ご紹介
3人が町に到着したのは昼下がりだった。
思いのほか早く着いた。この時間ならもしかすると窪地までもう一往復できるかもしれない。早速ギルドマスターに会いに行くことにした。
急ぎ早にギルドに向かう3人。そしてギルドに入るとエルミアが快く迎え入れてくれ、要件を伝えると苦笑いしながらギルドマスターのいる部屋まで案内してくれた。
トントン
「マスター、失礼します」
「おう」
エルミアがノックすると部屋の中からギルドマスターの返事が聞こえる。
部屋に入るとギルドマスターのグラントと兵士長のアイゼルがいた。話し合いをしていたようだ。とても都合が良い。
「お? 昨日の3人じゃないか。今日はどうした?」
グラントが迎え入れてくれた。
昨日は魔族の報告をしてから怒りでプルプルし出し、そこから会話ができなかったが、今はすっかり落ち着いている。
「グラントさん、アイゼルさん、こんにちは。実はお2人をヴァルクス…鉱山のドラゴンに会わせたいと思いまして…」
「……ちょっと待て。お互い不干渉じゃなかったか? 何がどうなってそうなった…」
「私としては会ってみたいとは思っていたが…。話が急すぎないか?」
カルドラの突拍子もない話に困惑を隠せないグラントとアイゼル。
大まかに経緯を説明する。
「実はおれたちはあと数日でこの町を出る予定なのですが、ヴァルクスはかなりの話好きで、おれたちが旅立った後に孤独にさせるのが少し気になってしまって…。おれたちもヴァルクスにはすごく世話になったので何かできないかと思い、せっかくなら町との接点があればいいなぁと…。お2人もヴァルクスのことが気になってたみたいですし」
「……」「……」
話を聞き唖然とするグラントとアイゼル。
そして動揺する声でグラントが口を開く。
「そ、その…、ヴァルクス…殿?…は了承しているのか…?」
「意気揚々と『連れて来るが良い!』と言っていました」
「そ、そうか…。………アイゼル、どうする…?」
「どうするって…、行くしかあるまい…」
「だよな…」
動揺しつつも会うことを了承する2人。
善は急げということですぐにギルドを出発。
暗くなる前に町に戻るためにカルドラとグラントとアイゼルの3人で身体強化を使い、走って窪地を目指した。
(はっはっはっはっ! よく来たな! 歓迎するぞ!)
「まじかよ……」
「現実に…こんなことが……」
無事に2人をヴァルクスに会わせることができた。
やはり最初はヴァルクスの姿を認識できなかった彼らだが、ヴァルクスが思念を送るとその姿を認識し、彼のあまりの巨大さに驚愕している。
「何度も邪魔して悪いな。こちらはグラントさん。隣はアイゼルさんだ」
「あ、あぁ…、お初にお目に掛かるヴァルクス殿。グラントだ」
「アイゼルです。お会いできて光栄です」
(うむ。すでに我の名は聞いておるようだな。だが改めて名乗ろう! 我が名はヴァルクス=グラン=オル・カストディア! まぁ覚えなくとも良いぞ。はっはっはっはっ!)
何となくだが、カルドラが会う度にヴァルクスのテンションが高くなっている気がする。彼と初めて会った時はもう少し落ち着いた雰囲気だったはずだが…。
まぁそれだけ人族とのやり取りを楽しいと思ってくれているということだろう。カルドラはそのままヴァルクスとグラントたちのやり取りを傍観することにした。
彼らの会話は事務的なものから始まり、鉱山の歴史や町の歴史に移り、そこから個人の趣味や好きな物へどんどん移り変わっていく。
最終的に彼らはすっかり打ち解け、定期的に会う約束を取り付けていた。
「はっはっはっ! まさかドラゴンと笑い合える日が来ようとはな! 人生わからんもんだ!」
「まったくだ。ヴァルクス殿がこんなに話しやすい方だとは…。他言はできないが、この経験は間違いなく私の人生の宝だよ」
(クックックッ。アイゼルよ、人族の寿命は短いぞ? 死ぬ前にその宝とやらをもっと増やすが良い。いつでもここに来るが良いぞ!)
「はっはっはっ! ドラゴンの寿命と比べられたんじゃたまらんわ! 頻繁に顔出さにゃならんなアイゼル!?」
年の功なのか、ヴァルクスは本当に誰とでもすぐに仲良くなる。
やはり彼と付き合う上で問題になるのは人族側の振る舞いだろう。グラントやアイゼルのように彼と友人のように接することができれば、今後も彼と人族は良い関係性でいられるはずだ。
しかしもし彼を人族の都合で利用しようとする者が現れれば、彼はすぐに結界で姿を眩ませ、二度と人族の前に姿を現さないであろう。
未来永劫、そのような者が現れないことを願うばかりだ。
「グラント。そろそろ移動を開始しないと町に着く頃には真っ暗になってしまうぞ。名残惜しいが戻ろう」
「…そうだな。ヴァルクス殿、我々はこれで失礼する。また迎え入れてくれると嬉しい」
(うむ。良い語らいであった。またいつでも顔を出すと良い。待っておるぞ。カルドラもな)
「あぁ、また来るよ。ソラ、行こう」
「ピー!」
各々が挨拶をし、カルドラはソラを頭の上に乗せる。
そして3人は身体強化を発動し、来た時と同じように走って町に戻って行った。




