報告者を訪ねて
街道を歩く2人の騎士と1人の魔術士。
静かに雑談しながら歩く騎士の後ろで、魔術士は大きな魔石を視ながら歩く。
少し離れては小走りで追いつき、また少し離れては小走りで追いつく。騎士はスピードを合わせることはせず、魔術士もそれに文句を言うことも無い。
自分の行動に対しての責任は自分で取る。そんな少し冷たいような、しかし確かな信頼関係が見て取れる。仲間に危険が及べば助け合うだろうというのは想像に難くない。
そんなパーティーの、正確には騎士団特殊部隊だが、その隊長であるアルスは前方から近づいてくる兵士の一団に気づき2人に声を掛ける。
「2人とも、少し脇に逸れてあげよう。彼らが通りやすいようにね」
「おー」「はーい」
2人は軽く返事をし、皆で脇へ逸れる。そのまますれ違おうとすると、一団の隊長らしき人物から声を掛けられた。
「すまない君たち。向こうから来たんだよな? 我々はオーガの魔物の目撃報告があったため討伐に向かう途中なのだが、それらしい魔物は見なかったか?」
「ほう。オーガの魔物…」
3人は少し顔を見合わせ、先ほどの事を報告する。
「おそらくその魔物なら心配ありません。先ほど我々が"処理"しました。この魔術師が持っているのがその魔物の魔石です」
「ほらー、これだよー」
「なんだと!?」
魔術士のメイがかぼちゃほどの大きさの魔石を掲げてみせる。それを見た兵士たちがざわざわし出し、隊長らしき人物が確認してくる。
「処理した…というのは本当なんだな? ほかに魔物の気配はあったか?」
「いえ。軽く索敵しましたが近くには何も。処理したのは本当です。まぁ魔物は倒せば消えてしまうので証拠はこの魔石しかありませんが…」
言いつつ、今歩いてきた街道を指差し続ける。
「このまま行けばオーガが這いずった跡が見つかるはずです。更に進むと、誰かがオーガと戦ったであろう戦闘痕もあります。それらを確認すれば報告書にきれいにまとめられるはずですよ」
にっこりと情報を渡すアルス。
「……なるほどな。情報提供に感謝する。それと処理もな。もう少し歩けば町に着くから、着いたらゆっくり休むと良い」
「お気遣い感謝します。あぁ、一つ聞きたいことがありました」
思い出したかのようにアルスが尋ねる。
「オーガの魔物の目撃報告をした人物、まだ町にいますよね?」
町に到着したアルスたちは真っ先に近くの兵士に話しかける。
「すみません。少し前にオーガの魔物の目撃報告をした人物を知りませんか? 街道ですれ違った兵士からここで聞けばわかると伺ったのですが」
聞かれた兵士は、あー…と言いながら答える。
「あいつは今、兵舎で寝てるよ。よっぽど疲れてたんだろうな。報告した後ここで眠りこけちまって、置いとくわけにもいかないから兵舎へ連れてったんだ。と、それよりあんたら! 今あっちから来たか!? 大丈夫だったのか!? 魔物に出会さなかったか!?」
情報をくれつつ、ものすごく心配してくれるこの気の良い兵士に先ほどあったことを話す。
「魔物なら我々が処理したので大丈夫ですよ。すれ違った兵士たちにも報告済みです。おそらく今は戦闘痕の確認と、街道の整備をしているんじゃないかな」
それを聞き目が点になる兵士。そして、はぁぁ…と大きく息を吐き、心底安心したように話す。
「そうか…、よかった…。なら兵士もみんな無事なんだな…。しかしあんたらすごいな。オーガの魔物を倒すなんて並大抵のことじゃないぞ」
それを聞き、ダンテと目を合わせ、少し苦笑いしつつ事実を話す。
「我々は本当に"処理しただけ"なんですよ。魔物を発見した時にはすでに勝負は終わっていました。我々がやったのは、両足の腱を切断され藻掻いていた魔物の首を刎ねた。それだけです」
それを聞き兵士はまた目が点になり、今度はそのまま動かなくなった。
そんな彼をクスクス笑いながら移動を開始するアルス。
「情報ありがとうございます。我々は"それをやったと思われる報告者"に会いに行きますので。これにて」
「………あ、あぁ」




