特殊部隊
街道を歩く2人の騎士と1人の魔術士。王宮騎士団所属の彼らは町から町へ、どんどん移動しながら魔物を狩る特殊部隊の1隊だ。
いつもは乗り合いの馬車などで移動する彼らだが、今回は街道近くで任務が完了したため、前の町に戻るより歩いて次に向かった方が速いと判断。ギルドへの報告を一緒に任務に当たった町の兵士に任せ、彼らはのんびり徒歩で移動中だ。
「ねー、まだ着かないのー? お風呂入りたいんだけどー」
魔術士が愚痴を零す。
「おまえはいつもいつも…。いい加減騎士団の自覚を持てよ」
騎士の1人が小言を言う。
「はは、そんなに厳しくしなくていいじゃないか。旅してる途中は冒険者みたいなものなんだからさ」
残りの騎士がやさしく宥める。
彼らは特殊部隊故に王都より外で過ごす時間の方が多い。そのため自然と冒険者のような生活になってしまうのだ。
「まったく。自由なのはいいけど女の子には向かないわねこの仕事。まぁ火魔法使いたい放題なのはすごく魅力的だけど」
「いつも言ってるが、火事だけはやめてくれよ。騎士団の沽券に関わる」
「あーもう! いつもいつも騎士団がどうのこうのって! うるさいのよこの石頭!」
「なんだと!?」
「はいはい、君たちやめようねー。晩御飯抜きにしちゃうよー?」
「…」
「…」
「うん♪ よろしい♪」
と、このように彼らは喧嘩しながらもにぎやかに任務に当たっている。
「おや?」
「どうした? アルス」
部隊の隊長、アルスがあるものを発見する。
「これ、戦闘痕だね」
「あーほんとだー。こんな街道のど真ん中で誰だろうねー?」
「ダンテ、どう見る?」
「ふーむ。どれどれ…」
騎士のダンテがしゃがんでじっくり観察する。
踏み固められた街道の土がところどころ盛り上がり、しかし近くに円形の何も影響を受けてない領域もある。大きな足跡、多数の血痕もあり、かなり激しく戦闘したのが分かる。
「オーガだな。そこで防御魔法で耐えて、その間に剣士がオーガに切りかかったんだろ」
分析結果を簡潔に伝える。
「ふむ。こんなところでオーガってことは、そのオーガは魔物だね?」
「まず間違いなくな」
「ってことはわたしたちの出番ね♪」
魔物という言葉にウキウキし出す魔術師。
そして、うーん、と考えるアルスがダンテに尋ねる。
「そのオーガ、討伐はされたのかな?」
「いや、たぶんまだだろ。オーガの魔物ってことは危険度がかなり高い。その辺の兵士や冒険者じゃ対応できん」
「だよね」
うん、と頷くアルスが魔術師に声を掛ける。
「メイ、久々の大物だよ。張り切っていこう」
「合点承知!」
魔術士、メイはうれしそうに返事をする。
ダンテも立ち上がり激励する。
「ま、腕は信頼してるからな。頼りにしてるぜ、メイ」
「いつもその態度ならわたしもつんけんしないんだけどなー」
「ははは。やっぱり仲いいよね、君たち」
「「どこが!」」
そう言いつつも、前の任務からここまで直行して来ているため物資が心許無い。なので一先ず町に入ろうということでそのまま街道を歩く3人。
しかししばらく歩くと、とんでもない物を発見する。
「おやおや」
「おいおいまじかよ」
「へー」
両足の腱を切断され、匍匐前進しているオーガの魔物がいたのである。
情報を集めるため少し遠目から観察する3人。
「がああああ! うがあああ!!!」
「おーおー威嚇してるぜ」
「ふむ。傷は足の腱部分のみ。集中的にここだけ攻撃して転倒させ、悠々と離脱した感じかな?」
「えー? それなら止めさせばいいのに。勿体ない」
「いや、たぶん冷静に判断した結果だろ。足への攻撃は可能でも、止めをさせるだけの実力じゃなかったってところじゃないか?」
それぞれ意見を出し合い、状況を想像する。
「それにしても見事だね。本当に傷がこの2つしか見当たらない。このオーガ、かなり暴れたろうに。それを搔い潜ってこの攻撃精度。どんな人なんだろうね? これをやったのは」
「だな。少なくともおれには無理だ」
足の傷を見て唸るアルスとダンテ。これをやった人物に興味が湧いたようだ。
「ねー、もーいいんじゃない? さっさとやっちゃおうよ」
魔法職のメイはあまり興味がないようだ。
「ん? そうだね、情報は十分だ。ダンテ、よろしく」
「えー!?? わたしはー!?」
「ここは街道だよ? 君の魔法はだ~め」
「へへ、悪いなメイ」
「ぶーぶー」
そんな会話をしつつ、ダンテが大剣を構える。
「悪く思うなよ。じゃあな」
「があああああ!!!」
そういってオーガの首を刎ねた。
「ついた…! ついたぞソラー!」
「ピー!」
アイーシャを背負い、ひたすら歩き続けたカルドラはついに町に到着した。
「くそ…、感動で涙が出そうだ…。でもまだだ! オーガの魔物の件を報告せねば!」
そうなのだ。街道のど真ん中にあんな化け物がいたら誰も通れない。すぐに討伐隊を派遣してもらわなければならない。
「すみません! 緊急で報告したことがあって!」
「ん? どうした?」
町の門の近くにいた兵士に声を掛けた。
「ここに来る途中でオーガの魔物に襲われて、命からがら逃げてきたんです! すぐに討伐隊を編成してください!」
「なんだと!? 本当か!?」
「本当です! この背中の子のおかげで怪我は治りましたが、おれもこの子も死にかけたんです!」
「大変だったな…! 待ってろ! すぐに手配してやる!」
「ありがとうございます!」
すると兵士はメモを書き殴って兵舎らしき建物へ走っていった。それを見送ると、今度こそカルドラは気を抜いて座り込んだ。
「ははは…。やっと、落ち着ける…」
「ピ!」
「ソラー…。おれたち頑張ったよなー?」
「ピー!」
ソラと生還の喜びを分かち合うカルドラ。彼はこのまましばらく立ち上がれなかった。




