魔物の脅威
魔物がオーガだと確認するや否や、すぐさま撤退を開始する2人。
生物としてのオーガの性質はとても穏やかで、山脈の奥深くに集落を形成し生活している。人間と敵対することもほとんどない平和的な種族だ。
しかしそれの魔物となると一気に話が変わる。魔物はどんな姿形をしていようとすべて凶暴なのだ。体長4メートルの凶暴な巨人ともなればどれだけ危険か想像もつかない。
「くそ! 何で寄りにもよってオーガなんだよ!」
「森に入りますか!?」
「おれたちの方が遅くなるから却下だ!」
「うえーーーん!」
街道を走りながら意見を交わすがこのまま走るしかないという結論になる。
一方のオーガはすでに2人を視認しており、大きな歩幅で走り寄ってきていた。
「なんですかあの歩幅! 卑怯です! ずるです!」
「考えるな走れ!」
「ピーーー!」
必死に走るがあっという間に追いつかれ、オーガが手に握っていたこれまた巨大な棍棒を振り上げる。
「!!! カルさん! 私の後ろに!」
アイーシャがすぐさま防御態勢に入り、それと同時に棍棒が振り下ろされる。
「プロテクション!!!」
ドオオオォォォォンッ……
凄まじい音と衝撃が周囲に広がる。衝撃が風となり周囲の草が激しく靡き、棍棒を叩きつけられた防壁からは目に見えるほどの魔力が飛び散り拡散した。
「…くぅぅぅっ!」
「アイーシャ!? 大丈夫か!?」
明らかに苦しむアイーシャに、カルドラが声を掛ける。
「い、威力が強過ぎて…っ、魔力が散っちゃう…!」
そうこうしていると再び棍棒を振り下ろすオーガ。
ドオオオォォォォンッ……
「くあぁっ!」
また衝撃が周囲に拡散し、防壁の魔力も飛び散る。
(まずい! このままじゃアイーシャが死ぬ!)
カルドラはポケットからショートソードを1本取り出し、アイーシャに語り掛ける。
「アイーシャ。このプロテクション、何としても維持しろ。その間におれがあのデカ物の足の腱を切って転倒させて来る」
「え!?? 外に出るんですか!?」
「来るぞ!!!」
「!!!」
ドオオオォォォォンッ……
「ん゛ぅぅっ!」
苦しむアイーシャ。防壁の魔力がどんどん消費されていく。
「アイーシャ、2人で生き残るにはこれしかない。一緒に世界見に行くんだろ?」
「カルさん…」
「ソラ! アイーシャのサポートを頼む!」
「ピッ!」
カルドラの呼びかけにソラが答えると、ソラはアイーシャの頭に乗り、魔力を流し始めた。
「ソラちゃん…」
「ピー!」
カルドラがそれを確認するとすぐに身体強化を全開にし、防壁の外へ飛び出した。
「カルさん!!!」
アイーシャの声は聞こえるが返事をしている余裕はなかった。
極限まで意識を研ぎ澄まし、自身の感覚を加速させる。カルドラの周りの音が静かになり、目から入ってくる映像と肌に感じる空気の流れに全神経を集中させる。
そしてオーガが接近するカルドラに気づき、足で蹴り飛ばそうとする。
(…………!)
それを最小限の動きで躱し、オーガの軸足に切りかかる。
ズパッ……
(…! 切れるが、厚い…!)
4メートルの巨体を支える足首の腱である。尋常ではない"太さ"だった。
「ギャアアアアアアアアア!!!」
さっきまで黙々と攻撃を続けていたオーガが悲鳴をあげた。痛みは感じるらしい。
(切断するまで切り続ける!)
カルドラはさらに深く集中していく。




