52ーゴブリンキング
「やっぱりいた!」
「お嬢さまぁ、キングですねぇ!」
「いっとけ! アースロック!」
俺はゴブリンキングの足を土で固め動きを封じた。
「お嬢! ナイスッス!」
そこを怯む事なく、隆達が斬り付ける。隆がアッという間に、ゴブリンキングの脇に入り込み斬り付け胸に剣を突き刺した。
――グギャォォーーー!!
ドゴーン!と、地響きを立てて断末魔の悲鳴と共にゴブリンキングが倒れた。
「やった!」
「ココ!!」
あ、! まずい、ロディ兄だ。声の方を見ると、ロディ兄が馬車を降りて走って来る。
「ココ! また危ない事を!」
「兄さま! サキがいるから大丈夫です!」
「そんな問題じゃない! とにかく降りなさい!」
あぁ、やっぱ叱られるよなぁ。俺は咲に抱き上げられ、ストンと馬車の屋根から降りた。
「ココ!」
ガシッとロディ兄に抱き締められた。
「冷や冷やしたよ。危険なことはしないでくれないか」
「兄さま、ごめんなさい」
また心配かけちまった。でもなぁ、ただ見ているだけって出来ないんだよ。
「無事で良かった」
「兄さま、防御壁がある筈ですよね」
「ああ、そうだ。なのに、ゴブリンが侵入した」
これは、普通じゃないぞ。何かあるぞ。
「ココ。後は兄様に任せなさい」
「はい」
「お嬢!」
隆が叫びながらやって来た。
「怪我ないッスか⁉」
「大丈夫。何ともないわ。そっちに怪我人はいない?」
「はい。ゴブリン位何ともないッス」
「そう、良かった」
防御壁の状態を確認する為に数名残し、俺達は邸に戻った。
「ココ、大人しくしているんだよ」
「はい、兄さま」
あぁ~あ、念を押されちまったよ。
ロディ兄は領主隊に指示を出すんだろう。俺達は何しよっか。大人しくしておけと言われちゃったしなぁ。
「ココ嬢、驚いたよ」
王子だ。馬車の上に乗った時の事を言っているんだろう。
「サキがいるから大丈夫ですよ」
「凄い身のこなしだった」
「サキも鍛えていますから」
そう言えば……留守番していた霧島はどうした? まさか、また寝てんじゃねーだろうな。
「殿下、キリシマといてください」
「ああ、分かったよ」
防御壁の事も気になるが、仕方ない。
「お嬢さまぁ、土壇場になると言葉が戻ってますぅ」
「え、そう?」
「そうですぅ」
「そうッスね。ちょっと若になってるッスね」
「気を付けるわ。サキ、リュウ。作業場に行くわ」
「了解ッス」
「はいですぅ」
いかんね。意識していなかったぜ。さてさて、下着作りはどうなっているかな。
「え……凄くない!?」
「びっくりですぅ」
俺達は、下着を作っている小屋に入って驚いた。
「あ、お嬢様! 頑張りました!」
確かによく頑張った。部屋の中には白だけでなく、黒とピンクの布地と糸がわんさか積まれていた。そして、女性用の下着だ。
「お嬢様がパターンをおこして下さっていたので作っちゃいました!」
と、自慢気に言っているのは1番若いナタリーさんだ。
「みんな張り切っちゃって」
とは、まとめ役であり1番の年長者のミリーさんだ。
「見てください! このピンクめっちゃ可愛くないですか~!」
と、服の上からブラを当てて見せているのは色っぺーマニューさんだ。
「マニューさんなら黒の方が似合うわよ~」
と、茶化しているのはミシン担当のアリアさんだ。うん、その意見に賛成だ。
「凄いわ! もうこんなに出来ているなんて!」
「お嬢様、色んな色の糸ができてきたからですよ」
「そうね、あっちも褒めておかなきゃ」
「そうですね」
さすが、年長者のミリーさん。みんなの事をよく見ている。この小屋とは別にセレスアラーネアを飼育している小屋がある。まだ、仮なんだが。その小屋の方に、餌をやったり世話をして糸にまでしてくれている男性陣がいる。子育てもとっくに終わって、畑も子供達に引き継いで自分達はのんびりとできる年齢の男性が2人。マメに世話をしてくれている。
「餌を変えて色々試しているみたいですよ」
「良い事だわ。種類がふえたら良いわね」
それにしてもだ。ブラもちゃんとドレス用と普段用の2種類作ってある。マジ、頑張ったなぁ。こりゃあ、1セットずつあげなきゃだな。
「試着はしてみたの?」
「いえ、まさか。お嬢様に見せてからと思いまして」
「そう、じゃあ試着してみましょう」
「はい! ミリーさんは前に試着したからダメですよ!」
はいはい。誰でも良いよ。どうせ、みんな1セット持って帰ってもらうつもりだ。それもきっと良い宣伝になるんだ。嬉しがって自慢するだろうからな。
「じゃ~んけ~んぽん!」
「勝った~! あたし試着しま~す!」
と、今回勝ち抜いたのは最年少のナタリーさんだ。
「サキ、見てあげて」
「はいぃ」
咲も一緒に衝立の向こうへと入っていく。ま、男性は隆しかいないんだが。忘れがちだが隆はまだ16歳だ。多感なお歳頃だよ。良いのか? こんな環境でさ。
読んで頂き有難うございます!
昨日今日と、超おてんばなココちゃんでした。
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