仲良し四人組? 思いやり編
今話のネタバレはマリちゃんの特殊能力と「姉妹の関係」です。
特殊能力は作中で何度か話題に出たり、その能力を使って大活躍していたので軽い説明でおわらせてあります。なので今回は「マリマキの関係」に重みをおいた作りにしました。
旅立つ前と「消失終了後」の二人の性格の変化と成長が表現できていればい良いなと思っています。
「家宝」は論外だが、我が一族の素性や探索者になった目的も今は話せない。
なので抽象的な言い回しで説明すると、何故か同情の目を向けられた。
その眼差しの理由が気になったがそれよりも話題を変えるのを優先した。
「で、二人はどうなんだ?」
自分達とは異なりこの二人はどこにでもいる普通の家庭出身……だった筈。
「「ウチら?」」
急にフラれて戸惑う二人。
「そうそう! どうして探索者になろうと思ったの? 目的は? 志望動機は?」
「……目的?」
「……無いな……けど」
考え込んだ後、お互いを見合う。
「「けど?」」
「マリはどうなん?」
「ウチ? ウチは……いやマキはどうや?」
思案顔になるが直ぐに思いついたようで言おうとしたが止めて聞き返す。
「ウチはマリと多分同じやで」
「そうか、同じか! つーことは」
「お互い」
「成長」
「「したってことか!」」
パン!
ニヤつきながら向き合うと行き成りハイタッチを交わす。
「「?」」
なにが同じやねん! ハイタッチしとらんで教えんかい! とマリマキ口調でツッコミを入れようとしたが堪えて辛抱強く続きを待つと、ニタつきながらも昔話を始めてくれた。
成人を迎える半年ほど前にマキに突然届いた一通のメール。
その日はちょうど休日。普段と変わらず両親との朝食を食べ終え、そのまま隣の居間の畳の上で横になり空間モニターでお笑い番組を見て寛ごうとしたところをメールに邪魔された。
不機嫌になりながらも読み込んでいくと、そこに記されてあったのは『探索部勧誘のお知らせ』というメッチャ怪しい内容であった。
「なあおとん」
隣の畳部屋で座椅子に座り、腕を組みながら新聞を読んでいた父を呼ぶ。
「あーーちょい待て。今怪しいメールが届いてな」
「……それ『探索部』っちゅーところから?」
「なんで知っとるねん。もしやマキの仕業か」
「ウチがそんな面倒臭いことするか?」
「それもそうか。疑ってスマンかった」
「ええねんて。それより同じ文がウチのところにもな……」
とお互い背を向けたままの会話を続けたが、マリがまだ起きてこないのと、詳しい説明は「また来週~」とヤル気が感じられない内容だったのでお互い取りあえずは放置を決め込む。
それから数時間後。
「あ、やはり家に居った! ちっと相談のってくれへん?」
昼直前、今度はパジャマ姿で慌てた様子のマリがドカドカと足音をさせながら居間へ来るなり大声で突っかかってきた。
結果、またもやいい所で邪魔される。
「なんや慌てて。その歳で溺れたか? おかんに黙っとくさかい早う片付けや」
洗濯用機器に丸ごとブッ込めば一瞬で証拠隠滅。
「溺れる? ……って十六にもなって漏らすか!」
「ちゃうの? ならどした?」
「コレ、ちーと見てくれんへん?」
眼前にもう一枚空間モニターが現れたので横になりながら眺めたが、初めの数行で読むのを止めるとマリに一言。
「ん? おーやっぱマリんとこにも届いてたか」
「……へ?」
予想外な返答? だったようで固まってしまう。
「その様子だと最後まで読んどらんようやね。届いたのは確か朝食食べた後……だったような気がする」
それくらい自分で調べろと言いたかったが、その後に間違いなく始まるであろう「やり取り」が面倒臭かったので大体の時間を教えてあげた。
因みにマリ家の朝食は毎朝7:30と決まっているので八時ちょい前に届いたことになる。
「ほうほう。なら何して起こしてくれへんの?」
「折角の休みで幸せな夢見てるところ邪魔したら可哀想やない?」
「およ? 気、遣うてくれたんか?」
「当たり前やん。感謝しい」
「それはそれはあんがとさん。でな気持ちよう寝とったら、何や目に刺激を感じて起きたら鼻先スレスレに浮かんでたこの画面の文字がピカピカデカデカと点滅繰り返しとってな」
「それ『いつまでシカトしとらんで早う読め!』ってわざわざ起こそうとしてくれたんちゃうの?」
「そ、そーか……なら礼言っとかんと……」
と空間モニターに頭を突っ込んでから頭を上げて早速読み込んでゆく。
「……ほうほうマキと一緒か。そんで探索部って聞いたことあらへんけど何ぞ? マキは……」「ウチは知らんで」
「ウチはって……いやマキが怪しい団体に関わっとるとは一言も言うてない」
「なら宜しい。それより探索名乗っとるからには派遣先は昔流行った異世界ちゃう?」
「そうか! このメールの送り主はホンマは神様で、ウチらはもう直ぐチートな美人姉妹として召喚されるっちゅーワケやね!」
「お、チート持ちか、そりゃ苦労せんでええ! 寝起きなのに冴えとるやん!」
「あたぼーよ! なら早速おとんとおかんに報告と、いつ呼ばれてもええように持ってくモンの準備しとかんと!」
入ってきた時と同じ勢いで部屋から出て行ってしまった。
「おかんにそろそろ昼にせーへんって言っといて~な~」
結局マリが来てから出て行くまで背を向けたままでやり取りを終える。
──先ずは説明しにくるって書いてあるやん。また最後まで読んどらんな……あとどいつもこいつも騒ぎ過ぎやて。
因みにもおかんにも同じメールが届いていた。
おかんは「父ちゃんこれ公務員ちゃう? ボーナス百倍?」と目を輝かせ、おとんは「そやから母ちゃん今晩は赤飯炊いてーな!」と疑うこと無く二人で大盛り上がっていた。
なので弄り甲斐のないウチではなく、マリを弄ろうと手ぐすね引いて待ち構えていることだろう。
「とまあ出だしはこんな感じでスカウトに話を聞く前から行く気満々で大変やった」
「「へーーーー」」
「で次の休みの日に予告通りやって来た、メッチャ胡散臭そうでお気軽口調のスカウトに一つ返事で承諾しちまいよった」
「……あーーアイツね」
「確か『契約して探索者になってよ』だったか」
「胡散臭そう? ウチには良い奴に見えたけど?」
「「…………」」
──その感性はある意味「美徳」と言えるのかもしれない……×2
付き合いが長くマリの欠点を知っている二人はマキに同情の眼差しを向ける。
「そこからウチは苦労の連続やった」
「マキが? いつ苦労したん?」
「ほうほうそうきたか。ならバラしちゃる」
アタリメを食いちぎり一気に咀嚼、ごっくんと飲み込んでから口を開いた。
・・・・・・
メールが届いた翌週の休日。
一家揃って「スカウト」から話を聞いた際、両親が真っ先に「ほれ公務員やった! これでウチらの老後も安泰や!」と大歓喜。
その様子を見ていたマリは「こ、これもウチの日頃の行いが良かったからやね!」と調子に乗り出す始末。
──何故、親の老後が安泰するんや? それとマリはどの行いを言うとるの? それよりスカウトの言う事信じるんかい?
とツッコミは我慢しつつ、真っ当な政府職員だし特に将来「何がしたいのか」といった展望も持っていなかったので勧誘を受けることにした。
その時に『学校を卒業後、出来るだけ早い時期に探索部の職員に迎えに来させます』と言われたが、それをマリが『要らへん。ウチらは自分の足で向かう!』と大見え切って拒否してくれた。
さらに同席していた両親も「ウチの子なら心配あらへん!」とマリに同調する始末。
ただ姉の迷惑な癖を知っている妹としては、目的地に辿り着けない可能性も考慮しなくてはならず、姉や両親に内緒でスカウトさんに連絡を取り、Bエリア用候補生訓練施設がある惑星迄の渡航手段を手配して貰う。
そして数週間後の旅立ち当日、数百光年離れた惑星に移住する為、両親がお声掛けした町内会さん総出で「盛大に」見送られ家を出た……のだがそこからが大変だった。
初めの苦労は指定された便の宇宙船へ繋がっている転送装置。
まだ地元、だが慣れ親しんだ「空気」との暫しのお別れと哀愁に浸っていたので油断していた。
「ほなら行くで……ってその足降ろすな!」
「へ? なして?」
声を掛けると上げた片足を止めてこちらを振り向く。
「そこちゃう! こっち!」
慌てて駆け寄り引き戻す。
「乗る便間違えたら見当違いの所に行ってまうから搭乗用転送装置は一つ一つ行き先が決まってるやろ?」
「うん。そやからここに」
「もう一度チケットよーーく見て確かめてみ」
指摘されたので空間モニターを呼び出し、乗る便のチケットと転送装置の真上にデカデカと表示されている便名を照らし合わせる。
「……あ」
「納得したな? ほなら行くで」
「お、おうすんまへん」
「指示通りに行かなあかんて」
──案の定、始まりよった……方向音痴が。
マリはいくつか難点を抱えておりそのうちの一つが思い込みによる方向音痴。
これが厄介で、マリに先頭を任せたら幾多の困難に遭遇する羽目となる。
分かり易い例えは「すごろく」だ。
行った先に思いもよらない「困難」が待ち受けている。
同行者からしてみれば悪夢のような難点だが、本人はそれが当たり前とポジティブに行け入れてしまっているので質が悪い。
かなりの遠回りをすること間違いなしだが「一応」目的地には辿り着けるし、不幸中の幸いというか、怪我を負ったり他人に迷惑掛けたり、さらに「振り出し」に戻ったことは一度も無いので我慢はできたが……
そんなこんなで無事目的の宇宙船に乗り、候補生育成施設がある惑星へと到着。
指定されたゲートへ向かおうとしたところで、マリがあらぬ方向へフラフラと歩き出していた。
「何処行くん? ゲートはこっちやで」
「い、いやな腹減ってしもた」
「腹か? まだ昼前やで?」
「いや確かにそうやけど」
「分かった。どっかで茶でもシバこか」
「う、うん」
──まあしゃーない。一旦仕切り直すか。
と言う事で空港内の手身近な和食レストランへ駆け込む。
この空港は民間人も利用している為か店内はそこそこ賑わっていた。
因みに代金は「探索部」持ちとなっているので遠慮はしない。
開いている席に案内され早速料理を注文する。
「なあマリ」
「?」
「ホンマええの?」
「ええって何が?」
「踏ん切りついとらんのやろ?」
食後のひと時。本心を言わせるには今が最適なタイミング。
「…………マキは?」
「ウチ?」
「マキはええの?」
「…………」
「マキが嫌ならここで引き返す」
──また人をダシに使いよってからに。ウチの事はどうでもええねんて。
「ウチは構わへん」
「ええの? ホンマに?」
「ええも何もスカウトさん言ってたやろ? 「何時でも辞めれる」って。肌に合わん思うたら帰ればええねん」
「そ、そやね」
「マリはマリのやりたいことすればええねんて」
「そ、そうか」
「そうよ。ウチの姉ちゃんなんやからもう少し堂々としいや」
「……うん分かった。ウチはマキの姉ちゃんなんやからしっかりしないとな」
少しだけ笑顔が戻る。
「よし、腹も膨れたし行こか」
「お、おう!」
空港内の転送ルームへ。
ここで一般人が近寄らない「政府専用」と書かれたゲートの先にある転送ルームへ。
そこで待機していた警備アンドロイドが「マリ様とマキ様ですね。お待ちしておりました」と言ってから、一つの転送装置を案内してくれた。
その装置に乗ると「探索部Bエリア候補生育成施設」の受付けがある施設へと一気に行けた。
「な、なあマキや」
「どした?」
「ホンマここで合ってんの?」
「多分な」
「そ、そうか多分か……」
何故か肩を落す。
「ウチも来たことあらへんのに知らんがな」
「そ、そりゃそうか」
「ま、今回は一応アチラさんの指示通りに来とるさかい、ここで間違いないやろ」
「う、うん」
着いた場所は公園等でよく見掛ける『ガゼボ』の中で柱と柵とベンチに囲まれた中心にいた。
唯一仕切りの無い正面の出入り口の先には左右に延びた歩道が。
その道に降りて辺りを見渡す。
右手の先には横に長い二階建ての如何にも「政府機関」と思える建物が。
反対側の道は何処までも延びる平坦で真っ直ぐな道が。目を凝らしてみれば道の先に門らしきモノがあり、その両隣は何処までも続く柵が横方向へと続く。
それ以外、見える範囲は起伏も遮る物も何も無い、どこまでも続く緑の芝生が広がっていた。
──このまま行ってしまってええのやろか……
「……そろそろ行こか」
「お、おう」
守衛や監視装置の類いは何処にも見当たらないので自分が先頭に立ち建物がある方へと歩みを進める。
そして入口となる自動ドアの前まであと一歩という所で後方から呟き声が聞こえてきた。
「……な、なあ、やっぱり」
余程不安なのだろう。だがここまできたら引き返すつもりはない。マリの為にも。
「あんな、姉ちゃんってうぉ!」
振り返ると特徴的な服を着た金髪と黒髪の少女がマリの直ぐ後ろに立っていた。
「ど、どしたん……ひぇっ?」
マキの視線の先に顔を向ける。
そこには今どき珍しい髪型をした、同い年くらいの女性がいたので思わずおかしな声を上げてしまった。
「失礼」
「ひぇ……ってう、ウチ?」
「はい。何かお困りで?」
よく見れば体操服? を着て汗を流し呼吸を整えながら品の有る爽やか笑顔を向けていた。
「い、いや困っとる言うか……」
「貴方達、もしかして候補生?」
隣にいた活発そうな黒髪ボブカットの少女が返答を待たずに割り込んでくる。
「そうなんよ。到着したばかりでどこに行けばいいか迷ってたんよ」
固まっている姉の肩に手を置いて横に並ぶ。
「案内しようか?」
「そりゃ助かる」
「お安い御用です」
「ウチの名はマキ。こっちが姉のマリで共に十七歳」
「初めまして。私はシェリーと申します」
「私はシャーリー! 私もお姉様も貴方達と同い年よ!」
「そうか! で、お宅らも候補生け?」
笑顔で頷く二人。
「ところで……マリさん」
「う、ウチ?」
「顔色が良くないようですが……どこか体調がお悪いのでは?」
「え? いや……」
「取り敢えず医務室に行こう!」
「え? い、いやウチは」
「頼むわ。案内してくれるか?」
「では早速参りましょう」
シャーリーに手を引かれ、半ば強制的に建物へと連れて行かれていかれた。
・・・・・・
「そうか……あの時点のマリならしょうがないな」
「うんうん、今なら良く分かる」
「御理解いただけたようで」
「実はあの時我々も『何か失礼な事でもしたのでは?』と不安になっていたんだ」
「そりゃマリが迷惑を掛けた。代わりに謝っとく」
「「どういたしまして」」
成程。二人が何故、家を出たのか《・》性格を知りつくした今なら分かる。
この姉妹はお互いの(性格の)欠点を克服させるいい機会だと探索部を選んだのだ。
そして両親も我が子の性格を知っていたからこそ、勢いに任せた見送り方をしたのだ、と。
その結果二人は見事に成長を遂げれたし、両親も一回りも二回りも大きくなって帰郷した我が子の姿を見れて安堵したことだろう。
──自分達も同じだな……
そう言えば今更だが我がBエリアは昔とは比べるも無く笑顔に満ち溢れている。
先輩諸氏は正直言って分からないが、我ら姉妹を始め、マリマキやリンランやミアノア、そして元Dエリアの若者たちも皆、望みが叶ったといえる。
「いや~~懐かしい話しやね」
ポツリと呟くマリ。何十年ぶりかで開かれた同窓会でチラホラ見掛ける、遠くを見つめる眼差しで。
「「「……(こいつは)……」」」
マリには内緒でタバスコ入りのタコヤーキをオーダーする三人であった。
*新聞・・空間モニターを「紙媒体だった頃の新聞」に変化させて読んでいる。
*乗る便間違えたら・・通常は勿論乗れません、が「探索部に入る」という意思を示した時点からマリマキは「探索部候補生」の身分なので「簡単に」乗れてしまう(搭乗時に意思の確認は受けます)
次回はシャーリーの出番。拗れる予定。
・・・・
「活動報告」にてお知らせしましたが「次回作」の構想が纏まったので「気が変わらない内に」ある程度は進めておきたく、こちらを月1~2の更新ペースに落とさせてもらいます。
今後の予定ですが「次回作」を書き溜めながら、四人の話はあと2話で終わらせ「うんちく」を挟み「迷宮編」へと突入します。(迷宮編は全20話くらい?完結したのでギャグベースで好き放題やらせてもらいます)
その後は次回作の目処が立ち次第、こちらに戻り優先して終わらせるつもりです。(迷宮編ではサラ・天探女・桜姉妹は出ませんが新生エリスは出ます)




