42ー霧島の力 2
「で、取り合えず、今の力を見せてくれない?」
「え、マジかよ。また叩くなよ」
そうそう叩かないさ。て、叩いてるか。悪いな。つい手が出てしまう。
「じゃあ、あの的に攻撃してみて」
「おう」
霧島はふわふわと空中に浮きながら片手を的に向けた。的までそうだなぁ、3mくらいか。弓の的の様な丸い板だ。霧島が集中し、的に向かって片手を向けた。すると……
――ピュゥゥ~……ポポポン!
まあ、とにかく的には当たった。小さな火の玉がな。
霧島の手から小さな火の玉が現れヒョロヒョロと進み的に当たったんだ。だがなぁ、これじゃあなぁ……
これだけ能力を制限されているんだ。霧島の親ドラゴンは、それだけ怒り心頭だったんだろうなぁ。
まあ、棲家を焼かれたらそりゃぁ怒るわ。気持ちは分かるけども。こんなヒョロイ火の玉だと、いざと言う時に当てにならない。
「ハァ~……キリシマ。それで精一杯なの?」
「わりぃーな」
「ほら、ドラゴンと言えば、口からもの凄い炎を吐くじゃない?」
「ドラゴンブレスなんて出来る訳ないじゃんよ! 俺だってな、情けなくてだなぁ……」
浮いたまま、シュンと肩を落としている霧島。だけど自業自得じゃね?
「じゃあ防御は? シールドを展開できるんでしょ?」
「まあ、できるっちゃぁできるな」
「やってみてよ」
「……おう」
シールドはちゃんとそれなりに展開出来ていた。ただ……霧島の半径1m程の範囲に限るだ。
これも、いざという時に役に立たない。俺が展開するシールドより小さいじゃん。ダメダメだな。
「あー……」
霧島がとうとう蹲ってしまった。浮いたまま、所謂体育座りをして自分の膝に顔を埋めている。まあ、そりゃあ落ち込むよな。
最強のドラゴンなのにさ。しかも、エンシェントドラゴンだ。それがなぁ……これだもん。泣きたくなるよな。
「キリシマ。もしね、少しでも力の制限を解除できたとするでしょう。そしたら身体の大きさも変わるのかしら? いきなり大きくなったりしないの?」
「いや、其れと此れとは別だ」
なるほどね。身体は小さいままって訳だ。元のドラゴンの大きさになられると困るからな。確認だ。大きさはこのままで、魔力の制限を少しでも無くしたいよなぁ。ま、ちょっと頑張ってみるか。どうなるか、分からないけど。
そうこうしていると、ロディ兄が咲と一緒にやって来てくれた。
「ココ、どうしたんだい?」
「兄さま、すみません。忙しかったですか?」
「大丈夫だよ。それより、どうした?」
「兄さま、キリシマの事です」
俺はロディ兄に霧島の能力の事を説明した。まともに魔法が使えない事。どうやら親ドラゴンに、無理矢理能力に制限を掛けられているらしい事。そして、ロディ兄と俺の魔力を併せたら少しは解除できるだろうという事を話した。
「そうなのか? それは盲点だったな。小さくてもエンシェントドラゴンなんだから、当然能力は高いと思い込んでいたよ。ココ、よく気が付いたね」
と、言いながらまた頭を撫でられる。スルーだ。ロディ兄の場合は、いちいち気にしていたらキリがない。なんせ、シスコンだ。
「だって、兄さま。昨夜のあの騒ぎの中、気付かずに寝ていたんですよ。そんなの有り得ないです」
「確かにそうだね。気配だけでも起きてしまうだろうね」
そうなんだよ。あの殺意だだ漏れでやって来た、何人もの刺客の気配に気付かず寝ているなんて有り得ない。俺達でさえ気付いていたのにだ。それが、ドラゴンだ。しかもエンシェントドラゴン、この世界で圧倒的な力を持つ王者だ。
「そうか、分かった。じゃあやるだけやってみようか」
「兄さま、私に魔力を流してください」
「分かった。ココ、絶対に無理するんじゃないよ」
「はい、兄さま」
俺はロディ兄と手を繋ぐ。繋いだ手からロディシスの魔力が流れてくる。目一杯それを自分の身体にため込む。下から空気を巻き上げながら、魔力がどんどん高まっていく。ロディ兄や俺の身体が淡く光り出す。そして俺は、霧島に向かって手を掲げる。
俺の全魔力の殆どとロディシスの魔力だ。少しは役に立ってくれよ。頼むぜ。
「リミットブレイク」
俺が詠唱すると、霧島の身体が目も眩む程の強く真っ白な光で包まれる。そして、パキーンッと光って消えていった。
あ、いかん。ちょっと魔力を込め過ぎたか? 俺は目の前が真っ暗になり、そのまま気を失った。手を繋いでいたロディ兄に抱き止められた。
「ココ!」
「お嬢!」
「お嬢さまぁ!」
「おい! ココ!」
どうだろう? 少しは成功したのか? 最後、光がパキーンて消えたからなぁ。完璧には解除できていないだろうな。少しは解除できていたらいいなぁ。
俺は、そんな事を考えながら意識を手放したんだ。ロディ兄が抱き止めてくれていた事は分かっていた。
次に眼が覚めたら、自分のベッドの中だった。
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