163ー薬草
「きっとここの土が合うのだろうな。丁度良い湿度なんじゃないか? 沼地の近くだけど風遠しも良いし」
「なるほどッス」
「ここで栽培できたら村の良い収入源になるぞ」
「本当ですぅ」
俺は根っこから数株採るとマジックバッグへと収納した。ふと周りの木を何気なく見たんだ。
「リュウ、この木で編み針作れない?」
「編み針ッスか?」
隆が木を触り枝をスパッと切ってみる。
「これ、いいッスね。竹に似た感じッス。作れると思いますよ。作るッスか?」
「ええ、道中暇だし」
「そうですねぇ」
「村に戻ろう」
「はいッス」
もう少し奥にも行ってみたいが、3人だけで行くのは危険だ。ディオシスじーちゃんに話してからにしよう。
隆が枝を2〜3本切っている。滑りが悪いと編みにくいからなぁ。どうだろうな?
そんな事をしていたから、皆よりは遅くなって村に着いた。
「ココ、遅いから少し心配したよ」
「ロディ兄さま、大丈夫です。とっても良い物を見つけました」
「良い物かい?」
「はい、父さまはどこですか?」
と、見渡すと村ではもうバーベキューの用意が着々と進んでいた。
「うわ、もう食べる準備ですね」
「アハハハ、そりゃそうだよ」
「ですよね」
その中心に父はいた。相変わらず大きな声で話している。
「大量だッ! しばらく食う事に困らないぞッ!」
はいはい、その通りだ。それともう1つ朗報だ。
「父さま!」
「おうッ、ココ。遅かったなッ!」
「父さま、良い物を見つけました。見て下さい」
俺は見つけた薬草をマジックバッグから出す。ズズイと父の目の前に両手で出した。
「何だ? 草か?」
なんだよー! 父は知らないのかよー!
「ココ、それは薬草だよね?」
やっぱロディ兄は知っていた。だって、領地で栽培しようと試行錯誤していたからな。
「はい、兄さま。あの時の薬草です。この近くに群生していました」
「それは凄い」
「でしょう?」
「ああ、大発見だよ」
ふふふん。どうだよ、スゴイんだぜ。が、父はまだ首を捻っている。
「ロディ、本当にこれが薬草なのか?」
「はい、父上。以前、領地で栽培しようとしていたのですが、気候や土が合わなくて断念したのですよ。ポーションなら必ず使います。需要の多い薬草ですよ」
「おおう、それは良いではないかッ!」
だろう? これだけでも食べていけるかもだよ。それほど需要の多い薬草なんだ。
「ココ、それは村人でも採取に行ける場所なのか?」
「はい、父さま。沼のすぐ向こうです」
「ほう、何故に気がつかなかった?」
「辺境伯様、我々庶民は薬草がどの様なものなのか知りませんからな」
村長らしき老人が言った。そうだろうな。これが薬草だよと教えられないと分からないだろう。
俺は手にした薬草を見せながら説明する。
「ここに小さな蕾が沢山あるのが分かりますか? 綺麗な白い花が咲くのです。沢山生えてましたから、きっと白い絨毯の様になりますよ。その花だけでなく、茎や葉も使います。全部売れますよ。但し、採取する時には根っこを残しておく事です。そしたら、また生えてきます」
「おう、そうなのか?」
「はい、父さま」
「それは良いものを見つけたなッ!」
父が俺の頭をガシガシと撫でる。でっかい手だ。じーちゃんの様にゴツゴツとしたでっかい手だ。
その手で領民だけでなくこんな村の人達まで守っているんだ。
父は一体どれだけのものを抱えているのだろう? 俺には想像もつかいないや。
「ココも食べるんだぞッ! 沢山あるからなッ!」
「はい、父さま」
俺はこの父の子で良かった。同じ貴族でも王都で大人しくしているなんて絶対に無理だよ。
それに、尊敬できる父だ。ちょっと声が大きいけどな。
「ココ、後でマジックバッグを1つくれるかい?」
「はい、お祖父さま。置いていくのですね?」
「ハハハ、よく分かるようになったね」
と、ディオシスじーちゃんも大きなゴツゴツとした手で俺の頭を撫でる。
良いなぁ、俺本当に何で男に生まれなかったんだろう。悔やまれるね。
「若、仕方ねーッス」
「リュウ、分かってんのか?」
「まあ、男じゃないッスからね」
「そうなんだよ。勿体ねーわ」
「ブハハハ、勿体ないッスか?」
「そりゃそうだろう。男だったらブイブイいくのにさ」
「じゃあ、令嬢位でちょうど良いッス」
「ヒデーな」
「アハハハ」
その日は村に泊まった。と言っても、宿屋などはない。野営と同じなんだけど。
でも、夕飯は平和だった。みんなよく食べて、よく笑った。良い夕飯だったよ。
次の日、俺達はまた次の街へと向かって出発だ。
「また、お世話になってしまいましたのぉ」
「村長、気にするでないッ! またなッ! 皆も元気でいるのだぞッ!」
「はい、辺境伯さま。有難うございます」
村人達が見送りに出てきた。村人全員だ。みんな良い笑顔だよ。子供達は手を振ってくれる。
さあ、俺も頑張るぞ!
と、村を出発したもののだ。また、平原だよ。相変わらずの景色だ。ああ、直ぐに飽きちゃうよね~。
前を行くメイドさん達が乗った馬車は、ウフフ、キャハハと楽しそうだ。やっぱ、俺もあっちに乗ろうかなぁ。
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