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双棍のトラベラー  作者: コルミ
後処理のあれこれ
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向き合い方

 しばらく歩き、空に夕焼けが現れ始めた頃4人はギルド前に到着した。


「よし! 到着! エルミアさんすみませんでした。長々と歩かせてしまって…」

「い、いえ…。貴重な体験ができましたので…。大丈夫です…はい…」


 疲労が滲む表情で答えるエルミア。やはり事務職の彼女に登山と下山と森の移動は辛かったようだ。

 道中アイーシャが何回か回復魔法を掛けてあげていた。疲労が取れるわけではないが筋肉のダメージは軽減されるため、何もしないより楽になるのだ。気休め程度ではあるが、エルミアとしては非常に有難かった。


「あの…、もしお時間がありましたら一緒にギルドマスターに会っていただけませんか? 私1人で全て説明できる自信がありません…」


 不安そうにお願いしてくるエルミア。確かにドラゴンやら魔族やら、一般的には簡単に信じられない報告が目白押しである。証人は多い方が良いかもしれない。


「わかりました。おれもヴァルクスのことで少し話がしたいので一緒に行かせてください」

「ありがとうございます。助かります」


 ほっと胸を撫で下ろすエルミア。余程1人で報告に行くのが心配だったらしい。

 ちょっとした裏世界に引き入れてしまったことを申し訳なく思いながら、3人はエルミアに着いてギルドへ入った。




 ギルドの一室。そこではギルドマスター、兵士長、町長の3人が頭を抱えていた。

 彼らは坑道の魔石をどうするか話し合うために集まっていたのだが、そこへダンジョン攻略者を連れたエルミアが現れ、町の根幹を揺るがすような報告をしたからだ。


「……その、鉱山にドラゴンが居るという話を信じろと…?」


 ギルドマスター、グラントが重々しい口調で言う。


「マスター。私は実際そのドラゴンと会話してきました。私自身いまだに信じられない気持ちではありますが、事実です」

「……なんということだ…」


 エルミアの言葉に、町長のクロフは力なく呟く。

 町の近くに巨大なドラゴンが巣くっているという事実に絶望しているようだ。


「……カルドラ君、ダンジョンでドラゴンの魔物と戦ったという君に聞きたい。そのドラゴンを倒せると思うか?」


 兵士長、アイゼルが尋ねる。

 その言葉を聞き、カルドラはここに出向いて良かったと思った。


「アイゼルさん、その考えは傲慢と言わざるを得ません。そもそもこの地に先に住んでいたのはそのドラゴンです。普通なら人族が縄張りに侵入した時点で排除されているところを、ドラゴンの温情で見逃されているに過ぎない。共存することができないなら、この地を去るべきは人の方です」

「……傲慢…か…」


 カルドラの強い言葉に渋い顔をするアイゼル。

 カルドラは更に続ける。


「質問に率直に答えるなら、勝つのは不可能です。ダンジョンにいたドラゴンの魔物は全長15メートルほどでしたが、そのサイズのドラゴンにすらほとんどダメージを与えられませんでした。鉱山のドラゴンは視界に収まらないほど巨大です。彼にしてみれば我々人など小虫のようなものでしょう」

「………」


 カルドラの言葉に沈黙する町のトップたち。

 町を守る立場にある彼らとしてはドラゴンの存在は許容し難いのだろう。


「し、神官様! 我々はどうすれば良いでしょうか! この町を捨てなければならないのですか!?」

「はい?」


 取り乱した様子で神官であるアイーシャに意見を求める町長クロフ。

 急に話し掛けられたのでぽやっとした顔で返事をしたアイーシャだったが、すぐに神官っぽい雰囲気になり語り始めた。


「町長様、安心してください。あのドラゴンを必要以上に恐れることありません。彼は常にこの町を見守ってくれています。私たちが向き合い方を間違えさえしなければ、環境の守護神としてこれからもこの一帯を守護してくれることでしょう」

「おぉぉ…。神官様…」


(相変わらずアイーシャは切り替えがすごいな…)


 神官モードのアイーシャの言葉に涙を流しそうなクロフ。

 素のアイーシャを知ったらクロフはどんな顔をするだろうか…と、その光景を何とも言えない表情で眺めるカルドラ。


「アイーシャ様の言う通り、あのドラゴンは寛大です。私たちが間違いを起こさなければ、あちらから干渉してくることは無いと思います」


 エルミアがアイーシャに便乗して言葉を続ける。

 実際に会ってきたエルミアにはヴァルクスが町を襲うことは有り得ないという確信があった。


「……しかしなぁ…」

「……うぅむ…」


 ギルドマスターのグラントと兵士長のアイゼルは尚も渋い表情だ。

 気持ちはわかるが、正直ヴァルクスのことは本題ではない。魔族のことを説明するために必要だったから彼の存在を明かしたのだ。さっさと納得してもらいたい。


「おれたちがダンジョンに赴いたのは、ドラゴンにダンジョンの破壊を頼まれたからです。おれたちに頼んだ理由を彼はこう言っています。『我が動くと人族が作った洞窟が潰れてしまう』と」

「……」「……」


 無言で考えるグラントとアイゼル。

 もう一押ししてみる。


「ドラゴンの名はヴァルクス=グラン=オル・カストディアというそうです。彼から見ればおれは小物も良い所ですが、そんなおれに名を教えるくらい、彼は人族と向き合ってくれています。繰り返しになりますが、人族側が向き合い方を間違えさえしなければ、彼が町を襲うことは有り得ません」

「……」「……」


 話を聞いて、グラントとアイゼルは軽く視線を合わせた。

 そしてグラントがため息をつき、口を開く。


「わかった。こちらからは一切干渉しないことを約束しよう。これまで通り、互いに不干渉を貫けば平和だってことなんだろ? 間違いが起きないように、ここで聞いた話は誰にも言わん。アイゼルもクロフも誰にも喋るなよ? 特にクロフ、気をつけるんだぞ?」

「わ、わかっとるわ! 私はここで聞いた話は忘れることにする! 今後これ関係の話は私に振るんじゃないぞ!?」


 何とか3人はヴァルクスの存在を受け止めてくれたようだ。

 クロフは少し取り乱し気味だが、関わりたくない方向に行っているので大丈夫だろう。

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