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双棍のトラベラー  作者: コルミ
挨拶回り、そして次の町へ
115/120

餞別

(さて、魔族の領土の場所を知ってるかという話だったな? すまんな。たまに遠出することもあるが、何がどこにいるかなど気にしたことが無くてな。全くわからん)


 残念ながら魔族の居場所はわからなかった。こればっかりは仕方ない。自分たちの足で手掛かりを探すしかない。

 それはそうと、ヴァルクスはこの巨体で時々出歩いているらしい。周りに気づかれないのは認識阻害の結界魔法のおかげなのだろうか。相変わらずすごい効果だ。


「そうですか…。魔力片についてはどうですか? 先ほどおばあちゃんと魔力片を結び付けて覚えていたようですし、他の魔力片の場所などはわからないでしょうか…」


 藁にも縋る思いで質問するサニア。しかし斜め上の回答が返ってくる。


(それについてはな…。ベルナに『魔力片封印し行くから乗せていけ』と言われただけでな…。隣の森までは乗せてやったが、他の魔力片の場所はわからぬ。すまんな)

「い、いえ。こちらこそ…、おばあちゃんがすみませんでした…」


 若気の至りにしても傍若無人が過ぎる気がする。さすがドラゴンからもイカれてると評価される人物だ。常識では測れない。


「さて、そろそろ移動しよう。暗くなる前に鍛冶屋に行かないと」

「そうですね。行きましょう。ヴァルクスさん、いろいろありがとうございました。歴史のお話、とても勉強になりました。おばあちゃんのお話も…びっくりしましたけど聞けて良かったです」

「私もお話しできて楽しかったです! またいつかお話しましょう!」

(うむ! サニアにアイーシャよ。おまえたちとの語らいは我も楽しませてもらったぞ。近くを通ったらまた顔を出すと良い。待っておるぞ)


 ヴァルクスと別れの言葉を交わすアイーシャとサニア。

 寿命の長いドラゴンが相手なので多少気が楽だが、やはり一抹の寂しさはある。しかしベルナのエピソードがある意味良い緩衝材になってくれ、普段に近い雰囲気で言葉を交わすことができた。

 そしてカルドラも続く。


「ヴァルクス。最初にソラがおれを連れてきた時、"紹介したかっただけ"ってどういうことだ?って思ったけどさ。今ならソラの気持ちわかるよ。あんたは絶対誰かと話してた方が良い」

「ピー!」


 カルドラの言葉にソラも声を上げる。


「今日まで本当に世話になった。過去の知識とかシールドの件とか、ヴァルクスに会えて本当に良かった。ありがとな」

(ふっ、よい。我も久方ぶりに賑やかな日々を満喫させてもらった。ダンジョンも破壊してもらったしな。何かあればまた来るが良い。知識なら貸してやるぞ。……あぁそれと、ちっこいのよ)

「ピ?」


 別れの言葉を交わすカルドラの後、ソラに話し掛けるヴァルクス。

 ソラが不思議そうな顔をしている。

 すると今までほとんど動かなかったヴァルクスが巨大な前足を持ち上げ、ゆっくりソラの前に爪の先を向けた。そして爪の先が少し光るとソラもふわっと光り、すぐに光が消える。


「ピ?」

「……何をしたんだ?」


 カルドラが尋ねると前足を元の位置に戻しながらヴァルクスが答える。


(我の魔力の欠片を付けた。餞別のようなものだ。それがあれば、もしこの先龍族に出会っても先制攻撃されることはあるまい。その後は口で乗り切れ。…まぁそうそう龍族には出会(でくわ)さぬと思うがな)

「ピー!」

「あ…ありがとう…。すごく助かる…」


 さらっと恐ろしいことを言うヴァルクス。その魔力の欠片が無ければ先制攻撃される可能性があるということなのか。なるべくドラゴンとは出会わない方が良いようだ。

 以前ヴァルクスが自分で言っていたが、人族に友好的な彼は本当に特殊なドラゴンらしい。


「さ、カルさん。暗くなっちゃいますよ」

「あ、あぁ。それじゃヴァルクス。本当にいろいろありがとう。またな!」

「お世話になりました」「いつかまた来ますー!」「ピー!」


 サニアに促され、各々別れを告げる。


(うむ! 待っておるぞ!)


 ヴァルクスもそれに応え、3人は堂々と佇むヴァルクスに見送られながら窪地を後にするのだった。

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