カルドラの最適解
(ふむ、カルドラよ。おまえの魔力はだいぶ面白いことになっておるな。このような魔力は我も初めて見る)
カルドラを魔力視で確認したヴァルクスが珍しがっている。ドラゴンから見るとカルドラの魔力の流れは面白いらしい。古代から生きているらしいヴァルクスでも初めて見るということは相当珍しいのだろう。
(よし、少し手伝ってやろう。おまえたち、立って横に並ぶがいい)
顔を見合わせる3人。
言われた通り並んでみる。
(サニアにアイーシャよ。ヒールとシールドという魔術は使えるのか?)
「両方使えます」
「私も」
(うむ。ではカルドラとサニアよ、ヒールを使え。アイーシャはシールドだ)
不思議に思いつつも指示に従う3人。言われた通りの魔法を発動する。
(そのまま維持しておれ。魔力の流れの違いを見せてやる)
「見せる???」
すると3人の頭に映像が流れ込んでくる。
「うわ…、これ、ヴァルクスの視界か?」
「…すごいですね」「ほわぁ…」
映像にはカルドラたちがそれぞれ魔法を維持する姿が映っており、ご丁寧に魔力の流れまで可視化されている。
(思念を飛ばす応用よ。ほれ、カルドラよ。今のうちに自分の魔力の流れの違いを把握しろ)
「わ、わかった」
言われた通り魔力の流れを注意して見てみる。
カルドラとサニアは同じ魔法を使っている。なのに魔法が発動している右手までの魔力の流れが全くの別物だった。
そして別の魔法を使っているサニアとアイーシャの魔力の流れはとても似通っていた。
「……これ…、つまりおれは同じ効果の別の魔法を使ってるって解釈で良いのか?」
(おまえがそう思うならそうなのだろう。我としては効果が同じなら過程はどうでも良いと思うがな。重要なのは、お前がその効果を発動させるための魔力の流れが"それ"だということだ)
大雑把だが深いことを言うヴァルクス。確かな説得力がある。
「すごい…すごいです…。この体験は魔導士としては感涙ものです…。カルさん、身体強化を比べてみませんか? 私も身体強化を使います」
「え? あぁ、わかった」
サニアは本当に泣くほど嬉しそうだった。
サニアも魔力を視る魔法は使っていたが、こうやって複数人で魔力の流れを比べ合うことはしたことがなかったのだろう。しかも全く違う魔力の流れから同じ効果の魔法が発動している様は、彼女の今までの常識をひっくり返す衝撃映像だったはずだ。
そして続けて身体強化を発動して見比べてみる。やはりサニアとカルドラでは体内の魔力の流れが全く異なっていた。
「…身体強化も中身が全然違うな。これで同じ効果が発動してるのが信じられん…」
「効果は同じみたいですけど効率が全然違いますよ。カルさんの方はすごい高効率です。あぁ…、以前思った高効率での魔法発動の謎がこんな形で明かされるなんて…」
身体強化の魔力の流れを見比べるサニアの顔がとろん…としている。きっと今の彼女は幸せいっぱいなのだろう。
ちなみにサニアが言っている「以前思った――」の件は腕相撲でカルドラの身体強化の出力検証をした時のことだ。
(カルドラよ。おまえは既存の魔法陣は考えるな。それは一般的な人族のために作られている。おまえがそれを使うと魔力の流れがおまえの最適解から遠くなる。想像のままに魔力を乗せてやれ)
「想像のまま…、魔力を乗せる…」
ヴァルクスがアドバイスをくれた。
確かにカルドラが魔法を使う時、身体強化でもヒールでも魔法陣なんて考えていなかった。難しいことは考えず、その要領でやってみればいいのだ。
集中し、右手の前に魔力の防壁が現れるイメージをしてみる。
「………………」
……ぱっ
「あ! カルさん出ましたよ! シールドです!」
「ピー!」
今まで全く出現する気配の無かった魔力の防壁が、見事カルドラの前に出現した。
「おぉ! やった! ………けどだいぶ薄いな。大丈夫かこれ…」
しかし出現した防壁は布のように薄いものだった。
試しに左手で突っついてみると、すぐにパリ…っと割れてしまった。
「大丈夫ですカルさん。シールドは展開時に込めた魔力量に応じて強度が上がる魔法です。魔力をシールドという魔法として発現できたなら、後は魔力を込める練習をするだけです」
(クックックッ、無事発動して良かったではないか。後はじっくり研鑽に励むが良い)
サニアとヴァルクスが励ましてくれた。
2人の言う通り、発動さえしてしまえば後は練習あるのみだ。
「皆ありがとう。ほんとに助かった。ここからはシールドを強くできるように練習してみるよ」




