91ー帰路
「う……うにゃ~ん! にゃ~ん!」
「ほ、ほんとにもう怖くないのか?」
兄だろう子がそう聞いてくる。
「大丈夫よ。あいつ等は捕まえたわ。怖かったでしょう。家族のところへ帰れるわよ」
「お、俺……俺達に家族はいない。2人だけだ。とーちゃんとかーちゃんは死んじゃって……う、ヒック」
今まで堪えていたのだろう。兄らしき猫獣人の子も涙が流れる。
「そうなの。よく生きていてくれたわ。大丈夫だからね」
「なんとも酷い事をするッ!!」
じーちゃんが怒っている。あと2名の女性と女の子は隣国に家族がいる事が分かった。
4人とも酷く汚れているし食事も取れていないらしい。食べ物は持っていなかったが、水をあげると4人共喉を鳴らして飲み干した。
とにかく邸に連れ戻ってからだ。
「さあ! ココ、帰ろうッ!」
「はいッ! お祖父さま!」
俺は、ノワを抱っこして咲の馬に乗っている。大人しく、抱かれているんだ。もう、ふわもこだよ。手触り最高だ。
保護した4人も領主隊がしっかり馬に乗せている。
今日はとにかく捕縛した盗賊団を連行して戻る。
森の中に潜んでいたんだ。手荷物等もあるだろう。それを放置はしない。魔物が寄ってくる元になる場合もある。食べ物とかさ。
しかし、魔物が生息する森の中で檻に入れられて、どれだけ怖かった事だろう。
盗賊団の片付けはまた日を改めて領主隊が派遣されるらしい。
森の中で、魔物を警戒しながらお片付けだ。迷惑な事だよ。
隣国では、懸賞金が懸けられていた盗賊団だ。多分、隣国にも知らせが行くだろう。うちの領地の手柄じゃん。でも多分、外交の手土産にでもされるんだろう。
何を考えて領地に入ってきたのか。辺境の地だと舐めてたのかね。
領民達に被害が出なくて良かったよ。
そんな事を考えながら、パッパカパッパカと街中を邸に向かって進む。
――うおッ! 盗賊団捕まえたんだ!
――さすがだねッ!
――ユリシスさまー!
――ディオシスさまー!
おうおう、じーちゃん達も人気者じゃん。領民全員が顔を知っているじーちゃん兄弟。
領地の西から東までフットワークも軽く走ってくれているからだ。そりゃ、人気もあるよ。
――ココさまぁー!
――お疲れさまですー!
ハハハ、俺もか。有難いね。
「ありがとうー!」
――ココ様、可愛いー!
「お嬢、可愛いそうッスよ」
「リュウ、いいじゃない」
「ブハハハ!」
笑うんじゃないよ。どこからどう見ても可愛い令嬢じゃんか。
「はいですぅ」
「ね、サキはよく分かってるわ」
行きより和やかな雰囲気で隊は進む。だからか、帰りの方が多く声が掛かる。領民達も分かっているんだね。
「お嬢、もう無謀な事はしないでくださいよ」
「何よ、リュウ。無謀って」
「それッスよ。ノワ」
「そうですぅ」
「え、無謀だった?」
「何言ってんスか。手を食いちぎられてもおかしくないんスよ」
げ、食いちぎるなんてそんな大げさな。こんな小さな可愛いワンちゃんが。
「ココ、大げさじゃねーぞ。フェンリルはそれだけ力があるんだ」
「え、早く言ってよ!」
「いやいや! 言う間もなくココが近付いて行ったんじゃんか!」
「えぇー! 腑に落ちないなぁ」
「何がだよ!」
こんな事を言っているが、霧島の知識は豊富だ。今回もノワのあの弱った気配で魔獣ではないと見抜いていた。ドラゴンて凄い存在なんだな。
「ココ、少しは見直したかよ」
「ほんの少しね」
「少しかよー!」
アハハハ。こういうところが面白い。無邪気で良いよな。
さあ、邸が見えてきたぞ。
「ノワ、あたし達の家よ。ノワも今日からあそこに住むのよ。母さまと兄さまがいるから紹介するわね」
「アン」
可愛いじゃん。霧島よりずっと素直で可愛いよ。
「あん? ココ何か言ったか?」
「何でもないですぅ」
霧島、地獄耳だぜぃ。
「あらあらまあまあ!」
母がノワにロックオンだ。
「ココちゃん、その可愛らしい子は何なの?」
「はい、母さま。森で保護しました。ブラックフェンリルのノワです」
「ココ! ブラックフェンリルなのか!?」
「はい、兄さま」
ロディ兄が目をまん丸にしてるよ。
「キリシマ、僕の知識だとフェンリルって森で最強の守護聖獣なんだけど?」
「その通りだよ、ロディ。俺が止める間もなくココがテイムしちまったんだ」
「テ、テイムってあのテイミングか?」
「ああ、それだ」
「ココ……」
「え? 兄さま、駄目ですか?」
「駄目も何も……また父上が喜ぶよ」
「ロディ! そこかよッ!」
「アハハハ! キリシマはツッコミが激しいなぁ」
「もう、この兄妹は……」
「ココちゃん、懐いてるの? 母さまが抱っこしても平気かしら?」
「ノワ、あたしの母さまとロディ兄さまよ」
「アン!」
「まあ! 分かっているのね。お利口さんだこと!」
母はそう言いながら手を出して、そっとノワを撫でる。
「まあ……手触り最高じゃない!」
「え、母上。そうなんですか?」
「ええ、ロディ。ふわもこよ」
俺はノワを母に渡す。お利口さんだ。大人しく抱っこされている。
「まあまあまあ! なんて可愛いんでしょう!」
「母上、僕も触らせて下さい」
母とロディ兄はノワに釘付けだ。
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