景虎様は大きくレベルアップしています
『戦闘に勝利。レベルアップしました。おめでとうございます』
「ありがとう。アドバイスとかマジ助かった!」
やっぱり三匹も相手にするのはキツイ。こういうことがあるから、みんな普通はチームで組んでいくんだよなぁ。
「お! なんか落ちてる?」
シュウシュウという音と共にモンスターは消えて去っていったが、代わりに何かを落としていた。
「棍棒に弓矢に剣……せっかくだから持って帰りたいな。ただ、ちょっと荷物が増え過ぎてるっていうか」
一応小さなリュックはあるんだけど、もっと大きい奴じゃないと入らない。勿体ないけど、捨てていくと思っていた時だった。
『一部アイテムは、サブスク特典のボックスでお預かりが可能です』
「預かるって? え、どうやんの?」
『お預かり必要なものをお伝えいただければ、この場で収納します』
「え? じゃあ、この剣と棍棒と弓矢お願いしていい?」
一体どうするっていうんだろ。こんな小さいゴーグルじゃ何もできない気がするけど。
すると、一瞬にして目の前に奇妙な虹色の穴が出現した。
「な、なんだあ!?」
びっくりしている俺をよそに、ゴブリンが落としていった持ち物が光りだし、あっという間に中に入っていく。
『収納が完了しました』
「マジかよ……どうなってんだ。ってか、出したい時はどうすんの?」
『取り出しが必要な時におっしゃっていただければ、すぐに出します。いつでも可能です』
ビックリとか通り越して、ぽかーんとしちゃう自分がいた。
「え? みんなこんなサービス使ってるのか。俺が見ていた限り、こんな凄いものはなかった気がするけど」
『使っているのではないでしょうか』
「え? なんでそこ曖昧なの?」
『統計が手元にありません。ところで景虎様。ミッション報酬はいかがいたしますか』
「あ、そうだ! もう一回画面出してくれ」
そういえばすっかり忘れていたけど、ミッションの受け取りがまだだった。
すぐにウインドウが出てきたが、さっきまで達成していたミッションに加えて、初めてゴブリンを討伐したとか、モンスターを六匹討伐したとか、追加で達成しているものがある。
俺はとりあえず、ウインドウ右側にある【一括受け取り】を指で触れてみた。
その後、数秒していたが何も起こる気配はなし。挙動不審に周りを見渡していたら、突如として天井付近が輝き出し、なんかいろいろと落下してきた。
なんかのチケットが一枚、召喚カードが三枚、それからまた知らない魔法陣みたいな絵が描かれたカードが一枚あった。
それから緑の液体が入っている瓶が一つと、デッカイ骨付き肉が一つ。
『スキップチケット一枚、召喚カード三枚、マジックカード一枚、万能薬と、魔牛の肉、EXPを四回分獲得しました』
「すげえ、一気に手に入ったじゃん。ってかマジックカードってなんだ?」
『魔法を覚えることができるカードです。今回のカードは【ファイアボール】の習得が可能です』
「え、マジで? 俺魔法使えるようになれんの?」
魔法。それは今まで架空の世界にしか存在しなかった不思議な力。でもダンジョンが出現したことで、人類も魔法が使える人がどんどん登場してる。
「でも、魔法っていうのは先天的なもので、レベルが上がらないと習得できないんじゃなかったっけ?」
『マジックカードを身につけることで、使用することが可能です。習得率は0%からスタートし、100%になるとカードを持っていなくても利用することができます』
「おお、じゃあ早速持っておこう」
『残りはどうしますか』
「一旦しまっておいてくれるかな? あ、そういえば召喚カードは持っていくか」
召喚カードは五枚までなら、そのまま使えるらしい。なんでもそれ以降手に入ったものは、一度ダンジョンを出てからじゃないと効果を発揮できないとか。
ミリアがチケットや他のアイテムをしまってくれた後、俺はとりあえずダンジョン内を彷徨き回った末に、地下へと続く階段を見つけた。
降りていった先には、同じような通路が。ここで、なんか自分の体に異変が起きていることに気づいた。
「なんか、クラクラしてきた気がする」
『恐らく、急激なレベルアップによるものかと。本日の探索はここまでとしますか?』
「ああ、じゃあやめておくか。ってか、急激なレベルアップなんてしたっけ?」
実はあの後、一度もモンスターと遭遇していない。モンスターに勝たないと、経験値は入らないはず……と思っていたら一つ忘れていることを思い出した。
「そういえば、ミッションの報酬を受け取った時、EXPがなんちゃらって」
『はい。先ほどミッション達成で獲得したEXPにより、景虎様は大きくレベルアップしています』
「そうなの? とりあえず出よ」
さっきのでレベルアップしてたのか。とにかくこの体調では探索が厳しいので、俺はそそくさと出口に向かった。
ようやくダンジョンから出ると、外の空気が美味すぎてちょっと気持ちいい。
「良かったぁ。無事降りられたわ。あ、そういえば配信は!?」
しばらく配信のことを気にしてなかったけど、どうやら同接はさっきの一名だけだったらしく。コメント欄皆無の虚しい世界が広がっている。
「まあ、最初はこんなもんか。じゃあ配信終わります。お疲れ様でした」
『配信を終了しました』
サクッと初配信は終了し、俺は徐々に体調が戻ってくるのを感じたものの、疲労感は続いていた。
帰りの道すがら、気になっていたことをミリアに質問してみる。
「今の俺って、レベルどれくらい? ステータス見たいな」
『承知しました。ステータス、オープン』
「ほう。なるほど……!?」
俺はゴーグル内に表示されたステータス画面を見て固まった。
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名前:竜牙景虎
探索者レアリティ:R
レベル:13
体力:30/158
魔力:8/33
力:167
速さ:88
頑丈さ:129
器用さ:45
運:71
使える魔法:
ファイアボール(カード効果)
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「……え……」
さっきのミッション報酬とやらで、こんなにレベル上がってるじゃん。体力の上限が急に上がったから、さっきまで体調が悪い気がしていたんだ。
でも、もっと気になっていたのは、このレベルが上がる速度だ。さっきミッションで貰ったEXPで、こうも上がるものだろうか。
「なあ、ミリア。レベルって、こんな簡単に上がるっけ?」
事務所にいた頃、俺が荷物持ちで一ヶ月頑張り続けても、三つくらいしか上がらなかったんだけど。
『はい。今後もストレスなく上昇していく想定となりますので、ご安心を』
「……そ、そうか」
よく知らんけど、AIが断言しているのでそうなんだろう、きっと。もう疲れていたので、無理やりだが納得することにした。
とにかく俺は呆気に取られつつも、初めてのダンジョン探索を終えて、家に帰るのだった。




