弱点と決意とでっかいの
「わかってる。なるべく余裕をもって対応するつもりだよ。心配してくれてありがとな」
「わかってるならいいです!」
元気に偉そうに言うアイーシャ。それを聞きふふっと笑いながらカルドラは続ける。
「次が最後の情報だ。結構重要だぞ。おれの弱点の話になる」
「! はい!」
アイーシャの顔が真剣になる。
「おれは初級の回復魔法と身体強化、2つの魔法が使えるけど、その出力は常人の3割だ」
「……なぜです?」
なにやら不穏な雰囲気を感じ取り、緊張しながら聞く。
「おれは魔力路に障害を持って生まれたんだ。赤ん坊の頃、魔力漏洩が止まらずに死にかけたらしい。それを偶然村を通りかかった魔術師が、魔力核に魔法陣を仕込んで助けてくれたんだってさ。でもその影響で魔力を少ししか使えない。だから3割だ」
魔力核と魔力路、身体でいうところの心臓と血管だ。そこに障害を持つのは致命的で、なんとか一命は取り留めたものの、その命綱が枷にもなっている。なんとも複雑な状況である。
「つまりカルさんは今まで、ほぼ特殊体質と感覚加速に頼って戦ってきた、ということですね?」
「そうだ。おれの魔法は当てにならない」
「………っ」
とても苦しそうな顔のアイーシャ。少し震えているようだ。
(共感力の高いアイーシャならこうなるよな…。ごめんな。でもこの弱点は絶対に共有しないといけない。隠してたらアイーシャに危険が及ぶかもしれない)
「……そこまでいろいろなリスクを抱えてるのに、どうして危険な旅に出たんですか?」
アイーシャがもっともなことを聞いてきた。確かに普通に考えれば村に籠って生活していれば危険も少なく生きられるだろう。しかし…。
「最初に言ったろ? "夢"だって。そのためにリスクを最小限にする訓練をしてきたんだ。ここまできたら突き進むだけさ」
「カルさん……」
出来る限り精一杯、笑顔で答えた。
それを聞いたアイーシャは少し目を瞑り、キッ!と何かを決意したような顔になると、てててーとカルドラの正面に移動し、向かい合った。
「カルさん、手を出してください」
「手?」
「早く!」
よくわからないカルドラが言われた通り手を出すと、がしっ!と力いっぱい両手で握られた。
「いたい!」
「黙って!」
「はい…」
訳が分からないカルドラに、アイーシャが俯きながら話し出す。
「私は、カルさんの覚悟の全部はわかりませんが、それでも全力で突き進もうとする強い意志は感じました」
「…………」
「できるだけ無茶はしないでください。怪我してもすぐに私のところに来てください。私がカルさんの背中を全力でサポートします。だから…」
カルドラの目を見据え、言葉を紡ぐ。
「一緒に世界を見に行きましょう」
アイーシャの目は真剣で、その奥に確かな決意と熱が宿っていた。
唖然としていたカルドラだったが、その目を見たら、フッと顔が綻び、自然と言葉が出た。
「ありがとう、アイーシャ。よろしく頼む」
それを聞いたアイーシャの顔も綻び、少し恥ずかしそうに笑った。
するとその時…。
「ピーーーーー!!!」
遠くから、今までどこかに行っていたソラの声が響く。
「あ、ソラちゃん帰ってきましたね! …………あれ?」
カルドラの後方から飛んでくるソラを見つけるアイーシャだったが、更にその後方、先ほど魔物と戦闘していた辺りに黒い靄が立ち上っているのに気づいた。
「ピーーー! ピ、ピーーー!」
「いててててどうしたソラ???」
カルドラの髪を引っ張りなにやら焦っているソラ。
そして後方の黒い靄を観察するアイーシャが呟く。
「………もしかして魔物が生まれる?」
「え? 魔物?」
「ピーーーー!」
髪を引っ張られながらカルドラも黒い靄を観察し始める。
靄はしゅるしゅると人の形を取り始め、体長4メートルはあろうかという巨人の姿となった。
「!!! オーガ!」
「アイーシャ! 逃げるぞ!!!」
「ピー!」




