28ー前世での出会い 1
父の側近であり執事の仕事も担ってくれている、シーゲル・ブライト。領主隊隊長と共に、父の背中を守ってくれている。スレンダーな身体だが、細マッチョてやつだ。この世界では珍しい黒髪だ。ストレートのロングヘアを後ろで1つに結んでいる。瞳はグレー。おしいよなぁ。俺、黒髪黒目が超恋しい。黒髪美人とかいたら、恋に落ちちゃうよ? いや、俺は今幼女だった。
シーゲルは、インペラート家の事ならなんでも頭に入っている超優秀な人だ。
と、説明しながら俺は、せっせとウルフを亜空間収納へと収納していく。領主隊がウルフの死体を纏めてくれているから、それに手をかざして只ひたすら亜空間へ収納だ。このまま放置しておくと腐敗して瘴気の元になってしまう。瘴気が濃くなると魔物が増えるんだ。それに、売れる部分は売る。使える部分は使う。食える部分は食う。ある意味エコか? 単純作業だから、余計な事ばっか考えてしまう。
「討伐完了だ! 旗を挙げろー!」
――おおー!!
うちの領地では、今回の様な討伐を完了すると邸の屋根の天辺にうちの家の紋章が入った旗を挙げる。それで、領民達に知らせているんだ。これがまた、旗を挙げるだけなのに、領主隊が盛り上がる。無事に守ったぜ! て、事なんだろうな。
「お嬢様、これで終わりです」
シーゲルは変わらずクールだ。
「ありがとう。これ、50頭以上あるわよね?」
「ありますね、倍近くでしょうか?」
「そうよね」
「凄いなぁ」
おや、王子だ。そばにいたのか。
「うちの領主隊は凄いのですよ」
「本当だね。僕は上から見ているだけでも足が竦んでしまったよ」
「殿下は、魔物を近くで見られた事がお有りですか?」
「ないよ、初めてだ」
「なら、当然ですよ。我々や領主隊は毎日鍛練しております。それに、魔物にも慣れていますから。これが、我々の領地なのです」
「ああ、そうなんだね」
シーゲルが王子と話している間に、俺はウルフを全部収納した。
「ん〜、シーゲル。全部で108頭ね」
「そんなに?」
「殿下、予想の範疇ですよ。お嬢様、ありがとうございました」
「うん」
「お嬢様、明日にでも、解体場へ出しておいて下さい」
「分かったわ」
さてと、戻るか……あれ? 咲と隆はどこ行った? いないじゃん。
2人はいないが、ここで2人と出会った頃の話をしておこうと思う。もちろん、前世の話だ。
俺がまだ前世、小学生だった頃だ。初めて咲と隆に出会った。ボロボロだった2人に驚いたんだ。
「おい、どうしたんだ? 怪我してんのか?」
俺は小学校からの帰り道で小さな家の前にいた2人を見つけた。
頬が腫れ上がり、服だって何日も着替えてないのだろう。ヨレヨレで汚れている。髪もボサボサだ。手足がガリガリで見ていられない。そんな2人が寄り添う様にして、家の前にしゃがみ込んでいた。
姉の咲が、弟の隆の手を握っていた。そして、隆も咲を庇う様にして俺に言った。
「うっせー。見てんじゃねーよ」
「顔腫れてるじゃん、殴られたのか?」
「……」
「なあ」
俺が近寄り手を出そうとした時だった。隆に手を払われた。そして、子供とは思えない目つきで睨まれたんだ。
「お前には関係ないだろう。さっさと行けよ」
「……」
俺は、言葉が出なかった。どうする事も出来ずにその場を逃げる様に立ち去った事を覚えている。だが、それから2人の事が気になって、学校の帰りは家の前を通る様になっていた。
そしたら、数日後。また、2人が家の前に居たんだ。
「なあ、お前ら学校は?」
「うっせー」
また、俺はまた何も出来ずにその場を去った。その日だ。まだ、うちが組の仕事として金貸しをしていた。組員が親父に報告をしているのを偶々耳にしたんだ。
「もう限界ですね」
「回収は無理か?」
「はい、何も残ってません。女房はとっくに逃げちまってますし、旦那の方も毎日飲んだくれてます」
「仕方ねーな」
「はい」
あの2人の家だと分かって、俺は黙っていられなかった。
「父さん! そこ子供がいるんだ!」
「大和、仕事の話に口出すんじゃない」
「けど、ボロボロなんだ! 顔も腫れて……きっと親に殴られてるんだよ!」
「大和、どうして知ってるんだ?」
親父に聞かれて、俺は学校帰りに見た事を話した。
「だが、大和。お前に何ができる」
「でも……」
「お前だって小学生だ。親の庇護下にいる」
「でも! 父さんなら助けられるんだろ!? 助けてよ!」
「俺が助けて何の得があるんだ? お前は何ができる?」
「なんもできない」
「だな。なら黙ってろ」
「いやだ!」
「大和」
「なんもできないけど……けど、助けてやって欲しいんだ!」
「大和、慈善事業じゃないんだ」
「分かってる!」
俺は断固として譲らなかった。何故か放っておけなかったんだ。
読んで頂きありがとうございます!
2話続きますが、咲と隆との出会いのお話になります。
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