああ!!!」
ズバアアァァ
「ピギャァ!」
しかしさすがに息が上がってきている。どこまで持つかはわからなかった。
「はぁっ! はぁっ! ダンテ! 気づいてるかい!?」
「はぁ! はぁ! あぁ! あのデカ物だろ!? でもどうしようもねぇぞ! こっちも手いっぱいだ! おりゃああ!」
ズバァァァ
「ピギイイ!」
オークを切りながら1体の大きなオークの存在を確認し合う。そしてアルスは戦いながら観察し、気づいたことをダンテに話す。
「今外に見えるオークのほとんどは足を損傷し動きが鈍くなっている! おそらくカルがやってくれたんだろう! そしてきっと今、彼はあの大きなオークのところにいる!」
「あぁ!? まじかよ!? 大丈夫なのかあいつ!」
ダンテが外をちらっと確認すると、確かにほとんどのオークが変な動きで鈍くなっていた。そしてその上で大オークに向かっていることに驚く。
「ダンテ! 今防壁内にいるオークを片付ければ、あとは鈍いオークだけになるはずだ! だから、この場を君に任せてもいいかい!?」
「……!」
アルスはカルドラの加勢に行くつもりなのだろう。そしてこの場はダンテなら任せられると信頼している。
騎士として、期待されたら応えないわけにはいかなかった。
「安心してさっさと行ってきやがれ! カルのやろうがどうなってるか分かったもんじゃねぇ!」
「ダンテ! ありがとう! まかせたよ!」
そう言ってアルスはオークを切り伏せながらカルドラの元へ向かった。
そして残ったオークたちの視線がすべてダンテに集中する。
「はぁ! はぁ! はぁ! さぁおまえら…! 楽しい楽しい延長戦の時間だ…! たっぷり楽しもうぜぇぇ!!!」
ダンテは気力を振り絞り大剣を振り上げる。
ブォン
「くっ!」
ブオン
「うぉっ!」
ブゥン
「くそっ!」
カルドラはオークたちの攻撃を紙一重で躱し続けていた。ギリギリすぎて腱を狙うこともできない。
そして巨体に似合わず俊敏な大オークに翻弄され、周りのオークたちもじりじりとプレッシャーを掛けてくる。
「はぁ!」
ズバッ
「ピギ!」
(くそっ! 倒せない!)
カルドラも刹那の隙をみて攻撃を加えてはいるが、ギリギリの刹那での攻撃故に急所には届かない。そもそもカルドラの攻撃力でオークを倒すには何回も急所へ攻撃を加えなければならない。
これがカルドラの最大の弱点だ。
身体強化の効果が弱いため、いくら特殊体質で補っても、攻撃力では常人には敵わない。常人と同じ攻撃力を求めれば、必ず身体が壊れる。
そして今の状況でそれをやれば、やった瞬間に痛みで動きが鈍り、他のオークの餌食になる。
ジリ貧だった。
(一旦引くか、だめだ! 後方がどうなってるかわからない! 下手したらこいつを連れていくことになる! でもこのままじゃ捕まる!)
必死に考えるが、今のままではどうしようもなかった。
そう、今のままでは…。
(……フーーーッ。覚悟を決めよう。一撃で倒せるように出力を上げて、デカ物以外を片付ける。おそらく腕が壊れるが、痛みによる硬直を最小限に抑えれば捕まることはないはずだ)
ちらっと、数を確認する。
(デカ物の周りにいるのは6匹…、まずはこいつだ!)
覚悟を決め、目の前の首に切りかかった。
ズバアァ
「ピギュ!」
オークの首が落ち、黒い霧となり消え始める。しかし…。
ミシミシミシミシ…
「ぐぅっ!」
右前腕の骨がしなり、ひびが走る。
(耐えろ…! あと5匹…!)
硬直を最小限に身を翻し、次のオークへ切りかかる。
ズバァァ
「ピギイ!」
2匹目も黒い霧となる。そして…。
メキッ
「ん゛ううぅっ!」
しなりに耐え切れず右前腕の骨が折れた。動きが鈍る。
そしてその硬直を見逃さず、オークの拳が迫る。
(!!!)
咄嗟に左手の剣でカウンターを狙う。
ズバッ
「ピギュ!」
仕留めた。しかしオークの拳が同時に突き刺さっていた。
ゴキッ
「ぐがああああ!!!」
右腕でガードし直撃は避けたが衝撃が貫通し大ダメージを貰ってしまった。
吹っ飛ばされ、ごろごろと転がる。
「……ぐっ!……ぐぅっ!……」
必死に体制を立て直そうとするが、ダメージが大きすぎて身体が言うことを聞かなかった。そんなカルドラに残ったオークたちが迫る。
(……くそ…! 動け…! もう少し、こいつらの足止めを…! …ぅ…視界が…っ)
オークが拳を振り上げる。
(………動け……、……だ…めだ……意識…が……)




