199ー気持ちは若
「ココが作ってくれた下着や服、それに魔石がなかったら安心して潜入できなかっただろう。だから、ココは充分に役に立っているんだよ」
「ディオシスお祖父さま、それなら嬉しいです」
本当だよ。俺はまだちびっ子扱いだし、女だし。姉や兄みたいに即戦力になれない。でも、足手まといにはなりたくないんだ。だから、少しでも役に立っているなら嬉しい。
みんなを守る為に考えた物なのだから、余計に嬉しい。
「ココは良い子だ」
「え? ディオシスお祖父さま、急に何ですか?」
「皆を守ろうとしているんだろう?」
「そりゃそうです。でも、あたしはまだ弱いですから」
「アハハハ、ココが弱いのなら誰が強いんだ?」
「父さまとかお祖父さま達です」
「ああ、アレクシスか。それはそうだね。でも、ココも十分に強いよ」
「えぇ~、そんな事ないですぅ」
「アハハハ」
ディオシスじーちゃんと話をしている内に鍛練が終わった。おし、もう出ても良いかな?
と、思って父のところへ行こうとしたらディオシスじーちゃんに止められた。
「ココ、もう少し見ていなさい」
「はい」
何だ? 何かあるのか? そう思って俺は大人しく見ていた。
すると、さっき鍛練の最中に分かった精神干渉を受けているだろう団員達を父は呼び止めたんだ。他の団員達は其々、身体を休めていたり水分補給をしていたり。
呼び止めた団員達を先導して、父は鍛練場から出て皆から見えない死角になっている木陰へと連れて行った。
そこへフラフラ~っと、飛んでいったのがなんと奴だ。
そう、奴だよ。あの煩い小汚い奴だ。
「良いと言うまで目を瞑れぃッ!」
と、父が言っている。何が何だか分からず、不思議そうな表情を見せながらも言われたままに目を瞑る団員達。
そして奴の出番だ。ああ、こんな事をしていたのか。
「どうだい? 役に立っているだろう?」
「ディオシスお祖父さま、言ってくださればあたしがやります」
「まあ、良いじゃないか」
ちょっと勿体ぶってしまったけど、そこにいたのは霧島だ。一応、見られないように隠れていたんだ。なんせ、見た目はとかげでもドラゴンだからな。
そして、父が連れて行った団員達、鍛錬をしていた者の半数位だろうか。その団員達を一気に解呪したんだ。
霧島の身体がペカーッとひかると、団員達の背中側から黒いモヤモヤが出てきた。
メイドさんが追いかけたいと言っていた、あのモヤモヤだよ。
霧島は、それを纏めて一息で吸い込んだんだ。マジ、反則ものだ。
あいつ何なんだよ。クリスティー先生がまた制限を解除したとか話していたけど、超レベルアップしてないか?
そして、ゴックンと飲み込んだ。げげ、ゲップしてるぞ。大丈夫なのかよ。
「アハハハ」
「お祖父さま、笑っていても良いんですか?」
「良いだろう? だってドラゴンは状態異常には掛からないってキリシマが話していたよ」
「そうですけど。何か気分的に近寄りたくないですね」
と、言ったら飛んできた。ピューッと奴が。
「ココー! お前本当に酷いぞ!」
「アハハハ、キリシマありがとう」
「おうよ! 楽勝だぜ! ケプッ」
うわ、きったねー!
「ココー!」
「アハハハ!」
「ココとキリシマは本当に仲が良いね」
「当然だぜ! 俺が加護を授けてんだからなッ!」
「えぇ~」
「ココー!」
アハハハ、この掛け合いももうプロの域だね。
「おうよ」
でも、霧島がいてくれて助かったよ。
「だろう? 俺様は頼りになるドラゴンだからなッ!」
「でもキリシマ、それ飲み込まなければ元に戻るらしいわよ」
「だろうな」
「後を付けたいのよ」
「ココ、またそんな危険な事を言って」
「でも、お祖父さま。後を付けるのが1番手っ取り早くないですか?」
「そうかも知れないが、ロディに止められなかったかい?」
「止められました。実はメイドさんと一緒に、追いかけようかと話していたら叱られました」
「だろう? 危険だからね。相手が何なのかまだ全く分かっていないのだから」
「そうですけど……」
黒いモヤモヤを追いかけたからといって、確実に精神干渉をしてきた奴まで辿り着けるとは思っていないんだよ。多分、俺達が簡単には入られない場所にいるだろうし。
だけど、途中まででも分かれば手掛かりにならないか? 範囲を絞り込みたいんだ。俺はそう思うんだ。
「なるほど。ココはそう考えていたのか」
「はい、お祖父さま」
「俺様が一緒に追いかけてやるよ」
「キリシマ、目立つじゃない」
「だからココ。前みたいにさ、バッグか何かに入れてくれたらいいじゃん」
「あ、そうね」
「おうよ」
「いや、ココとキリシマだけなんて危険すぎる」
「お祖父さま、リュウとサキもです。あとメイドさんも」
「大丈夫ッス。危ないと思ったら止めます」
「はいですぅ」
「帰って、皆と相談してからだね」
それは仕方ないな。だけど、折角ノワが解呪して歩いてくれていて、手掛かりになるかも知れないモヤモヤがあるんだ。それを使わない手はないぞ。
「ココはこんな時イケイケだからなッ」
「キリシマ、それ何よ」
「お前、突っ走るから危なっかしいって言われてんだよ」
え? そうなのか?
「キリシマ、よく分かっているじゃないか」
「あたぼうよッ」
マジか!? 俺は隆と咲の顔を見た。2人共、めっちゃしっかりと頷いていたよ。ああ、マジかよ。
「お嬢、気持ちは若ッスから」
「そうですぅ」
なるほどね……じゃねーよ!
読んで頂きありがとうございます。
霧島が最近活躍している様な…
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