38ー談話室にて
その日の午前中は彼女たちと一緒に作業し、午後からはお勉強の時間だった。
うちの家では担当の侍女や従者も一緒に勉強する。そして、12歳になったら王都にある全寮制の学園へ入学する。その時も一緒だ。
俺は咲や隆とは歳が離れているから、2人は入学しないが付いて来る。
午後から咲と隆も一緒にカテキョの先生に教わり、そして夕食だ。夕食は余程の事がない限り必ず全員集合だ。
「ココちゃん、今日は作業場に顔を出していたの?」
「はい、母さま。ロディ兄さまの分に取り掛かってます。皆、頑張ってくれてます」
「ココ、僕の黒かい?」
「はい、兄さま。そうですよ」
「ココちゃん、母さまも次早くほしいわ」
「え? 母上、何の話ですか?」
そうか、バルト兄は知らなかったか。
「バルト、着心地とポジション最高の下着だ!」
父がデカイ声でまたポジションて言った。
父のそばでは、ドラゴンの霧島が肉を貰って無心に食べている。こいつ今のところ役に立ってないぞ。
「ふふふ……」
ほら、王子殿下が笑ってるじゃないか。
「そんな事いつの間にやっていたんだ?」
「バルト、良い特産品になるぞ!」
「ココ、俺の分は?」
「兄上、僕が先ですよ」
「じゃあ、ロディの後……」
「ダメよ。その後は私よ」
「え、母上はもう作ってもらったんでしょう?」
「別の新しいのがあるのよ」
「母さま、ピンク欲しいですよね。レースが可愛いのも」
「まあ! 素敵だわ!」
「ココ、俺も欲しい」
「バルト兄さま、父さまと同じのでも良いですか?」
「え? 色々あるのか?」
「兄上、黒はダメですよ。僕だけです」
いやいや、もう別になんでもいいじゃん。面倒になってきたぞ。
「そんな事より、あなた」
「ああ、そうだった! 食事の後に談話室だ!」
父が言う談話室。応接室と似た様なもんだ。ただ、客を入れる場合は応接室、家族だけの場合は談話室。そんな感じだ。だが、今回は王子も参加だろう。
「僕も参加します」
「殿下、よろしいのですか?」
「僕自身の事ですから」
王子は来た時と比べて顔つきが違ってきた。目に力が出てきた。
来たばかりの頃は、王子自身も先が見えなかったのだろう。父が無理矢理連れて来なければどうなっていたか分からない。
だが、今は違う。身体が健康になり、安心して眠れるようになった。昨夜の様な、刺客が来た後でさえだ。それは、大きい。
見えなかった未来を少しは考えられる様になったのかも知れない。
自分には味方がいる。そう思うだけでも八方ふさがりだった以前よりは心強いことだろう。だが、身内に命を狙われている事には変わりはない。
さて、談話室に移動した。父があのドラゴンの霧島を肩に乗せてお誕生日席で張り切っている。
「父上、俺から話します」
「お? ああ、頼む」
結局、バルト兄が話すそうだ。
「昨夜、襲撃してきた者達を尋問した。その結果だ」
結論から話すと、雇われた者達だった。
王都には、暗殺や夜襲を仕事にしている集団がいるらしい。今までは、どうやらそういう組織があるらしい、という程度だったそうだが、今回の尋問でその存在が明らかになった。雇い主の事は、末端の実行部隊である奴等は何も知らなかった。
だが、隆がハッキリと聞いていた。自害する直前に王妃の名を呼んで自害した者がいたんだ。
しかし、だからと言って王妃が依頼したとは考え難い。何故かと言うと、常に王城にいる王妃が直接そんな輩と連絡を取ることができるのかと言うと疑問が残るからだ。
そして、確たる証拠が何もない。
「殿下、実際に城ではどんな感じだったのですか?」
「私を迫害している者達が誰かと言う事か?」
「そうです」
「そうだな……もしかして兄上達は、本当に私が体調を崩して寝込んでいると思っているのではないかと感じた事があった」
「そうなのですか? それは、どんな事からでしょう?」
「私が幽閉されていた別宮の前で散歩をしていた事があったんだ。その時、偶然通りかかった兄上達に、身体は大丈夫なのかと聞かれたんだ」
「なるほど……」
「それから直ぐに王妃様から宮の外には出るなとキツク言われたんだ」
「なんと言う事をッ!! 人間、太陽の光を身体に浴びないと心が病んでくるのだぞッ!」
相変わらず、大きな声の父だ。この世界、そんな学問などないのに父の経験則からの言葉だろう。
実際、身体には太陽光が必要だ。本当に心が病んでしまうという。セロトニンが不足し体内のリズムが整わないと心のバランスが崩れるらしい。
それに、免疫力の低下だ。ビタミンDが不足し、骨粗しょう症などのさまざまな病気のリスクが高まる。と、前世本で読んだ事がある。
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