44ーシュミーズ
さて、翌日からまた俺達は下着製作に勤しんでいる。相変わらずだな。
「ねえ、サキ」
「はいぃ、お嬢さまぁ。どうしましたぁ?」
咲は昨日からレースを黙々と編んでいる。何に使うかって? 決まってるじゃないか。母のブラ&パンティにだよ。あと、見本だ。こんなレースも作れますってな。
「ソフィまで毒にやられちゃったじゃない?」
「そうですねぇ」
「女の人って服の中は何着てるの?」
「お嬢さまぁ、自分も着てるじゃないですかぁ」
え? 俺は子供だからこんなのだと思ってたよ?
俺が服の中に着ているのは前世でいうシュミーズだ。可愛くも色っぺー訳でもない。ランニングの丈が長いバージョンみたいなやつだ。其の上、生地も前世ほど良くない。ちょっとゴワゴワしている。
「みんな一緒ですよぅ。だから、皆早く欲しいんですよぅ」
なるほどね。肌触りが全然違うからな。
「先に皆の分作る? また、誰が毒にやられるか分からないから」
「そうしますかぁ? 白でよければ其れ位はありますしねぇ」
ならさぁ、男性陣は普通にTシャツタイプでも良いと思うんだ。でも、女性用はさぁ、もうちょっと可愛くしようよ。
「サキ、今着ているみたいなランニングタイプじゃなくてね、キャミタイプにしない? 肩紐を調節できる様にして、胸の下でこうして切り替えて……」
と、言うことで試作品を作ってみた。で、何故か誰が試着するかで揉めている。誰でもいいじゃん。
隆は、少し離れた場所で無心に男性用のアンダーシャツを縫っている。まぁ、女性用の下着の話だからな。正直言って居場所がない。まだまだ多感なお年頃だからな。
「じゃ~んけ~んぽん!」
「勝った〜!」
はいはい、勝った人はさっさと試着して。で? 誰が試着するんだ?
「お嬢さまぁ、ミリーさんですぅ」
「お、おう」
そうか。ミリーさんか。ミリーさんとは一番の年長者だ。たしか、50歳は過ぎていた。衝立の向こうで女性陣が盛り上がっている。
「ミリーさん、肌綺麗ですよね」
「胸も綺麗!」
「腰は細いのにぃー」
はいはい、実況中継しなくてもいいよ~。
「お嬢様! 凄く良い感じですよ!」
衝立の向こうから顔だけだして、ミリーさんが報告をしてくれる。
「そう? それで良いかしら?」
「はい。今までのと比べ物になりませんよ。早く、ブラが欲しいです。お嬢様、見て下さい」
え? 俺、見ていいのか?
「お嬢さまぁ……」
あ、そうだ。忘れてた。俺、今幼女だった。じゃあまあ、見させてもらおう。と、衝立の向こうへ行く。
「あら、いいじゃない。やっぱキャミタイプの方が可愛いわね」
「そうですよねぇ」
「胸の部分にドレープを取ってますから胸が楽ですよ。その下で一端切り替えているのも良いですね。ドレスのラインが綺麗に出ます」
「サイズ違いで何パターンか作りますか?」
「そうね、それで対応できそう?」
「はい、肩紐も調節できますし充分です」
「ブラの時にまたしっかりサイズ違いで作りましょうぅ」
「そうね。じゃあ、男性用のアンダーシャツとこの女性用を先に作っちゃいましょう。毒対策に良いわ」
そう決めてからは、ドワーフ作のミシンがフル活動だった。白の布地は沢山あったので切っては縫い、切っては縫い。そんなある日だ。
「お嬢、待たせたな!」
「親方!」
そう、ドワーフの親方が新しいミシンを納品してくれたんだ。しかも2台だ。グッタイミ~ング!
「ココ、どうかな?」
「ロディ兄さま、ありがとうございます!」
「なんだぁ? 凄い縫ってるな。これはなんだ?」
「親方、下着よ。下着」
「ほう、下着か」
「親方、普通の下着じゃないんだよ。状態異常無効付きだ。おまけに着心地が最高だ」
「何!? 状態異常無効だと!? そんなの聞いたことねーぞ!」
「親方、セリスアラーネアの糸で作ったのよ」
「あの、蜘蛛の魔物か!?」
「そうよ。領地の特産品にしようと思って」
「お嬢、そりゃあヤバイな」
「え? ヤバイ?」
「ああ。状態異常無効付きの下着なんて、貴族や冒険者なら喉から手が出る程欲しいだろう? よく考えて売らないといかんぞ」
「兄さま」
「そうだね、親方の言う通りだ。よく考えるよ。希少価値が高いからね」
「そうだぜ。情報も出さない方がいいな」
「そうだね、セリスアラーネアを乱獲されでもしたら」
「そういうこった」
あらら? 単純に特産品が出来るとかって喜んでたらダメか?
「ココ、とにかく暫くは領主隊と邸で働いている者達の分だ。僕の黒もまだだからね」
「はい、兄さま」
「お嬢、ワシも欲しいぞ!」
「親方、ミシンの代金から引くよ?」
「ああ、構わねーぞ」
おふっ、ロディ兄。そこは引くんだ。金額も決めてないのに、1枚あげるとかじゃないんだな。
「ココ、当然だよ」
「はい、兄さま」
うん、ロディ兄に任せよう。
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