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双棍のトラベラー  作者: コルミ
旅は道連れ
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魔法世界のトラベラー

 風が吹き、踏み固められた土から埃が舞う。僅かに生えた草は、踏まれても枯れることなく力強く根を張る。しかし少し脇に逸れるとそこには沢山の草が生い茂り、踏み固められた土は道としての姿を見せる。


 そんな街道を歩く1人の青年。身体は細身ながらしっかりと鍛えられており、筋肉の確かな存在感を感じる。その背にはショートソード…、ではなく"棍棒"を2本携え、頭の上には小さな白いドラゴンが鎮座する。

 ドラゴンの頭は小さく、首と尻尾は長く、可愛らしい小さい手足に、頭から尻尾の先までを覆い尽くせそうな大きな翼を持つ。体表を覆うその白い鱗と甲殻は艶やかに輝き、鱗の縁が僅かに青み掛かる。

 そのドラゴンの見据える先には町があり、今まさに彼らは町に踏み入ろうとしていた。


「よーーーーし! やっとついたぞソラ! 結構かかったな!」

「ピー!」


 彼の名はカルドラ。世界の景色を見て回るという夢を叶えるべく、最近旅に出た駆け出しのトラベラーだ。

 そして頭に乗る小さなドラゴンはソラ。カルドラが小さい頃から一緒に居る彼の家族だ。

 そんな彼らに町の門番が声を掛ける。


「ようこそ兄ちゃん。"ハネトカゲ"を連れて旅とは珍しいな」


 ソラを見ながら門番が話す。ハネトカゲとはその名の通り、羽の付いたトカゲである。早朝の民家の屋根で良く日光浴している姿が見れるくらいにはポピュラーな動物だ。

 一方ドラゴンは巨大かつ人が寄り付かない大自然に生息するため、ソラをドラゴンだと思う人はまずいない。


「かわいいでしょ? 大事な家族ですよ」

「そうか。町で逃げられないように気を付けるんだぞ? じゃ、ゆっくりしていけよ」

「了解です。ありがとうございます」


 門番とのやり取りを終え、いざ町の中へ。

 ぐぐ~っと伸びをし、町を見据える。


「さーて、まずは飯だ飯。腹減ってフラフラだよ」

「ピ?」

「ソラはいいよなー。その辺の魔力ぜんぶ食料だもんな」

「ピー!」


 ソラは空気中の魔力を主食とするため食料を探す必要がない。そんなソラを羨ましがりながら、カルドラは酒場を目指す。

 きょろきょろと周りを見ながら歩いていると、視界にはそこそこに立ち並ぶ商店が映る。ある程度の物品は揃えることができそうだ。そしてすぐ横をすれ違いそうになった女性に道を尋ねる。


「すみません。おれ旅人なんですが、この町の酒場ってどの辺だかわかりますか?」


 聞かれた女性は快く教えてくれた。


「あー旅人さん? よくこんな何もない町に来たね。まぁゆっくりしていきなよ。酒場はその角を曲がればすぐわかるよ。看板があるから」

「何もないなんてとんでもない。長閑で良い所ですよ。酒場はあっちですね。ありがとうございます!」


 軽く頭を下げると、女性は笑顔で手を振り見送ってくれた。


(うん。良い町だ)


 温かい交流で心がぽかぽかする。その感情を味わいながら聞いた方向へ進んで行くと、聞いた通り酒場の看板が見えた。


「よーっし! 飯が食える!」

「ピー!」


 しかしいざ酒場に入ろうとすると、ソラはフラ~っとどこかへ飛んで行ってしまった。周りの子どもたちが「ハネトカゲだー!」とソラを追いかけていく。


(まぁ人ごみは嫌だよね。そうだよね…。捕まらないように気をつけてな…)


 相棒の裏切りに少し心を痛め、しかし気を取り直してカルドラは酒場へ入る。


がやがや… がやがや…


 酒場の中は結構人が入っており、席はほぼ満席だった。


「ありゃ、時間帯がまずいか?」


 席を探し歩き出すと、忙しそうに働くウェイトレスがすぐ横を通る。


「ごめんなさい、通りますね」

「あ、ごめんなさい」


 身体を逸らし通してあげると、彼女はそのままテーブルに早足で進み料理を置き、空いた皿を回収し戻ってくる。


「ごめんなさーい」

「はいはいー」


 す…っと彼女を通してあげて、周りを見渡す。…座れそうにない。


「……少し時間潰すか」


 外に出ようと踵を返す。その時…。


ガシャァンッ


 酒場に大きな音が響いた。


「ああああ! てめぇ! なにしやがる!」

「あー…。ご、ごめんなさい…」


 悲痛な叫びをあげる男の声と、気まずそうな女の声が聞こえてきた。

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