97ー帰って来たぞ!
「メイド服に限らず、この防汚効果は良いですねぇ。普段着にしてもドレスにしても良いですねぇ」
「そっか。汚れないんですもんね」
「そうですねぇ。実験ももう済んでますからねぇ、直ぐに使ってもらえますねぇ」
「ねえ、ロイソさん。じゃあ、母さまのドレスの生地とかでも大丈夫?」
「もちろんなんですねぇ。防汚効果は外からだけでなく内側もですからねぇ。ドレスだとなかなか洗えませんから特に良いですねぇ。防汚効果を全部の糸にしても良い位なんですねぇ。これはとても良いんですねぇ」
なるほど。どの糸にも防汚効果が標準装備って事か。いいね、それ。
「分かった。兄さまと相談しておくわ。今日は取り敢えずメイド服用をもらっていくわ」
「はいなんですねぇ」
いやいや、凄いよ。着心地が良くて、状態異常無効がついておまけに防汚効果が標準装備だ。そんな生地どこにもないぜ。
「お嬢さまぁ、ラッキーでしたねぇ」
「ね、ほんと。でも凄いわ、あの爺さん」
「ルイソさんですねぇ」
咲、ルイソ爺さんみたいな語尾になってるぞ。
「まあ、欲を言うならば……」
「なんですかぁ?」
「もっと早く言って欲しかったよねぇ」
防汚効果のある糸が既にもうあるなんて思っていなかったから、クリスティー先生に教わったんだよねぇ。あ、俺もルイソ爺さんの語尾みたくなってる。
気を取り直して、作業部屋へと急ぐ。
作業部屋で糸を渡して、メイド服の製作に取り掛かっていたんだ。
「お嬢! 帰ってこられました!」
「えッ!? 今どこ!?」
「前庭におられます!」
何が帰ってきたかって? そりゃ、あれだ。うちのドンが帰ってきたんだ。父が帰ってきたんだ。
俺は、咲や隆と一緒に大急ぎで、前庭へと向かう。
「父さまッ! バルト兄さまッ!」
「おうッ! ココ! 元気にしていたかぁッ!!」
ガシィッと父に抱き締められちゃった。ちょっと力が強すぎるぜ。
「父さま! おかえりなさい!」
「ココ、色々発明したんだって?」
バルト兄、発明ってなんだよ。そんな大したもんじゃないぜ。
「バルト兄さま! おかえりなさい!」
「ああ、ただいま!」
大きな手でガシガシと頭を撫でられる。ああ、久しぶりだ。やっぱ2人がいないと寂しいぞ。
「あなたもバルトも談話室へ行きましょう。ココちゃんもよ」
「はい、母さま」
おや? どこかで見た顔があるぞ。あれは確か……そうだ。王子の護衛といっていた奴だ。ずっといなかったけど、王都にいたのか?
そこに王子がやってきた。
「アル……アルベルト!」
「殿下! お1人にしてしまい申し訳ございません!」
アルベルトと呼ばれた護衛が、王子に片膝をついた。
「いや、アルが無事で良かった。調べられたのか?」
「これから皆さまにもご報告致します」
「そうか」
きっと父やバルト兄と一緒に、王子を狙っていたのは誰なのか調べていたのだろう。
「父上達はどうした?」
「あら? お声は掛けてあるのだけど」
みんな談話室に揃っているのに、じーちゃん達がいない。
すると、廊下から大きな声が聞こえてきた。
「俺様に勝とうなんて千年早いわ! ワッハッハー!!」
ああ、この声は霧島だ。ということは、またじーちゃん達と一緒に鍛練していたのか。
「おおッ! 戻ったか!」
「父上、叔父上、世話になりました!」
「いやいや! 大した事はしとらんぞぉッ!」
「旦那様、世話になっとります!」
「おうッ! シゲ爺か! ということはワインがあるのだな!?」
「はいッ! 今年の出来も上々ですぜ!」
「おぉッ! 楽しみだなッ!」
ああ、みんな声がデカイ。もう耳がキンキンするよ。
「あなた……」
「おう、そうだった。父上、叔父上、シゲ爺も座ってくれ」
やっと全員席についた。霧島がふわりふわりと飛んでくる。
「どうしたの?」
「え、ココの側にいたら駄目なのか?」
「駄目じゃないけど」
だって、いつも仲良くじーちゃんと一緒にいるじゃん?
「アン!」
「ん? なんだ!?」
ノワの鳴き声で父が気付いた。
「父上、ココがテイムしたのです」
「おう、可愛い犬ではないかッ!」
「父上、犬ではありません」
「ロディ、どう見てもこれは犬だろうぅ?」
「いえ、父上。ブラックフェンリルです」
「フ、フ、フェンリルだとぉーッ!!」
ああ、また声が大きい。ま、そうなると予想はできたけど。いちいち立たなくて良いから。
「ココォ! どうしてこうなったぁッ!?」
「父さま、森で保護したんです」
盗賊団の討伐の為に森へ行った事を説明する。
「なんとぉッ! トレントが出たかッ!?」
「はい、メープルトレント、ハニートレント、マッシュトレントが出たそうですよ」
「マッシュもかッ!?」
「ええ、父上。ココと殿下がクリスティー先生に教わって回復薬を作れるようになりましたよ」
「回復薬をかッ!? 子供はほんの少し目を離しただけですぐに成長するものだなぁッ!」
いやいや、そんな大げさなもんじゃねーよ。
「ノワと言ったか?」
父がノワに向かって手を出す。
「アン!」
「ノワ、私の父さまとバルト兄さまよ」
「アンアン!」
尻尾をブンブンと振って父の手を舐める。
「おぉッ! なんとも可愛らしいなッ!」
「アハハハ、本当に犬みたいじゃないか」
「兄上、これでもブラックフェンリルです」
「ロディ、ブラックフェンリルって珍しいのではなかったか?」
「兄上、そうらしいです」
「しかし、ココにはいつも驚かされる」
「バルト兄さま、そんな事ありません」
「あなた、そろそろあちらでの事を」
「ああ、そうだったな」
「父上、俺から話します」
「バルト、頼んだ」
結局、バルト兄が話すんだ。
読んでいただき有難うございます!
誤字報告も有難うございます。クリスティー先生の口調まで誤字報告して頂くなんて面白いやら嬉しいやらです!
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さてさて、くどい様ですが。
リリの書籍版が本日発売でっす!
よろしくお願いします!




