184ー下着
「これでもう大丈夫だぜ」
「キリシマ、あんた食べたわよね?」
「おう、超不味かったけどな」
「え、大丈夫なの?」
俺は言いながら霧島から一歩距離をとる。だって、何か気分的に嫌じゃん?
「ココ、お前本当にヒデーな! 凄い! て感動するとこだろうよ!」
「え、そう?」
「キリシマ、それは無理だ。僕でも引いたよ」
「兄妹揃ってなんだよ! 俺はドラゴンなんだぞ、呪いなんて毒にも薬にもならねーんだよ!」
そういえば、ドラゴンは状態異常にならないって前に話していたな。流石、ドラゴンだ。
「だろうよ!」
霧島は自慢気に胸を張る。スペックだけは高いんだよな。
「スペックだけ言うなー!」
アハハハ、可愛い奴だ。さて、王子だ。
「これは……」
「どうです? 今、見えましたか?」
「ああ、私にも見えたし聞こえたぞ。私は本当に呪いを受けていたのか?」
「ココ」
「はい。呪いと同時に精神干渉を受けておられました。なかなか深い精神干渉でしたので3度の解呪が必要でした。念のため、浄化もしてますのでもう大丈夫です。身体はお辛くありませんか?」
「ああ、このように気持ちや身体が軽く感じるのは何年ぶりだろう。いつの頃からか、頭がスッキリしなかったんだ」
良かった。大成功だぜ。何だったらヒールも必要かと思っていたんだが大丈夫そうだ。
「ココ、周りも見てみな」
「キリシマ?」
「離れていても見えるだろうよ」
「分かったわ」
霧島に言われて、王子のお付きの者達を鑑定眼で見る。ああ、片っ端からやられているぞ。こりゃ、もしかしたら城の中全員なのかも知れない。
「兄さま、どうしましょう?」
「全員か?」
「はい。解呪はできますが、敵にバレちゃいませんか?」
「ロディシス、何だ?」
「はい、殿下のお付きの者全員に解呪が必要です。しかし、全員解呪してしまっては敵に知られてしまいます。敵は城の奥深くまで入り込んでいるようです」
「そうか……分かった。私の側近と侍従のみにしよう。それなら話しを合わせられる。解呪を頼めるか?」
第1王子の決断で王子の側近と侍従の2人が呼ばれた。俺は鑑定眼でじっと見る。
ああ、この2人も何度か必要なのかも知れない。真っ黒じゃねーか。精神干渉も深そうだ。
これは、多分クリスティー先生が話していた様に、毎日少しずつ干渉していったのだろう。
そして、2人を解呪した。目一杯魔力を込めて『ディスエンチャント』と詠唱しても2人同時だとやはり2回の解呪が必要だった。
「ココ、浄化もしとけよ」
「分かった。ピュリフィケーション」
2人がきょとんとしている。何が起こったのか分からないのだろう。呪いと精神干渉を掛けられている事自体に気付いていなかったのだから当然だ。
「よいか、この事は内密にだ。敵を探らなければならない。王家を何だと思っているのだ」
と、王子は憤慨している。
俺が勝手に思っているだけなんだが、呪いだけじゃなく、特に精神干渉というのは相手に付け込まれる気持ちが少しでもあると掛かりやすいのではないかと思うんだ。
だから、王子や側近達に何か付け込まれる気持ちがあったのではないかと思うんだ。例えばさ、早く譲位しろよ。とかだよ。
「殿下、失礼を言いますが許して頂けますか?」
「なんだ、セーデルマン侯爵。何でも言ってくれ」
「恐れながら、殿下のお心に少しでも早く王位に付きたい等といったお気持ちはございませんでしたか? 呪いや精神干渉というものは、そんな人間の欲望に敏感です。付け込まれるのです」
「それは……全くないと言えば嘘になる。父上ももう良いお歳だ。それに何もかもご自分が把握していないと気が済まないというあの御気性だ。それによって、なかなか進まない事もあるのだ。迅速に対応して欲しい案件もある」
「それは理解できますぞ。しかし、それと王位の継承を願う気持ちとはまた別問題です」
「だが、誓ってやましい事はないぞ!」
「はい、それも理解しております。殿下はそのような事をされるお方ではないと信じております」
と、祖父が話す。俺と同じ考えを持っていてくれたんだ。
確かにだから何かをした訳ではないのだろう。ふとした時にチラッと頭をよぎる程度のものなのだろう。
だが、そこに付け込まれたんだ。そして多分、城の者殆どに解呪が必要だろう。潜入しているうちのメイドさん達、大丈夫かなぁ。心配だ。
と、ふとバラが咲いている方を見ると……なんだよ! こんなところにも潜入してんのかよ! と、びっくりした。
うちのメイドさんが周りに分からない様にこっちに向かって小さく手を振っていたんだ。
「びっくりです」
「アハハハ。そうだろう」
「兄さまは気付いていたのですか?」
「いや、僕も知らなかったよ。彼女達は逞しいから大丈夫だよ。ココが作った下着も付けているからね」
そうか。なら大抵の事は大丈夫だ。
「ロディシス、下着とは何の事だ?」
あ、聞こえてしまったか。ロディ兄が、状態異常無効の効果がある下着の話をした。
「私も欲しい」
ほら、そうなるよな。先ずは第1王子を味方につけてってとこか。
「ココ、持っているかい?」
「はい、ロディ兄さま。余分に沢山ありますよ」
ミリーさんに、何かあったらと余分に沢山持たされていたんだ。ミリーさん、グッジョブだよ。
「では、殿下。ココアリアが持っている様なのでお渡ししますよ」
「セーデルマン侯爵、手間を取らせてすまないな」
「どこに出しましょう? ここに出しても良いのですか?」
「え?」
「はい?」
「ククク……」
え、俺何か変な事を言ったか? 言ってないよな?
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