正念場
一方、後方ではメイがひたすら魔法をぶっ放していた。
「フレアボム!」
ボガアアアアァァン
「ピギィィィ!」「ピガァァァ!」「ピギャァァァ!」
「フレアボム!!」
ボガアアアアァァン
「ピギゥィィィ!」「ピグャァァァ!」「ピギャァァ!」
「フレアボム!!!」
ボガアアアアァァン
「ピギィアァ!」「ピギュァァァ!」「ピギャィァ!」
次々と防壁に押し寄せて来るオークに向かって、防壁内からひたすら魔法を放ち続ける。
「……はぁっ!……はぁっ!……」
わらわらわらわらわらわらわら
「ピギイイイイ!」「ピギイイイイ!」「ピギイイ!」
「…んぐっ……んぐっ…」
マナポーションをがぶ飲みし、魔力をある程度回復させる。
「わらわらわらわらと…、うっとおしいのよあんた達ぃぃ! インフェルノぉ!!!」
ブオガアアアアアアアアアア
「「「「「ピギャアアアアア!」」」」」
少し離れた所でメイが魔法を放ち続ける中、アイーシャは膝をつき、胸の前に手を合わせ、心静かに集中していた。
「………………、………………、………………」
小さく呼吸を整え、防壁への魔力供給に集中。
数日前のオーガ戦では異常な攻撃力を一点集中されたために魔力拡散を抑えることができず、防壁にひびを入れられてしまった。しかし今回は防壁全体に攻撃が分散しているため無駄な魔力消費はほぼ無い。集中さえ乱さなければ安定して防壁を維持することができる。
アイーシャのやるべきことは、少しでも長くプロテクションを維持すること。仲間を信じ、それだけに集中する…。
カルドラは姿勢を低くして、走る。
スパッ
「ピギ!?」
走って…切る。
スパッ
「ピギャ!?」
狙うのは足の腱。オーガの時と同じだ。
しかし今回は片方だけでいい。少しでも動きを鈍くできればいいのだ。鈍いオークが増えれば増えるだけ、こちら側の勝利が近づく。
スパッ
「ピギィ!?」
ミシ… ミシ…
「………」
低い姿勢で走っているせいでだいぶ足にキている。しかし止まらない。
集中し、音の小さなゆっくりな世界で風を感じ、カルドラは走る。
スパッ
「ピギャ!?」
「………」
走りながら周りを見渡す。
かなりの数の腱を切った。そのおかげか、周りのオークたちのほとんどは動きが鈍くなっている。
両足にかなりの負担を掛けてしまったが、ここまでなんとか壊れずに済んだ。
後方に目をやると、草原側もだいぶ数が落ち着いてきているようだ。
(よし。ここまでやれば、あとはアルスたちと合流して、3人で防御に徹すればいい。でもアイーシャの魔力量も気になる。一旦プロテクションの中へ戻って確認を……………ん?)
カルドラが考えを整理していたそのとき、1つの大きなモノが視界に入った。
(……はは、勘弁してくれよ)
いつ間にか森から、周りにいるオークより"一回り大きなオーク"が歩いてきていた。明ら様にタフそうである。
生物のオークにあんな巨大なものはいない。魔物として生まれたが故の突然変異だろう。
ちらっと遠目に防壁入り口の攻防をみる。数が減ってきたとはいえ、まだアルスもダンテも手いっぱいだ。
(あれがプロテクションに到達したらそれだけで戦線が崩れるな…。よし。今度はあれの足止めだ)
すぐに判断を下し、大オークに向かっていく。
近づいたカルドラはその大きさを目の当たりにし、額に汗が滲む。
(3メートルくらいか…。腱切れるかな?)
さっそく腱に切りかかってみる。
ズッ…
(…!!! くそ…!)
脂肪が厚く腱まで刃が届かなかった。
(オーガの時みたいにもっとギリギリまで筋力を使うしかないな。そして脂肪を削ぐように切り続ければいずれは切断できるはず)
しかし簡単には切り掛からせてはくれなさそうだ。
切りつけられた大オークがカルドラに攻撃を開始する。拳を振り上げ殴り掛かって来る。
ブォン
「おっと…」
意外に俊敏だった。
(油断すると捕まるな……ん?)
「「「ピギィィィ…」」」「「「ピギイイィ…」」」
大オークに集中していたら、いつの間にか普通のオークが集まってきていた。走るスペースが狭くなっている。
(……こりゃぁ、まいったね)




