表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双棍のトラベラー  作者: コルミ
リィナ
118/119

戦う少女

 鳥もどき…もといグリマイトの血抜きと肉の下処理を終え、3人は"例の岩"の前に立っていた。


「……確かに、ダンジョンっぽいですね」

「だよな。…見た感じ、できたのは最近か?」


 岩の表面は地肌が綺麗に露出しコケなども生えていない。つい最近出現したダンジョンのようだ。


「潜るんですか?」


 穴を覗き込みながらアイーシャが尋ねる。


「ギルドに登録してるからには報告義務があるからなぁ…。入り口付近だけでも簡単に見ておいた方が良いだろうな」


 ギルドのルールとして、ダンジョンを発見した際は速やかに最寄りのギルドに報告することになっている。ダンジョンの種類によっては魔石を安定的に生み出す資源にも成り得るし、周囲に魔物の脅威を撒き散らす危険物にも成り得る。

 ギルドはダンジョンを残すか破壊するかを早急に判断しなければならないのだ。

 少し考え、空を見て日の位置を確認するカルドラ。


「グリマイトの解体で時間使っちゃったから、野営の準備も考えると探索できるのは少しだけだ。軽く覗いてみて、すぐに帰って来よう」

「了解です!」「わかりました」


 方針を確認し、3人はダンジョンへ入って行った。

 ダンジョンの内部は大きな武器も余裕で振り回せるくらいの広い洞窟のような構造、まさにダンジョンといった様相だった。ご丁寧に壁がうっすら光り、光源になっている。

 前に入った坑道のダンジョンは3階層目以外はトーチ(魔法)を使って光源を確保していたので、このダンジョンは探索者にやさしい親切設計だった。


「……魔物が居ないですね。魔石も無い…」


 歩きながら周囲を観察するサニアが零す。

 この広さのダンジョンなら少し歩けばすぐに魔物と会敵するはずだ。しかしここまで少し歩いたが全く魔物の気配が無い。そしてダンジョンには点々と大小様々な魔石が転がっているはずなのだがそれも無い。


「ここまで静かだと不気味だな……いや、遠くで何か聞こえる」


 呟くカルドラの耳が何かの音を拾う。

 鳴き声、金属音、衝撃音、遠くで何かが戦っているようだ。


「行ってみましょう。アイーシャさん、一応備えておいてください」

「了解です!」


 アイーシャを中央に据え、3人は音の方へ進んで行く。

 戦闘音は次第に大きくなり、聞こえてくる声から戦っているのは若い女性であることがわかった。


「…居た!」


 広い洞窟を抜けた先に広間があり、その中央でリザードマンの魔物と戦う少女を視認した。

 少女は腰まである長いお下げを振り乱し、身長に見合わない()()()()()()()()()をリザードマン目掛け薙ぎ払う。


ザンッ

「ギャアアアアアス!」


 リザードマンの魔物は胴体を真っ二つにされ、黒い(きり)となり消滅し、握りこぶし程のサイズの魔石が残された。

 少女の周囲には5つの魔石が転がっており、彼女が5対1の戦闘を切り抜けたことが窺える。

 そして嬉しそうに魔石の回収を始める少女。


「あの子…強いんですね…」

「あぁ、すごいな…」


 アイーシャの感想に同意するカルドラ。明らかに身の丈に合っていない武器を振り回しているのに戦闘を終えた彼女に疲労らしい疲労は見られない。使いこなしている証拠だ。

 そして気になるのが彼女の武器が"漆黒のロングソード"であること。造形もカルドラの持つロングソードに酷似している。


(まさか"完成品"か? だとしたら、世界狭すぎだろ…)


 カルドラの持つロングソードは試作品を安く譲って貰ったものだ。一月もしないうちに完成品疑惑のある武器を見ることになるとは思っていなかった。


「とりあえず話を聞きに行きませんか?」

「…そうだな」


 サニアに促され、魔石を回収する少女に近づく。

 しかし彼女の奥の通路からリザードマンの魔物5匹が走ってくるのが見える。


「危ない!」

「おいおまえ! 油断するな! 魔物が来てるぞ!」


 カルドラの声を聞き少女が魔物の接近に気づく。そしてニヤッと笑った。


「私の獲物だよ! そこで見てて!」

「なっ…!」


 手を出すなと釘を刺してくる少女。魔物は少女を標的にしているらしくカルドラたちの方へは来ない。

 この状況で参戦してしまうとギルド的には獲物の横取りと判定され処罰対象になってしまう。見守るしかない。


「やああああ!!!」

ズバンッ

「ギャアアアアス!」


 自身の背丈に迫る長さのロングソードを振りリザードマンの魔物を切り伏せる少女。剣の重量を利用し意図的に振り回されながら変則的な動きで魔物たちを翻弄し、次々と斬撃を叩きこんでいく。


「はああああい!」

ザンッ

「グギャアアア!」


 最後は回転しながら魔物を頭から真っ二つにして戦闘を終えた。

 セオリーも何も無いめちゃくちゃな戦い方である。


「むふふ~♪ 今日は大量だね♪」


 息一つ乱さず楽しそうに魔石を回収し出す少女。3人はそのあまりのでたらめぶりに唖然とする。


「あ、お兄さんたち。魔物来てるよ」


 少女が横の通路から走ってくる魔物を指差しながら言う。


「…っ! ありがとうよ! アイーシャ!」

「はい! プロテクション!」


 すぐに戦闘態勢に入り、アイーシャがプロテクションを展開。カルドラは2本の棍棒を構え魔物を迎え撃つ。

 相手はリザードマンの魔物が6匹。鋭い爪と牙を誇示して襲い掛かる。


「サニア! 3匹頼む!」

「任せてください! コンバイン、『ウォーター・レイ、フリーズ』…」


 サニアは大杖を魔物に向け魔法を詠唱。大杖の先に2つの魔法陣が展開し、そして1つに統合されていく。


「リリース!」


 サニアが重ねて詠唱すると、統合された魔法陣から高圧の水が噴出し、リザードマンを襲う。

 水流を受けたリザードマンは立ち待ち氷漬けになり、サニアは大杖を動かして更に2匹にも水流を浴びせに掛かる。

 逃げる間もなく2匹も氷漬けになり、サニアは任された3匹の処理を完了した。


「はああああ!」

ボゴンッ

「ぎゃふっ!」


 一方カルドラはリザードマンの大きな顎を下から殴り上げる。

 リザードマンはリザードと言いつつ見た目はワニに近いので口が大きいのだ。接近できる技量があれば顎を狙い放題である。

 顎をかち上げられたリザードマンは平衡感覚を狂わされ少しの間藻掻くことになる。その間に丁寧に頭蓋を破壊し止めを刺す。

 その要領でカルドラも3匹の処理を完了。

 最後に氷漬けになった3匹も止めを刺し、無事に戦闘を終了した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ