178ー作戦会議
母方の祖父、グスタフじーちゃんが言っていた通り、夕飯前には父とロディ兄が帰ってきた。
どこに行っていたのか詳しい事は知らないが、情報収集をしていた事は間違いない。
「皆、談話室に集合だ」
グスタフじーちゃんの一声で全員が談話室に集まった。
この家の談話室、隣の部屋との間の間仕切りを取り除けるようになっていて二間続きの広い部屋に今はなっている。何故かと言うと、俺達だけでなく領主隊やじーちゃん達の兵、それに侍従にメイドさん達全員が一堂に会するからだ。
全員に同じ情報を共有し統一するという意味があるらしい。
メイドさん達は、皆にお茶を出している。それが終わるとメイドさん達も席に着いた。
「皆、揃っているな」
「はい、お祖父様ッ」
なんと、姉やロディ兄の婚約者のアンジェリカ嬢、そしてバルト兄の婚約者キャリーナ嬢も参加している。本当に全員集合だ。
そんな場で王子が立ち上がった。
「皆、此度は世話になる。私も出来る限りの事はするつもりだ。どうか、力を貸してほしい」
短い簡単な言葉だったが、王子の決意が感じられた。王都での目標は……
王は無事なのか?
王子を迫害し幽閉した首謀者は誰なのか?
他の王子や王女は無事なのか?
今回の一連の件で、裏で動いているのは一体誰なのか?
それらを明確にする事だ。これは、最低限だ。正さなければという所は正す。それが目標だ。
「私は先ず、陛下がご無事なのかどうかを探って参りました」
と、立ち上がったのは母の兄、イーヴェルだ。
朝からずっと姿が見えなかった。仕事だろうと思っていたのだが、持ち得る色んな人材をフル活用し王の所在を調べていたらしい。
「以前にも、アレクシスに依頼され調べた事があるのですが、あの時はまったく手掛かりが掴めませんでした。今回、また別方面から探りを入れたところ、どうやらお命は無事だろうという事が分かりました」
「父上はご無事なのか?」
「はい、殿下。今のところはです」
イーヴェル伯父さんが言ったように『今のところは』だ。何故かというと、どうやら監禁されているらしい。
「陛下の自室にです。しかし、動きがまったくないのですよ」
「動きがないとは?」
人間、生活をしていれば動きがある。いくら自室にこもろうとしても、普通ならまったく部屋から出ない等という事はあり得ないからだ。普通に生活をしていればの話だ。
自分で引きこもろうとしていたり、身体が動かせなかったりする状況なら話は別だ。
「あのなんでもご自分で確認をしないと気の済まない性格の陛下には考えられない事です。ですので、何らかの原因で動けない状態なのではと考えるのが妥当ではないかと思われます」
王子の父親である王は、例えば何かの政策を始めるとしたら、必ず一通りの書類に目を通し尚且つ実際の担当者に会って話を聞く人なのだそうだ。
部下を信じていないのではなく、そんな性格なのだそうだ。
確認せずには居られないのだろう。そして、朗らかで気さくによく喋る人なのだそうだ。
そんな性格の人が何年も表舞台に出て来ないなど、不自然極まりない。
「自室に居られるのなら、お会いできないのだろうか」
「殿下、今は殿下も狙われておるのを忘れてはいけませんぞ」
ユリシスじーちゃんが言った。実際、旅の途中もだが、王都に入ってからというものユリシスじーちゃんか父が必ず側についている。
そして、俺にもだ。ディオシスじーちゃんが必ず側にいる。俺はいいだろう? と、思わなくもないんだけど、じーちゃん達の考えに任せている。
「では、うちから潜入捜査班を出しましょう」
ロディ兄、うちにそんな班があったのか?
と、思っているとメイドさん達が立ち上がった。マジか……!?
なんでも仕込んでいるんだな。万能なメイドさん達だ。
「早速明日から潜入させましょう。手配は私がしますよ」
「伯父様、お願いします。今日少し探ってみたのですが……」
と、ロディ兄とイーヴェル伯父さんがどんどん話しを進めていく。
俺はさ、確かにまだ子供だけどさ。全然知らなかったよ。うちのメイドさん達がそんな事ができるなんてさ。可愛い可愛いメイドさん達なのに。
「ココはまだ子供だからね」
「ディオシスお祖父さま、あたしも知りませんでしたわ」
「エリアもそうだったかい?」
「はい。みんな戦えるのは知ってましたけど、諜報活動までするなんて知りませんでした」
え、諜報だと?
「ココちゃん、当たり前じゃない。でないと何の為に潜入するのか分からないわ」
マジっすか!? それって立派なスパイじゃん。
「あたしも覚えたいわ。一緒に潜入しようかしら」
「エリアリア、学園があるのを忘れているわよ」
「あ、そうだったわ」
どうやら、よく似た性格だと思っていたが、姉のエリアリアを制御する役目をロディ兄の婚約者アンジェリカ嬢が担ってくれているらしい。世話をかけちゃうね。
「ココちゃん、そんな事ないのよ。お互い様なのよ」
「だってアンジェだって突っ走る時があるもの」
ああ、やっぱよく似ているんだ。でも俺は姉もアンジェ嬢も好きだよ。可愛いじゃん。
「お嬢さまぁ、おっさんの目になってますよぅ」
うっせーよ。
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