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双棍のトラベラー  作者: コルミ
挨拶回り、そして次の町へ
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寂しがりドラゴン

 そこからのカルドラの進歩は早かった。

 ヴァルクスたちが歴史の授業を再開した横で黙々とシールドの練習をしたカルドラは、すぐに身体中どこにでも防壁を展開できるようになった。

 更に強度についても凄まじく。最初は突ついただけで割れていた防壁が、最終的にカルドラの持つ漆黒のロングソードでの重い攻撃でやっと破壊できる強度にまで昇華した。

 もしドラゴンの魔物と戦闘した時にこのシールドが使えていたなら、無理に懐に入り込まずとも攻撃を捌き切れていたであろう。うまくすれば対峙しながらダンジョンコアの破壊も狙えたかもしれない。

 カルドラにとってこのシールドの習得は、今後の戦闘での死亡リスクを激減させる素晴らしい戦力強化となったのだった。


 そんな感じでかなり自由自在に扱えるようになったシールド。

 現在はヴァルクスの昔話が終わるのを待ちながら、一度にどれくらい同時に展開できるのかを試している。


(今のところは4枚が限界…。もっといけそうな気がするんだが…)


 座って集中し、防壁を並べるように展開していく。

 1枚2枚3枚…と展開し、5枚目を展開するとなぜか1枚目が砕けてしまう。


(…??? 何でだ???)


 腕を組み首を傾げる。

 続けて6枚目7枚目と展開していっても2枚目3枚目が砕けてしまう。

 カルドラの頭の上でクエスチョンマークがくるくる回る。


(また悩んでおるのかおまえは)

「うわ!!! びっくりした!」


 突然思念を飛ばされ驚くカルドラ。デジャヴを感じる。


「ヴァルクス、昔話は終わったのか?」

(うむ。大方現代まで語ったぞ。サニアもアイーシャも熱心に聞き入りおって、感心ぞ)


 今まで「語り足りぬ!」と言っていたヴァルクスが今日は満足そうだ。

 良い生徒に恵まれたようで何よりである。


(それはそうと、今度は何を悩んでおるのだ。魔術は発動できるようになったのであろう?)

「あぁ、シールドを一度に何枚展開できるか試してたんだけどさ。5枚目を展開すると必ず1枚目が砕けるんだよ。何でかな?」

(それは単純なことよ。今のおまえは4つまでしか意識を集中できんのだ。5枚目を展開したときに1枚目から意識が離れ、魔力(マナ)(ほど)けるのだ)

「…なるほど」


 あっさり原因が判明した。意識の配分が問題だったらしい。

 しかしそうだとすると戦闘中は展開できる枚数がもっと減りそうである。後で動きながらの検証もしなくてはならない。


「カルさん、お疲れ様です。そろそろ戻りましょう」

「ご飯食べに行きましょー!」


 昔話を聞き終えたアイーシャとサニアも近くに来た。

 ヴァルクス同様2人も満足そうである。


「2人もお疲れ様。だいぶ満喫したみたいだな」

「はい。幸せな時間でした…」

「面白かったです!」


 2人の感想を聞きながら立ち上がるカルドラ。この町を出る前にヴァルクスに出会えたのは本当に幸運だった。

 しかし不意にあることを思い、ヴァルクスに尋ねてみる。


「なぁヴァルクス。おれたちたぶんあと数日でこの町を出ると思うんだけど、話し相手がいなくなって寂しくはないのか?」

(む?)


 これだけ話好きな性格なのだ。いくら人族の観察が趣味と言っても誰とも喋らずにいるのは辛いのではと思う。


(ま、まぁあれだ。基本的に龍族は単独で行動するものだ。さ、寂しいなどという感情あるわけがなかろう。はっはっはっ…)


 明らかに動揺している。

 これは旅立つ前に誰か話し相手を立てて行った方が良いかもしれない。


「……今のところヴァルクスの存在を明かしてるのは、昨日連れてきたエルミアさん、あとギルドマスター、兵士長、町長の4人なんだけど。ギルドマスターか兵士長を連れて来ようか? あの2人なら体力的にここまで来るの余裕だろうし、なによりヴァルクスのことが気になってたみたいだし」

(む!? 町の子か! 良かろう! 連れて来るが良い!)


 カルドラの言葉を聞きわくわくし出すヴァルクス。

 ヴァルクスには本当に世話になった。これくらいの置き土産はしないといけないと思った。


「わかった。近いうちに連れて来るよ。じゃあまたな」

「お話ありがとうございました」

「また来ますー!」

(うむ! 待っておるぞ人の子よ!)


 挨拶をして移動を開始する3人。

 ソラはヴァルクスの近くをくるくる飛び回っている。もう少しここで遊ぶつもりらしい。


「ソラー? 暗くなる前に戻って来いよー?」

「ピー!」


 元気に返事をするソラ。 

 そしてソラとヴァルクスに見送られ、3人は窪地を後にする。



「だいぶ思い切ったことを考えましたね」


 歩きながらサニアが言う。

 町のトップをドラゴンに会わせることによる町への影響を危惧しているのだろう。


「まぁ、たとえ会った結果話が拗れたとしても、ヴァルクスなら隠れるだけだろ。それこそ世界の禁忌に触れでもしない限り、ヴァルクスが人に危害を加えることは無いと思う。それにお節介かもしれないけどさ。あれだけ楽しそうに喋ってるの見るとこのまま置いていくのも気になるだろ?」

「そう…ですね…。うまく仲良くなってくれると良いですが…」


 カルドラの言葉に一応の納得を示しつつ心配そうなサニア。

 しかしカルドラとしてはあまり心配はしていなかった。昨日話したギルドマスターと兵士長の性格ならきっとヴァルクスとも仲良くなれるはずだ。むしろヴァルクスはどんな人でも大らかに受け入れそうな気がする。


「ヴァルクスならきっと大丈夫だよ」


 そんな話をしながら3人は山を下る。

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