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「すいませーん、次のお客さんで最後です」
ギャルA、Bが現れた。
美咲はスライムジュースを販売した。
ギャルたちはスライムジュースを飲んだ。
ん?ギャルズの様子がおかしいぞ。
「えっスライム?なにこれうまいんですけど」
「マジウケるー」
「「ギャハハハ」」
ギャルA、Bはスライムジュースの虜になった。
「しゃ!」
美咲は小さくガッツポーズした。
ギャル二人を倒した。いや常連になったのだった。
━━━お客さんが帰ったので店の片付けをしていると美咲さんがレジ締めを始めた。
「えっとスライムジュースが90杯で4万5千円、凄い!新記録だわ」
それはよかった。そういえばスライム一匹でジュース10杯作れたので、俺と美咲さんが飲んだのを引いても98杯作れたはず。残り8杯分は……、その時俺はビニール袋に包まれた何かを店の片隅に見つけた。もしかしてあれはお土産か?自分用だったりして?
「……村の復興に光が見えてきたわ……」
「ん?村の復興ってどうゆうことです?」
「そうね……もう話してもよいかしら……私の村の壇上村は、特区となっていて、今は国の補助で生かさず殺さずのギリギリで維持されている状態なんだ。壇上村の収益って特区だから無税で、国に税を納めなくていいってことになってるんだけど、それでもこれまでは私の店の売上を合わせてなんとか維持して生活してたの」
「そうなんですか」
「ええ、そこに現れたのが神代さんなの……ところで聞いていいのかな……神代さんはなぜ自分が取り込まれるとわかっててダンジョンに潜ったの?」
「えっえっとそれは……僕ブラック会社に勤めてて、そこは残業手当てや有給といった概念がない会社で働けば働くほど損する仕組みな気がして、それで鬱の症状ぽいのが出てきたんです。なんだか死にたくなって死ぬつもりでダンジョンに入りました。けどどうせ死ぬつもりならダンジョンで挑戦して自分の力で稼いでみたいって、今思えばスライムを倒せば倒す程お金になるって、ダンジョンに希望を見ていたのかもしれません」
「そうなの……話してくれてありがとう。はいこれは今回の報酬」
美咲さんは売上から5千円を取ると今回の報酬分スライム500円×10匹分を渡してきたのだ。
「神代さん、そんな会社辞めちゃって家の村の復興手伝ってくれないかしら、報酬は完全な歩合制だけど働けば働く程報酬がでるわ、そんなブラック会社みたいに搾取されずに済むと思うの」
「そうですね、会社辞めちゃおっかなー……辞めれるかなー」
「そんな会社辞めちゃいなさい」
「わかりました。俺会社辞めてきます」
「いいわよ、あとは任せて」
彼女はスマホを取り出して電話をし始めた。
「あっもしもしお疲れさまです。神代晟都さん正式に家で採用することになりました。はい、はい、わかりました。本人に伝えておきますね」
誰に電話してるのだろうか?
「神代さんもう会社行かなくていいわ、あなた辞めたことになったから」
「えっどうゆうことですかそれは?そっそれに辞めるにも確か2週間前以上前から連絡しないとダメじゃ?」
「大丈夫大丈夫、しかる所に連絡しといたから」
「えっしかる所って?」
「ちょっと言えないとこ」
うん、深追いはやめておこう。その時ウインクした美咲さんが、俺にはなんだか女神に見えた。
「手続きもこっちでしとくから、明日からじゃんじゃんダンジョン潜って稼いできて、あっそうそう、これからは晟都さんて呼んでいいかしら?」
「えっいいですけど」
「私のことは美咲って呼んでね」
「えっ呼び捨てはさすがに……美咲さんって呼びます」
「それでいいわ、これからはよいビジネスパートナーとしてダンジョンをよろしく」
差し出された手、
「こちらこそ」
美咲さんに握手する。力強く握しめられたその手はひんやりとしててなんだかこっぱずしかった。
これは新たな力を得た俺の起死回生の物語である。
………と願いたいのであった。