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「ええ、そして冒険者になる条件が魔臓器をもった志願者となっています。神代様は数十年ぶりの冒険者となったんです」
いわくダンジョンから得た物はギルドが買い取り、冒険者は免税、稼いだ分だけ冒険者のものになるそうだ。
「手続きはこちらでしておきます。お腹すきましたね。先にお昼にしましょうか」
「そうですね」
「お昼簡単な物で悪いんだけど家で食べない?ちょっと報酬渡すのに午後から少し手伝ってほしいことがあんだけど……」
えっお昼いただけるの美咲さんの家で、報酬もらうのに手伝いってなんだろう?……うっそっそんなうるうるした目で見つめられたら。
「ごちそうになります!」
仮役所をでて美咲さんの家に向かった。
……美咲さんのお宅は古い日本家屋であった。瓦つきの立派な門に壇上家の表札がある広い庭付きの屋敷だ。
「ただいまー」
「ああお帰りー」
ん?この人は?
「こちらは今日から冒険者になる神代さんです」
「……そうなのか……ぜひ村のためにも頑張って下さい」
「はい……はははは」
「あなた、まだ来たばかりなんだからプレッシャー与えちゃだめよ」
「ああ、悪い悪い」
あなた?ってことはこの優しそうなおいたんは旦那……美咲さんは人妻だったのか!!
セイトは心にダメージをくらった。
「さあどうそたいしたおもてなしはできないけど上がってちょうだい、じゃあ美咲ちょっと出掛けてくる」
「そうなの?いってらっしゃい……どうぞお上がりください」
……美咲さんのお宅でお昼をごちそうになった。握りたてのおにぎりと味噌で身も心も全快した。
……そして美咲さんのキッチンカーに乗って作業の開始である。
「さてこのスライムの解体をします」
「はい」
デデンっとまな板におかれたスライム・・・てか食えるのか!
「食べれるのって顔してますね……魔物ってとっても美味しいって、昔家のおじいちゃんがよく言ってたんですよねー」
美咲さんは汚物を触るように最小限にスライムを指で持って、洗い土や粘着物質を落し、無表情で包丁でスライムを解体し始めた。内蔵は捨て、スライムの身の部分であるスライムゼリーと核の中にあった魔石の部位にわかれたようである。
スライムゼリーをお湯で茹でると、元よりは小さく縮んでしまう、それを取り出し水で冷やし細かく切って、おしゃれな容器に入れジュースを入れると、なんと!スライムゼリー入りジュースが出来てしまった。
「どうぞー」
満面の笑みで差し出してくる。
……これは毒味役ってやつか……えーいままよと試しに飲んでみる。
ティキーン!
脳内に電流が走ったような音がする。第六感に目覚めそうな気分だ。
「なんて美味しいジュースなんだ。これがスライムの旨味……なのか、スライムゼリーのほのかな酸味と甘味、それでいて噛めば噛むほど……」
ティキーン!
「そこ!うかつな奴め、旨味が口の中に広がる……まるで宇宙にいる気分、うまい!なんだこれはタピオカなんかよりはるかにうまいぞ!」
「どっどうしたんですか?神代さん……そんなに美味しいなら私も一口」
ゴクリ。
……。
ゴク、
ゴクゴク、
ゴクゴクゴクゴク。
「ブハー、なっなんですかこれは!口の中が幸せで満たされちゃいますー。美味しすぎますよこれ。飲んでも幸せ♪噛んでても幸せ♪」
「ねっ!ヤバイですよこれ」
「あうー、ここにあるの全部飲んでしまいない気分です……けど村のために売らないと……よし!神代さん、お店のお手伝いお願いします」
「わかりました。これめっちゃ売れそうですね」
試作を終えたので車を走らせ美咲さんと販売へと向かった。
*注意書き
法的に村ですることはモラル上問題なければ村での出来事はグレーゾーンとする。ここは村から得られるであろう利益により、関係各所は臨機応変になっている世界であった。