162ーいいもの見っけ
「この先の沼地に角有りのオオトカゲがいますッ!」
「なんだとぉ!?」
ユリシスじーちゃんは直ぐに取って返す。元気に木々の間を力強く走って行く。
俺はオオトカゲを討伐した事がない。魔物討伐の経験が少ないからな。
「ディオシスお祖父さま」
「ああ、普通は角がないはずなんだけどね。何か異変でもあったのか?」
「角有りと言う事は魔物ですよね」
「そうなるね。だが、オオトカゲと言ってもそう強い部類には入らない。ちょっと外皮が堅いんだけど、村人でも2人以上で討伐すれば平気だろう」
「でもそれは、角がない場合ですよね?」
「そうだね」
大変だ。俺は思わず林の奥へと走って行った。俺なんかが行く必要はないだろうけど、それでもじっと待っている事なんてできなかったんだ。
「若ッ、ユリシス様達なら大丈夫ッス」
「そうじゃない、そうじゃないんだ」
「若さまぁ?」
「熊とかオオトカゲとか角兎だってそうだ。村人の生活を脅かす事になるだろう? そんなのどうしてこんなに出てくるんだよ」
「そうッスね」
「若さまぁ、獣同士が争って負けた方を食べますぅ。角有りを食べますぅ。それを繰り返していくと途中で魔物に変化してしまう獣がいるんですぅ」
「そうなのか?」
「はいぃ。今回は偶々でしょうけどぉ、角有りが多い事は確かですぅ」
「そうか」
咲の話しを聞きながら、俺はユリシスじーちゃんの元へと急ぐ。
俺はそんな事も知らなかった。本当に勉強不足、経験不足だ。
「ココ、邪魔をしたら駄目だよ」
「ディオシスお祖父さま、邪魔なんてしませんッ」
「アハハハ」
手を出すなと言われているんだ。それだけ、俺は弱いって事かよ。悔しいなぁ。
「ココはまだ獣に対しても、魔物に対しても経験が少ないからね」
「分かってます、お祖父さま」
そうさ、俺は皆の中で1番経験が少ない。いくら鍛練していたって経験値を稼げるわけじゃない。圧倒的に経験が足らないんだ。
それでも、俺はじっとしていられない。
しばらく林の中を行くとじーちゃんの声が聞こえてきた。
「よぉしぃッ! 喉をねらえぇーッ!」
ユリシスじーちゃんが指示を出している。
ディオシスじーちゃんが話していた通り、オオトカゲは外皮が堅い。なので、先に尻尾を攻撃してオオトカゲが上を向いた瞬間に比較的外皮の柔らかい喉を狙うんだ。
これは、他の魔物に対してもよく使う手だ。
俺達が現場に着くと、もうオオトカゲは討伐されていた。沼から出てきて直ぐのところを討伐したのだろう。沼の直ぐ横にワニの様な大きなトカゲが横たわっていた。
外皮がゴツゴツとしていて、いかにも硬そうだ。大きな口を開けている。
「デカイッ」
「デカイッスね」
「うわぁ」
咲なんて引いているぞ。そのポーズはやめろ。両手をパーにして口の前にもっていっている。その手も表情もあざといんだよ。
「おうッ、ココ! 見にきたのかッ!?」
「ユリシスお祖父さま、あたしも参加したかったです」
「ワッハッハッハ! これしきアッと言う間だ。残念だったなッ」
本当、残念だよ。せめて、討伐しているところを見たかったぜ。
ああ、オオトカゲの喉がパックリと割れている。これが致命傷だな。
頭には立派な角が、なんと3本もあった。
隊員達がオオトカゲもマジックバッグへと収納している。
「ディオシスお祖父さま、オオトカゲも食べられるのですか?」
「もちろんだよ。それに外皮も売れるんだ。冒険者達の装備になるんだよ」
ほう~。捨てる部位がないという感じだろうか?
「ココ、マジックバッグを余分に持っていないかい?」
「お祖父さま、ありますよ」
ふふふ、俺は分かっちゃったぜ。ディオシスじーちゃんの考えがさ。
「若さまぁ、何ですかぁそのお顔はぁ」
うるせーよ。
「若、マジックバッグッスか?」
「そうそう。きっとこの村に残していくんだろう。中に今日討伐した獲物をどっさり入れてさ」
「そうッスよね」
「旦那様らしいですぅ」
だよね~。父ならそうするよな。まさかこんな事までしているとは思わなかった。自慢の父だよ。見直したぜ。
「ただ声が大きいだけかと思ってた」
「そんな筈ないッス」
「冗談だよ。分かってるって」
さあ、村に戻ろう。と、思って歩き出していたんだ。咲や隆と3人でのんびりとさ。
「ん……?」
おや? その時、俺の視界の隅に入った木々の間にチラッと見えた。
「あれ?」
「若、どうしたッスか?」
「ちょっと向こうへ行くぞ」
「え? 若さまぁ?」
俺は、気になった方へと少し戻る。足場が悪いな。木の幹がボコボコ出ていて歩きにくい。ここら辺は本当に立派な木が多い。街道から少し逸れただけなのに林になっているんだな。
そして、じーちゃん達がオオトカゲを討伐していた沼地を少し過ぎた場所だ。
「ほら、やっぱり」
「若、何ッスか?」
「リュウ、これ薬草だよ。しかもなかなか栽培できない種類だ」
「本当ですかぁ?」
「間違いないよ。領地でも栽培しようとしていたんだ。でも気候が合わなくて、その上領地の土だと水捌けが良すぎて育たなかったんだよ」
「そうなんですかぁ?」
そうだよ、母と残念だなぁ~って話していたんだ。領地の気候には合わなかったんだ。潮風も砂混じりの土も駄目だったんだ。
そこには、ポーション類には必要な薬草が群生していたんだ。
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