77ークリスティー先生の魔法講座 付与魔法編
「絵を見せながら物語を話して聞かせるのか。それはいいね」
「でしょう?」
「素敵だわ。母様も見てみたいわ」
「クリスティー先生が張り切って持って帰りましたよ」
「まあ、ふふふ。じゃあ子供達に読んで聞かせるつもりね」
「みたいですね」
「この領地は素晴らしいですね」
「まあ、殿下有難うございます。でも突然どうされました?」
「僕は別宮から出た事がありません。それでも、ここに来るまでの馬車の中から見ていると王都には孤児がいました。街中で生活している様な孤児がです。子供だけではありません。道端に寝ている大人もいました。しかし、この領地にはそういった者達がいません。それは、きっと凄いことなのでしょう」
「殿下、それは代々の領主が努力してきたからですわ。街の規模も違います。一朝一夕にできる事ではありませんわ」
「そうなのでしょうね。それを努力し続けた辺境伯は素晴らしい」
「有難うございます。でも、この地には魔物が出ます。王都とは命の重さが違うのかも知れませんわ」
「命の重さ……ですか?」
「ええ。魔物に簡単に命を奪われてしまいますから。それこそ、本当に簡単に」
「悲しい事ですね」
「ええ。ですから……だからこそ生きている者の命を大切にするのかも知れません」
ああ、そうか。俺は母の話を聞いていて領地の方が命は軽いと言う事なのかと思った。だって、母が言う様に魔物の手によって簡単に奪われるからだ。それも確かにそうなんだ。
だけど、母が言うのは違った。逆だ。だからこそ、命を大切にするんだ。いつ何があっても後悔しない様に。そして、小さな命は大切に育てるんだ。
「僕は辺境伯に出会って、この領地に連れて来てもらって本当に良かった」
「まあ、主人が喜びますわ。ふふふ」
本当だよ。父が大きな声で泣いて喜ぶよ。
「失礼……なんだ、殿下もココもここにいらしたのですか」
ロディ兄だ。どうしたのかな?
「いつまでもお茶をしていないで、もうすぐ夕食ですよ」
「まあ、もうそんな時間なの?」
と、ロディ兄が呼びに来てお茶会はお開きになった。
「ああ、ココ。明日、魔石が入るからね。クリスティー先生にも伝えておいたよ」
「はい、兄さま」
やっと、魔石が揃う。うん、明日が楽しみだ。
そして翌日、その魔石が届いた。
「兄さま、この量はなんですか……?」
「え? 沢山ある方が良いだろう?」
そりゃ、そうなんだけどさ。それでもこれは多過ぎるだろうと思う程の魔石が届いたんだ。
大小大きさや色も様々の魔石だ。それを前にして、クリスティー先生が目をキラキラさせている。
「これだけあれば、沢山できますねッ!」
そんな問題か? どれだけ作るつもりなんだよ。
「ロディ様、ココ様、フィル君、早速練習いたしましょうね!」
ああ、クリスティー先生が超やる気だよ。
「まず、付与魔法ですが……」
と、クリスティー先生の講義が始まった。
付与魔法とは、魔石や武器等に魔法の効果を付けるものだ。例えば、バルト兄が戦う時に自分の剣に付与している。バルト兄は、風属性魔法と水属性魔法に適正がある。戦う魔物の弱点によってどちらかを使い分けている。
また、領主隊が戦う時は魔術師団が支援魔法を付与している。
うちは辺境の地だけど、領主隊だけでなく魔術師団というものがあるんだよ。団という程でもなく人数は少ないが、領主隊に同行していたりする。毎回じゃないけどね。
何をしているかと言うと、隊員達に攻撃力アップのブースト、防御力アップのプロテクトを付与しているんだ。魔法で攻撃をしたりもするし、皆にシールドを張ったりもする。因みに魔術師団の団長は母だ。意味が分からない。母はいつも邸で守る方だから、討伐に出た事ないのにさ。
それと同じ事を魔石でするんだ。攻撃力アップ、防御力アップだけでなく、シールドも付与したいよね。1回だけでも良いから確実に守ってくれるシールドが欲しいね。
魔術師団には、魔力回復力アップとか良いよな。
「はい、では実際にやってみましょう」
「はい、クリスティー先生」
と、俺は手を挙げた。
「はい、ココ様。どうしました?」
「どうやってすれば良いのですか?」
「そうですね、まずお手本をお見せしましょう」
そして、クリスティー先生は魔石を1つ手に取り、両手で包み込む様に持ち集中した。
直ぐにクリスティー先生の手の中で魔石が光り出す。
「はい、こんな感じでっす」
いや、どんな感じなんだよ。全然分からんぞ。
「クリスティー先生、今その魔石に何を付与されたのですか?」
「はい、ロディ様。良い質問でっす。今は、防御力アップを付与しました。ココ様なら完全防御もできるかも知れませんね」
いやいや、できないから。
防御力アップでも、物理攻撃防御と魔法攻撃防御がある。物理と魔法は一緒に付与できないんだそうだ。
領主隊に持たせるとしたらだ。剣を使うから邪魔にならず、華美にもならない物が良いよな。
そうだ、勲章の様にお揃いで領主隊用のロゼットを作っても良いかもな。領主隊に入れば、もれなく貰えるみたいな感じでさ。隊服の胸のところに付けると良くない? カッコいいじゃん?
小さな魔石を幾つも組み合わせられるし、良い考えかも知れない。
「ココ、良い考えだね。小さな魔石に其々の効果を付与できるし。その魔石でロゼットを作れば良い」
「はい、ロディ兄さま」
「僕も手伝えるかな?」
「フィル君も練習してみましょう」
そうだ、まずは練習だな。
クリスティー先生、よく出てきます。
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