ハリケーンガール
「…へぇ。やるじゃん」
近くで膝を抱え、カルドラたちの戦闘を見ていた少女が呟く。
彼女はカルドラの棍棒捌きに目を輝かせていた。
ぴょんと立ち上がり、ててて~っとカルドラに接近する少女。
「ねぇねぇ! 何で棍棒なの!? あんなに動けるのに剣は使わないの!?」
「お、おう???」
魔石を拾っていたら急に質問され困惑するカルドラ。
サニアに目配せし魔石の回収を変わって貰い、少女に向き直る。
「…棍棒なのはいろいろ楽だからだ。一応剣も持ってる」
「楽!? どんな風に!? 剣より楽なの!?」
「……」
次から次へと質問してくる少女。子どもの扱いが得意なアイーシャに助けを求めるため視線を送ってみる。
しかしアイーシャはニコニコしながらこちらのやり取りを眺めている。アイーシャの頭に乗っていたはずのソラは彼女の肩に下り髪の中に隠れている。少女の好奇心が自身に向くのを警戒しているようだ。
支援は期待できないらしい。
「戦闘後の手入れとか、あとは戦闘時の取り回しとか、剣とはメリットデメリットが違うんだよ。おれも質問したいことがある。そのロングソード、もしかして鉱山の町で作って貰ったのか?」
「??? これは師匠から卒業祝いに貰ったんだよ! かっこいいでしょ! 超硬重剣スマッシュバスターソードだよ!」
「ス、スマッシュ…なんだって???」
彼女は剣に名前を付けて愛でているらしい。物を大切にする"形"は人それぞれということか…。
「スマッシュバスターソード! 師匠は違う名前つけてたけど、絶対こっちの方がかっこいいもん!」
「そ、そうか…。そうかもな…」
(こいつの師匠よ…。この少しのやり取りだけで、あんたの苦労がわかるぞ…)
顔も知らない少女の師匠への同情が溢れてくる。
常にこの熱量を相手にしていたら気が休まらない。
「ねぇねぇ棍棒見せてー! 振ってみたーい!」
「えぇい纏わり付くな! 貸してやるから離れろ!」
お腹周りに抱き着いてねだる少女を振り解き棍棒を貸してやるカルドラ。「ぅわっほーーい!」と嬉しそうに少女が素振りを始める。
「ふふふ♪ 懐かれちゃいましたね♪」
ぜぇぜぇするカルドラにアイーシャが話し掛けてきた。
「すごく素直な子ですね。戦っている姿からは想像できません」
魔石を拾い終えたサニアも近くに来て感想を述べる。
アレを素直と言って良いのか疑問が残るがとにかく疲れる。
「お兄さん! ありがと! 楽しかった!」
満面の笑みで棍棒を返しに来る少女。…悔しいが確かに素直かもしれない。
棍棒を受け取りながら気になることを質問してみる。
「嬢ちゃんは1人で来たのか?」
「そうだよ! 散歩してたらダンジョン見つけたから探検してた! お兄さんたちは冒険者?」
彼女は1人でダンジョンに突撃したらしい。目の当たりにした強さ的に1人でも大丈夫なのだろうが、見た目子どもにしか見えない彼女が1人でダンジョンにいるのは少し気になってしまう。
「おれたちは冒険者じゃないよ。トラベラーだ。でも一応ギルドには登録してるから、偶然見つけたこのダンジョンを調べてたんだ」
「トラベラー!? 旅してるんだ! ねぇねぇお話聞かせてよ! 一緒に行こー!」
キラキラと目を輝かせる少女。付いてくる気満々である。
「ふふふ♪ カルさん、一旦外に出て野営の準備をしましょう? 食事でもしながらお話しましょう」
「キャンプするの!? 私も手伝うよ! ご飯分けてー!」
「あら♪ 手伝ってくれるんですか? 助かります♪」
サニアが子守り(?)を代わってくれた。助かった。
「はぁ…。とりあえず街道まで戻るか」
「ご飯が待ってるよー!」
こうして3人は人懐っこい少女と共に一旦ダンジョンから出て、街道へ戻るのだった。




