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奇妙な一家! 日常編

 この辺りから本編で出た菜緒菜奈の思い出話と重なり始めます。

 本編を読まれた方なら発言の意図やその後の結果は分かるかと。


 今日は休日。目覚ましを掛けずに寝て、目を覚ましたら朝の10時を少し過ぎていた。

 外の新鮮な空気を吸おうと寝室の窓を開け放つ。


 ──うん、今日もいい天気!


「おはようございます」

「おはよう」


 私服に着替え一階へ向かうと階段下でメイドに出迎えられた。

 挨拶を交わしてリビングスペースに目をやる。

 流石にこんな時間だからか、普段なら菜奈かノアのどちらかがここで寛いでいるのだが今日は誰もいない。


「みんなは?」

天探女(ご主人)様以外、ご朝食は済まされて直ぐにお出掛けになられました」

「そう」


 家にいるのは私と天探女(あの人)だけ。


「では朝食の準備をいたしますね」

「お願い……あっ! 昨日の残りはまだある?」

昨日(さくじつ)の? はい、ございますが?」

「それをお願い」

「かしこまりました」


 メイドはキッチンに向かい、昨日食べ切れなかった「お土産」の準備に向かう。

 準備は直ぐに済むと思うが洗顔だけでも済まそうと洗面所へ。


 顔を洗い鏡で自分の顔を見る。

 最近は充分な睡眠が取れているので肌の張りが良く、冷たい水で洗ってもツッパリ感がなく手入れも非常に楽になった。


 洗面所から出てリビングへ。

 ソファーに座ると水が入った小さなコップをメイドが持ってきてくれた。


「どうぞ」

「ありがとう」


 受け取ると中の冷茶を一気に飲み干す。

 カラのコップを受け取ったメイドは料理を再開する為に再びキッチンへ。

 料理が出来上がるまでもう少し時間が有りそうなので窓からの景色を眺めると、家の前にある湖の中央付近に手漕ぎボートが浮いており、大きな麦わら帽子を被った誰かが釣り糸を垂らしているのが見えた。


 ──あれは……ノア。菜奈は……いない。



 ここに住むようになって早一年。

 始めは驚きの連続だった。

 一番驚いたのは言うまでも無くなく家主である天探女。

 彼女自身と会ったのは初日のみで、以降は悪戯をする時だけ()()()メイドアンドロイドを介して姿を現した。

 その悪戯は娘達(主にミア)に対して仕掛けられたが、いつも反撃を食らって退散してゆくパターンが殆ど。そこに無関係な私が巻き込まれるのが定番となっていた。

 何度もマジ切れする程の大迷惑を被っていたが、そのせいで早々に天探女の能力(スキル)が判明した。


 彼女はアンドロイドに搭載されているAIを乗っ取り意のままに操れるようで、部屋から出てこない代わりにメイドアンドロイドに頻繁に乗り移って行動していた。

 所謂ハッキングという行為なのだが、政府所有物に対してハッキング行為をしバレずに済んでいるのは物凄く高度な能力を有している証明となる。


 次に驚いたのはこの家で出される食事。

 出てくる料理の見た目、臭い、味、食感。

 同じ食材を使っているにも関わらず全くの別物に感じられたのだ。


 今の食事は「ポチっとな」一つで調理済みの料理が転送装置によって出来立てホヤホヤが送られてくるのが当たり前。味や見た目も指定出来るし手間暇要らず。子供でも難なく操作が出来るシステム。

 なのだがこの家ではメイドさんが食材の仕込みから調理までキッチンで「一から」作っており、それが原因ではないかと考えた。


 なので興味本位で覗いてみた。

 加工前の「野菜」や「肉」を生れて初めて「生で」見れて感動したし、パン生地がプクーと膨れたところを見たりして菜奈と二人して目を点にして感動しまくった。

 ただ食材を包丁で切り分けるのだけは、指を切りそうで最後まで見ていられなかったし「火」を使って料理をしていたのには驚かされた。

 でも結局、美味しくなる秘訣は不分仕舞(わからずじまい)であった。


 そして料理だけでなく、今飲んだお茶にも使われている水。

 こちらも食料品同様に、水道管と精製所が転送装置によって直結しているのが当たり前。

 だがこの家の水は明らかに味や飲み心地が違っていたので聞いてみたら、飲料水のみならずお風呂の水、更には排水用の水までもが地下から汲み上げてろ過した水を使っているとのことだった。


 更に調理に使う火はこの惑星で採掘された天然ガスを精製した物を使っているし、一人で入るには広すぎる浴室の湯はリビングの暖炉にも使われている「薪」を使って沸かしていたのには結構呆れた。(注:薪は専用の装置を用いて火を(おこ)している)


『何故ここまで手間暇かけているの?』とメイドに聞いたが『天探女様の方針で理由までは』との困り顔の返事。

 ならばとノアに聞いたらこちらは『そうなの? どこが手間?』と逆に聞かれた。

 彼女曰く、物心ついた時にはここで暮らしていたから気にしたことは無い、と。

 ミアは追っ掛けようとすると直ぐ隠れるし、あめちゃん……天探女さんは初日以来、家の中にいる気配は感じるが姿は見せないので聞けず終い。

 そうこうしている内にノアが言うように慣れてしまった。


 それとミアノアの年齢が分かった。彼女らは歳相応の背格好、外見通りの五つ下の九歳で私達と同じ学生。

 この惑星は子供の人数が少ないらしくの学校は一校のみ。だからミアノアもラーナと同じ学生服でネクタイの色も赤だった。

 私達も同じ制服になるのかと思ったが、今ある制服とどちらを使っても構わないと言われたし、異なる制服を着ている子も僅かだがいるとのことだったので着慣れた制服を着続けることにした。

 そのミアノアは学校に向かう際、何故か伊達眼鏡を必ず掛けて、さらに仲が良いのをアピールするが如く必ず手を繋いで学校へと向かう。

 それをいつも羨望の眼差しで見送る私。


 ただ歳は判明したが家以外では見分けが付けられずにいた。

 そこに転機が訪れる。

 登校日に二人をたまたま学校で見掛けて声を掛けた際、見分けが付かず名を呼べなかった。

 すると変化が起きた。次の登校日に学校へ向かおうとしていた二人を見たら、ノアのネクタイの色が赤から青へと変わった。

 これがキッカケで何となくでしかなかった二人の僅かな「違い」を明確に気付き始める。


 先ずは性格。

 ミアの落ち着きの無さは「思い立ったら吉日的」な発想から来ており、後先をあまり考えないチャレンジャータイプであった。そのくせどこか臆病なところがありそれが落ち着きの無さの原因では無いかと思った。

 ノアは逆に受け身で何をするのもマイペース、なのだが何処か「黒さ」が感じられた。

 というのも二人が一緒にいる時は()()()()()()()の見分けが付かないほどの瓜二つ。分かり易く言えば()()()()()()()状態。

 つまりノアがミアにではなく、ミアがノアに合わせていたのだ。

 そうするには訳があると思い考えたら理由は直ぐに思いついた。それと眼鏡をかける理由も。

 そこまで理解が及ぶと二人の見分けだけでなく、考えていることも何となくだが分かるようになと、この姉妹の主導権はノアが握っているのに気付いた。


 ただ二人が何の研究? をしているかが分かったのはかなり先。

 私達が後に十六歳になってから(ここ)を出て寄宿舎生活を始めて、天探女(あの人)が「ではまた会おうなのじゃ」と伝言を残して姿を眩ました後、ミアノア(二人)だけで暮らし始めた後に起こした事件にて知った。



「菜奈は何処に行ったのかな……」

「街へは行かれていないようです」

「そう」



 この家に来てから()()()()()()もあり、菜奈は私から見ても以前とは見違える程の成長を遂げていた。

 引っ越ししてから一ヶ月経つまではほぼ毎日、ラーナは私達、というよりも主に菜奈の話し相手をしに来てくれていた。

 菜奈の表情や仕草から「何を言いたいのか」を察して言葉を引き出す。

 そして毎回私達が知らない世界を面白おかしく話して聞かせ、菜奈だけでなく私の視野や考え方まで変えてくれた。

 そのお蔭で菜奈は色々なモノに興味を持ち始め、私は心に余裕が持てるようになった。


 それとは別に私達の身体に目に見える変化が起きていた。

 天探女さんの宣言通りに()()()を境に私達姉妹の身体が急激と呼ぶにふさわしい成長を始めたのだ。

 ここに来た時点では平均よりちょっと低い140cm程だったのが僅か三ケ月ほどで一気に5cm! も伸び、さらにBカップ記念に買ったブラがキツくなってきたのだ。


 菜奈とお風呂に入っていた時にその事を話したら同じく困っていたらしく、服だけでもどうにかしないとと意見が合った。

 作り直すならいっそ新しいものを買おう! と翌日の授業後に、気晴らしも兼ねてこの惑星に来て初めての買い物に二人で出掛けた。

 転送装置を使い向かった先は人影疎らだが結構な店舗数を有したショッピングモール。

 その大半が何処かで見聞きした事がある有名な店舗ばかり。


 先ずは下着を買いにランジェリーショップへ。

 店内の専用ディスプレイをポチッとすると子供用から大人用まで、定番の白から赤や黒といった直視し辛い様々な種類(タイプ)が次々と表示される。

 因み身に付ける類いの物はその場でサイズを計測し、身に付ける者に合わせ「その場で構成」されるので、サイズ違いといったことは起きない。


 取り敢えず、年相応の物を菜奈と一緒に好奇心丸出しで選んでいく。


 ──ん? アレ?


 ある事に気付いた。そう、製品の説明は出ているが価格の表示がない事に。


 ──自分達の支給金(お小遣い)で買えるのかな……


 どうせなら気に入った物が欲しい。

 その為に倹約してきたと思えば……


 そこでアンドロイド店員に価格を聞いたところ『探索部所属の方とその家族の方は月に三セットまで無料ですよ』と。さらに『表示が現れ(見え)ていないのは該当者であり、更にその権利がまだ残っているから見えていないだけで、非該当者や権利を使い切った者には値段が表示され(見え)る』と教えてくれた。

 し・か・も嬉しい事に、このモール内の店舗に限らず、この惑星上にある全ての店舗が個別に同じ仕組みを採用しており、残った権利は翌月以降に持ち越しが可能だと。

 つまりこの惑星で生活している者は全員該当ということになり、私達もこの中から好きなモノを纏まった数、貰えることになる。


 それを知って以来、菜奈は休みの度に一人で出掛け始めた。

 見知らぬ土地での単独行動。

 悲しい思いをしたら可哀想だと思い、本人に内緒でこの惑星内の環境を調べたら、驚く事に()()で空間モニターが使えるらしく、脳内通話も問題なく使えることが判明した。

 保安システムが惑星全域を常時監視しているし、店舗やサービスで接客しているのは大半がアンドロイドで、全てが星系メインAIのシステムと直結、管理下に置かれているらしい。

 星系メインAI一元化された情報は全てのアンドロイドが共有し、対応にムラが生じない、利用者に合わせたサービスを提供してくれるので「人」相手のような気兼ねや気を使わなくて済むとのことだった。


 それを知って以降、菜奈に関わる時間が激減した。

 菜奈からしてみれば慣れない土地でも気兼ねすることなく安心して朝から晩までお出掛けを堪能出来るし、私もフォローしなくて済むようになった。

 まあお蔭で休みの日はこうして朝寝坊が出来るようになったのだ。

 ただし大量に送って(抱えて帰って)くるお土産の処理に頭を悩ませるようになったが。

 そのお土産の一つである水羊羹。

 移住前にラーナが持ってきたお土産を作った和菓子専門店を昨日やっと見付けたらしく、一度では食べきれない量を持って帰って来た。



「ご準備が整いました」


 絶妙な間隔で切り分けられた羊羹と、見事な色をした湯呑に入ったお茶が食卓の上に置かれた。

 朝から甘い物だと食が進まない、がこの和菓子ならいくらでも食べれてしまう。


 菜奈曰く「なんでも『獅子屋』という超有名な? 和菓子屋で修業を積んだ職人がこの惑星で出店している」とのこと。

 噂話に上がるような腕前の職人がいる店なら、こんな人口が少ない所じゃなくて立地条件がよい所で手広くやれば儲かりそうだが……何か拘りでもあるのだろうか?


「ただいま」


 食べ終える頃に玄関の扉が開き菜奈が帰って来た。


「お帰り。朝早くからどこに行っていたの?」

「おさんぽ。それより菜緒」

「どうしたの?」


 何か良いことがあった顔つき。


「友達が……増えたんだ」

「友達? 誰?」

「……内緒」

「え⁇ な、ないしょぉ?」


 ガーーーーン! 菜奈が私に隠し事をするなんて……


「今度……話す」

「え? う、うん」


 ぴんぽ~ん


 そこに来客の予告を告げるチャイムが。

 この家の者ではない誰かがここに転送装置を使ってやってきますよ、との合図。


 メイドが玄関を開け、入口脇のテラスに設置された転送装置の前で待ち構えていると、


「やっほ~~」


 聴き慣れた声。どうやらラーナのようだ。


「菜緒ちゃんと~菜奈ちゃんは~いるかな~?」

「はい御在宅です。中へどうぞ」


 メイドに続き、両手両足を大きく前後に振って元気良く歩く笑顔のラーナが入って来る。


「お~ひ~さ~」


 二人を見付けると片手を振っての挨拶。


「おはようございます」

「ん……ご無沙汰」


 最近は一カ月に一回程度とラーナの来訪は減っていた。


「じゃーーん! 今日は~二人に~嬉しい~お知らせが~あります~」

「「?」」

「来月から~特別な~学校に~通うことが~決定しました~」


 来月……って明後日から?


「え? どこへ?」

「え~と~探索部の~候補生育成施設の~中にある~学校~」

「探索部って確か成人後とかって言ってませんでした?」

「うん言ったよ~。んと~今回は~学生のままで~仮入部~ってな感じ~」

「ラーナさんと……同じに?」

「う~ん微妙に違うけど~まあそんな感じかな~」



 聞けば初めは週二回の登校日の一日だけ、学校に行かずに訓練校に出向く形になると。

 そして最終的には休みの日以外は育成施設に行き、午前中は(施設内にて)学校の授業を受け午後は訓練を行う形に移行する、と。

(因みに学校は週休二日。訓練校も週二日の休み。基地勤務の探索者や職員は二日働いたら一日休み)



 ラーナが菜奈の状態を知った上で登校日を充てたことに抵抗を感じたが、ここに来てからの彼女の行いや、今説明を聞いた時の菜奈の反応を見て文句を言うのを止めた。


 というのも週二回の登校日は団体生活を学ぶ場を目的としており、様々な年代の学生たちとのレクレーションを中心としたカリキュラムが組まれている。

 以前住んでいた惑星の学校でもこの授業はあったし毎回欠かさず参加をしていた。

 だが残念ながら目に見える、期待していた効果が見られなかったのを思い出す。

 それなら菜奈(本人)も乗り気だし、このラーナの誘いに賭けてみようと思ったのだ。



「そうそう~ちゃんとお手当も出るし~お得な特典も盛り沢山~」

「手当?」「特典?」

「そう~一日のお手当がこれくらい~」


 空間モニターが現れて手当の詳細と総額が表示される。


「……!」


 金額を見て菜緒が驚く。二回行けば月のお小遣いを超える額。


「特典は~探索者専用契約店舗が~使えるように~なるかしらね~」


 画像が変わり特典が表示される。どれもが女性なら憧れるサービスを提供している有名店がズラリと並んでいた。


「で~極めつけが~身分ね~」

「「?」」

「貴方達二人は~来月から~探索者(仮)と~なります~。コレって~凄くない~?」


 仮って? お試し期間みたいなもの?


「ラーナさんも……一緒?」

「ごめんね~私と姉さんは~実はもう~探索者なのよね~」

「…………」

「え? 成人していたの?」

「うん」

「それは……おめでとうございます」


「……おめで…とう」


 残念そうな菜奈。


「ありがと~貴方達も~十五歳になってたのよね~おめでと~」

「ありがとうございます。それで訓練校の件ですが」

「初回だけ~私が~案内するから~心配しないでね~」

「い、いやそうじゃなくて」

「服装は〜学生服で〜いいわよ〜」

「…………」

「朝九時に〜迎えに来るね〜」


 異議を受け付ける気は無いらしい。

 という訳で早速明日、三人で向かうこととなった。


*支給金……この惑星でも菜緒菜奈は行政管轄が変わっただけで政府(厳密に言えば探索部)の保護下に置かれているのは変わりがない。なので生活に必要な一定額の「お小遣い」は本人達に直接支給されている。そしてお小遣いはあくまでもお小遣いなので、政府は用途に口を挟まない。


*天然ガス……この物語世界では、石油や天然ガスの類いは「生物由来の化石物」ではなく、マントル上部から地殻下部へと「染み出してくる物質」の扱いで「地球型」である個体惑星にはどこでも当り前に存在する古資源の扱いです。


 クラスターのお陰でてんてこまいな日常。

 中々話が進みませんが数日中にもう一話、更新出来るかと。

 それと明日「秋の歴史」の参加作品も予約投稿してあるので、暇つぶしに覗いてみて下さい。


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