171ー助っ人登場
「ココ! 大丈夫!?」
「怪我はありませんか!?」
この声は……
「姉さま! アンジェさま!」
その馬に乗っていたのは、俺の姉エリアリア・インペラートとロディ兄の婚約者アンジェリカ・カルロッテだった。
姉の投げた剣が敵の胸を貫いたんだ。よく剣を投げたよ。びっくりだ。
「此処は任せなさい!」
「姉さま!」
本当に驚いた。王都にいる筈の姉達が駆けつけてくれたんだ。姉達だけでない。何人も兵を一緒に連れて来てくれた。流石だよ。騎士団の入団試験に合格するだろうと言われているだけの事はある。ロディ兄の婚約者も張り切って応戦している。
これが、切っ掛けとなって敵はバラバラと逃げだした。姉が投げた剣で貫かれた奴が頭だったのだろう。頭が討たれ、あとはバラバラに逃げていく。
「ココォッ! 大丈夫かぁッ!?」
大きな声で叫びながら父とじーちゃん達が戻ってきた。
「父さま、姉さまが助けてくださいました」
「なんとッ! エリアリアかぁッ!?」
「父様、間に合ってよかったです」
「辺境伯様、ご無沙汰しております」
「君まで……危険なのに」
「ロディ様、放ってはおけませんわ」
「2人共、よくやったぞッ!」
父が姉達2人をガシッと抱き寄せた。ついでにバシバシと叩いている。本当、熱い人だ。
「辺境伯、無事でよかった」
「殿下こそご無事で!」
「僕はまた皆に守ってもらったよ」
「殿下、ご紹介しますぞ。長女のエリアリアと、ロディシスの婚約者です」
「お初にお目に掛かります。エリアリア・インペラートです。ご無事で何よりですわ」
「ロディ様の婚約者のアンジェリカ・カルロッテと申します。お目に掛かれて光栄ですわ」
2人がこんな場所なのに、ドレスも着てもいないのに上着の裾を摘まんでカーテシーをした。
「ありがとう、助かったよ。こんな華奢な令嬢なのに強いんだね」
王子が姉の手を取った。おや? おやおやぁ?
「若……」
「なんだよ」
「おっさんみたいな顔になってるッス」
「ヒデーな」
「皆、よくやった! 怪我人はいるか!?」
そうだ、怪我をした者は俺が治すぞ。
兵達がチラホラとやってきた。はいはい、順に治すからね。しかし、皆大した怪我もなくて良かったよ。
「ココ、ねーちゃんか?」
キリシマがフワフワと肩に乗ってきた。ノワも俺の足元で尻尾を振りながらお座りしている。可愛いなぁ。
「そうよ、キリシマは初めてだったわね」
「おう。綺麗なねーちゃんじゃんか」
「なんだよ」
「いや、ココは可愛い系だからな」
何を言ってんだ。呑気なトカゲさんだよ。
「また、ココは!」
「アハハハ。はい、ヒール。もう大丈夫よ」
「お嬢さま、有難うございます」
俺は兵達の傷を治しながら霧島と馬鹿な事を言っていた。そこに姉がやってきた。
「ねえ、ココちゃん」
「はい、姉さま。怪我はないですか?」
「ある訳ないじゃない。その小さいのと黒いのはなあに?」
「あ……トカゲさんです」
「ココォー!」
「アハハハ! 嘘です。姉さま、これでもエンシェントドラゴンなんですよ。黒いのはブラックフェンリルです」
と、俺はちゃんと紹介したんだぜ。そしたら、姉が俺の両肩を掴んで言った。このパターン何度目だ?
「ココちゃん、そんな誰にでも分かる嘘をついちゃいけません」
「え?」
「だって、どう見たってトカゲじゃない」
「なんだって!? 俺様はなぁ、これでも歴としたエンシェントドラゴンなんだよ!」
「アン!」
「やだ、可愛いぃ~」
「コラコラァ! 俺の話を聞いてんのか!?」
「ねえ、ココちゃん。この子お名前は?」
「ノワです。ブラックフェンリルのノワです。で、ドラゴンがキリシマです」
「ノワちゃんでしゅか~」
あぁ、姉はもう人の話を聞いてねー。ノワに夢中だ。抱っこしてモフっている。ノワは可愛いからな、仕方ない。
「ココ、言ってやってくれよ」
「いいじゃない。もう人の話は聞いてないわよ」
「さすが、ココのねーちゃんだな」
「どういう意味よ」
さ、後片付けしようぜ。もう怪我人はいないか~?
「ココ様、度々申し訳ございません」
「ああ、アルベルトさん。大丈夫ですか?」
「はい、面目もありません」
「そんな事ないですよ。ヒール。はい、大丈夫です」
「有難うございます」
「ご無事でよかったです」
「ええ、本当に。まさかこんな強硬手段に出てくるとは」
「驚きましたね」
こんな大事にしてしまって、しかも姉達が連れて来た王都の兵達に捕まっている者もいる。どうすんだ? 王子を狙ったってバレバレだぞ。
「我々が殿下をお連れする事は秘密なんだよ。だけど、あちらに早馬を出しておいて正解だった。まさか、エリアリアとアンジェ嬢までやって来るとは思わなかったけどね」
と、ロディ兄が言っていた。姉も大概だけど、ロディ兄の婚約者のアンジェリカ嬢もお転婆さんだ。帯剣して颯爽と馬に乗ってやってきた。おまけに強い。自分より大きな輩をバッサリと討ち取っていた。姉やロディ兄と一緒に領地を守りますと公言しているだけの事はある。
王都の母方の家で、偶々食事を2人揃ってご馳走になっていたのだそうだ。あちらには2人共世話になっているらしい。そこに、ロディ兄からの早馬が到着したんだそうだ。
その文の内容を聞いて、これは大変だ。助っ人に行かなくちゃと馬を走らせて来てくれたのだそうだ。しかも、王都の兵達を連れてだ。さすがだよ。
読んで頂きありがとうございます。
台風です。大丈夫かなぁ。皆様もお気をつけ下さい。
宜しければ、評価やブクマをして頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします。




