202ーどうしてこうなった?
「ココ……」
「はい、ロディ兄さま」
「今日は帰ろうか」
「えぇ~」
「ロディシス、構わん」
「はい?」
「私の侍従として居ればよい」
「え、しかし……」
「構わん。その方が城の奥にまで入れるぞ」
あ、それは良いな。良い考えだ。ノワがまだ入っていない場所に行けるって事だ。
「本当に宜しいのですか?」
「ああ。構わない。全面的に協力する」
「ありがとうございます」
「いや、父上や王家を助ける為の事なのだ。協力するのは当然だ」
先に第1王子を解呪しておいてよかった。良い方向に進んだじゃん。てか、俺はどうしたら良いんだ?
「ココアリア嬢は……そうだな……」
どうしてこうなった? 2回目だ。
俺は今、第2王子ニコルクス殿下の執務室にいる。何故なら、第1王子の「ニコルクスの侍従見習いにでもなるか?」と、いう鶴の一声でこうなったんだ。
「ココアリア嬢も強いのか?」
と、いきなり第2王子に聞かれた。
「いえ、あたしは姉程ではありません」
「そうか! よかった。後で手合わせをしないか?」
「はい」
王子殿下に嫌だとは言えない。
隆は俺と一緒に第2王子のそばにいる。咲はメイドさん達と一緒に仕事をする事になった。なのに、この部屋にいる。シレッと第2王子にお茶を出している。
「この者達も強いのか?」
「はい、2人共強いですよ」
「そ、そうか」
おや、何か拘っているか? 王子殿下なんだから強くなくても良いじゃん。守られる側なんだからさ。
「その……フィルドラクスは今までどうしていた?」
「はい。来られた当初の頃は、毒やらなにやらで……」
「ど、毒だと!?」
「はい。深く毒に侵されておられましたし、精神干渉もありました」
「一体誰が!?」
「でも、解呪してからは祖父達と一緒に鍛練されていましたよ。今はもうお元気にされています」
「た、鍛練か?」
「はい。お祖父さま達と」
「前辺境伯の事なのか?」
「はい、そうです。ユリシスお祖父さまとディオシスお祖父さまです」
「お2人となのか……私より強くなっているのかも知れないな」
「殿下、無理にお強くなられなくても」
「ココアリア嬢は、エリアリア嬢の強さを知っているか?」
「はい。こちらに来る時にも、姉さまに助けられました」
「そうなのか?」
「はい。でも姉さまみたいに強くなられなくても、王子殿下なのですから」
「ココアリア嬢は優しいのだな。エリアリア嬢なんて……」
あ、やっぱ姉は第2王子をイジッているな。トラウマになったらどうすんだよ。
「殿下、姉の言うことは気になさらないでください」
「そ、そうか?」
「はい。殿下には殿下の良いところがあります」
「そうか! どんなところだ?」
え? そんなの会ってまだ2度目なのに知る訳ねーじゃん。
「えっとぉ……」
言葉が続かない……
「いや、良いんだ。無理にそう言ってくれなくてもな」
なんだよ、そんなに拘る必要ないって。マジでさ。
「殿下、あたしも強くありません。辺境伯家なので、鍛練はしますし多少人より魔法は使えますが、それでもあたしはいつもこの2人に守られています。それでも良いんです」
「そうか……?」
「はい。殿下がお出来になる事をされていれば良いと思います」
「有難う」
姉よ、どんだけイジッていたんだ。心が折れてないか? ちょっとやり過ぎだ。可哀想になってきたじゃないか。それとも本当に弱いのか? そんな事よりもだ。
「殿下、では殿下の従者見習いという事で動かせて頂きます」
「ああ。しかし、危険な事はしてはいけない。ココアリア嬢に、もしもの事があったら私は辺境伯に顔向けできない」
「はい。ありがとうございます」
俺は第2王子の部屋を出て、周辺を歩いてみた。ロディ兄は兄で第1王子の周辺を探っているだろう。
俺には探るなんて事は出来ないから、取り敢えず歩いて見ている。すれ違う貴族や働いている人達を見ているんだ。
「お嬢、どうッスか?」
「全滅だわね」
「全滅ッスか!?」
「そうよ、全滅よ。すれ違う人みんなだわ」
「どうするんッスか?」
「そうよね……ノワちゃん連れてきたらよかったわ」
「ああ、盲点ッスね」
なんで盲点なんだよ。全然盲点なんかじゃないだろうよ。
ノワはノワで別の場所を歩いている筈なんだ。だからなぁ……と思いながら庭に出た。
ここは城の1番奥だ。その中庭だ。直接王族に接する人や、王城で働く重鎮達、その従者や部下等だけが入る事ができる。かなり中枢に入った場所なんだ。
下働きの者などは入る事が出来ない場所だ。
貴族でも役職を持っているか、呼び出された者位しか入れないだろう。
そんな場所だ。まあ、当然と言えばそうなんだが……会いたくない奴が前から歩いてきた。
俺は素知らぬ顔をして脇に避け頭を下げる。このまま通り過ぎてほしい。と、祈りながら。
「あら? あなた見た事がないわね」
ああ、通り過ぎてくれなかった。俺が会いたくなかった相手、第1王女のマールミーア・ヴェルムナンドだ。
「あなた、誰の従者なの? 顔を上げなさい」
ああ、バレないように……と思いながら顔を上げようとした。
「第2王子殿下の、従者見習いでございます。本日から登城しております」
隆だった。第1王女の目についたのは俺ではなく、隆だったんだ。その派手な金髪が目に留まったんだろう。
良かったぜ。俺は、頭を下げたままで待つ。
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今日はこの後、ちびっ子転生者〜を投稿します。
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