生還祝いです
「…………むにゃ?」
目が覚めた。朝日が差す知らない天井が見える。
(あれ? どこだ?)
首を回して周りを確認すると、右側の目の前にソラの顔面が現れる。
「………スゥ………スゥ………」
気持ちよさそうに寝ている。
ソラを起こさないように上体を起こす。
「………どこだここ」
見渡す限り知らない壁が覆い尽くす。
なぜ自分はこんなところで寝ていたのか。記憶を辿っていると右手が柔らかいものに触れた。
「……………すぅ……………すぅ……………」
見るとベッドの横から顔を出したアイーシャが寝ている。今のは頬に触れた感触だったようだ。
「アイーシャ…」
自然と頭に手が伸び、やさしく撫でる。
「……ん、…ぁれ?」
「あ」
「え?」
アイーシャの頭に手が乗った状態で目が合ってしまった。
(しまった。よく妹の頭を撫で回してたから癖で手が伸びてしまった。言い訳が思いつかん)
内心だらだらと冷汗を掻いていると、突然アイーシャが抱き着いてきた。
「!? アイーシャ!??」
「…無事でよかった」
声が震えているのがわかった。余程心配してくれていたのだろう。しかしそれはカルドラも同じだった。
「こっちのセリフだよ。魔力欠乏でフラフラのくせに魔法使いやがって…。本気で死んだかと思ったぞ」
そう言って抱き返した。
「……ふふふ、お互い様ですよ。やっぱり私たち"似た者同士"ですね…」
「間違いない…」
「ピ」
いつの間にか目を覚ましていたソラが頭に乗ってくる。
ソラの重みと温かさも感じながら、しばらく3人で生還の喜びを分かち合った。
一晩泊めてくれた兵舎の人たちにお礼を言い、町へ繰り出すカルドラとアイーシャ。
歩きながら今後の方針を決めるためカルドラが口を開く。
「さて、まずはどうしようか」
「はい! ご飯食べましょう! 生還祝いです! パーッと食べましょう!」
元気に自らの欲望を提案してくるアイーシャ。
気持ちもわからなくはないが、問題がある。
「アイーシャ、おれもそうしたい気持ちはある。だがこれを見ろ」
「???」
カルドラがお金の入った小袋の中身を見せる。
「銀貨が2枚あります!」
「そうだな、銀貨が2枚だ。"それしか"ない」
次の町へ行くための旅の備品や保存食、今日の宿代などを考えると少し心もとない金額だ。
「じゃあ銀貨1枚分食べましょう! 半分残ってれば大丈夫ですたぶん!」
「おまえなぁ…」
ニッコニコの笑顔で計画性のない要求をするアイーシャを眺めながら考える。
(まぁ如何にパーッと食べてもさすがに銀貨1枚は使い切れないし、ギルドを覗いて良い感じの仕事を何件かこなせば何とかなるか? それにこの期待に満ち溢れた顔を歪めるのも心苦しい…)
よし、と覚悟を決める。
「酒場行くか。思う存分食っちまおう!」
「ぃやったーーー!!!」
大喜びのアイーシャを見て内心癒されつつ、偶然すぐ近くにあった酒場へ入った。
酒場は半分ほどの席が空いていて、混み過ぎず空き過ぎずの過ごしやすそうな状態だ。
「良い時間帯だったみたいだな。…そこの席に座ろう」
「はい。カルさん」
近くの席が空いていたのでそこに腰を下ろす。
さーて何を食べようか、とメニューを眺めていると横から声を掛けられた。
「おや? 君は昨日の神官様だね?」
「え?」
話しかけられたのはアイーシャ。ぽやっとした顔で返事をしている。
声の主を見ると、綺麗な鎧を身に着けた柔らかい雰囲気の若い男が隣の席に座っていた。




