表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/249

3ー脱出

「隣りの部屋に実行犯がまだ数名いるんですぅ。増援を待っているみたいでぇ。奴等の話を聞いていたんですけどぉ、どうやら隣りの領地を治めているバカブータダ子爵の差し金らしいんですぅ」


 なんだよ、それは。前世と変わんないじゃん! 何でそんな事になってんだよ!


「お嬢様、頭は痛くないですかぁ?」

「あぁ?」


 頭だと? まだ小さな手で額を触ってみると、ヌルッとした。

 

「うげッ……!?」

「攫われた時に、お嬢様が暴れるから頭を殴られてしまってぇ。ちょっと額が切れちゃってるみたいなんですけどぉ」


 そう言いながら、咲がハンカチを額に当ててくれている。


「きっと、そのショックで記憶が戻っちゃったんですねぇ」

「マジか……」

「お嬢様だって事を忘れないで下さいねぇ」


 あ……そうだった。てか、そんなの知らねーよ!


「で、どうなってんだ?」

「ですからぁ、隣りの……」

「ちげーよ。咲は何で記憶があんだよ」

「ああ、そっちですかぁ。私も8歳まで無かったですよぅ」

「マジ……?」

「マジですぅ。お嬢様、記憶が戻っていないのにチョコチョコとそれっぽい事をするからぁ、もしかしたらと思ってたんですぅ。うふッ」


 うふッ、じゃねーよ! それっぽい事って何だよ?


「ですからぁ、今はそれどころじゃぁないんですよぅ。このままだと旦那様が乗り込んで来ちゃいますぅ。それが狙いみたいなんですよぅ」

「親父……いや、父さまが乗り込んで来たところを返り討ちにする、て事か?」

「そうみたいなんですぅ。ですから、仲間がこっちに向かっているみたいなんですぅ」


 マジかよ。今の父親は辺境伯だ。国の辺境の地を隣国や魔物の脅威から守っている超肉体派の貴族だ。熱血漢だ。脳筋だ。正義のミカタだ。

 絶対に乗り込んでくるだろう。其れまでに、なんとかここを脱出しないと! 俺が人質になっていると、父の足枷になってしまう。


「分かりましたかぁ? ですのでぇ、お嬢さまぁ。1発大っきいのをお願いしまぁすぅ」


 1発デカイのを……? 何だそれ?


「あれれぇ? そこはまだあやふやな感じですかぁ?」


 ちょっと待て。そう言えば……今の俺は、母に面白半分で教え込まれたお陰で8歳にして大人顔負け……いや、魔術師団顔負けの魔法を使い熟す化け物……いやいや、辺境伯令嬢。それが、今の俺だ。よしッ! やってやろうじゃんよ!

 

「咲……炎で良いか?」

「はいぃ。デッカイのをお願いしますぅ」


 よし! いくぞ! 俺は集中した。大丈夫だ、やれるぞ。俺は、手を掲げる。魔力を集め、そして……


「いっけー!!」


 ――ドドッカーーン!!


 小屋の壁や天井が炎の柱でブチ抜けた。お、おやぁ!? これは、ちょっとやりすぎたか?


「お嬢さまぁ! いい感じですぅー!」


 咲がガシッと俺を抱き抱えて走り出した。

 突然、爆炎が上がったものだから、隣の部屋にいた不成者達は慌てふためいている。あっという間に小屋が炎に包まれる。その中を、俺を抱えた咲がメイド服を翻して一気に走り抜ける。


 ――逃げたぞー!

 ――逃すんじゃねーぞ!

 ――待てゴラァー!


「咲! もう1発いくぞー!」

「いっちゃって下さいぃー!」

「おるらぁーー!!」


 ――ドバッシャーーン!!


 俺は、追ってくる奴等に向かって今度は超ド級の水柱をブッ放つ。だってな、火事になったらヤバイじゃん? マジで。そこは大事。


「キャハハハ! 完璧ですぅ!」


 咲の喋り方、ノリ、前世から変わんねー。緊張感がまるでない。

 だが、もしそれ以外も前世のままだとしたら……咲は優秀な戦士であり冷静沈着なスパイだ。

 影に潜んで情報収集をするのが得意。肝も座っている。しかも、俺の姉貴達にビシバシと仕込まれて鬼強い。


 咲は俺を抱えながら疾走した。俺達が捕まっていた小屋は街を抜けて直ぐにある森の中にあった。普段は狩人達が使う小屋だ。まだ、うちの領地内だ。

 

「お嬢様、平気ですかぁ? まだ走りますよぅ!」

「おう!」

「お嬢様、『おう!』は駄目ですぅ!」

 

 気が抜ける。こんなピンチな場面なのに、咲は余裕だ。


「お嬢様! 旦那様ですぅ!」


 俺が進行方向を見ると、父親が領地の兵達を連れて馬で爆走してくるのが見えた。来るの超早くね?


「お嬢様だと言う事を忘れないで下さいねぇ!」

「おう! 分かった!」


 仕方がない。ここは女の子らしくいくしかないな。いや、やっぱ自信がないから出来るだけ黙っておこう。うん、それがいい。


「ココ! ココアリア! 無事か!?」

「旦那様! ご無事ですよぅ!」


 父が馬から飛び降りて走って来た。そして、ガシッと抱き締められた。グフッ、苦しい! そして、痛い!


新作を投稿する時はいつも勇気がいります。如何な感じでしょう?

応援するぞー! と、言って下さる方は、是非いいね、評価、ブクマをお願いしま〜す!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ