157ー街を守れ
霧島はバッグの中から軽く短い手を振っただけだ。
すると、どうだ。溢れている場所から近くを流れている小さな川にむかって溝ができた。そこを勢いよく排水が流れていく。おれは慌ててその排水にもクリーンだ。
「キリシマ、舐めてたわ」
「どうだよ、俺ってスゲーだろ?」
「そんなに魔力が戻っていたなんて」
「だからエルフに解除してもらっただろう」
「そうだったわ」
そうだ、エルフのクリスティー先生に何度もリミットブレイクして解除してもらっていた。忘れてたぞ。
「マジさぁ、ココちょっと俺には酷いぜ」
霧島が魔法で掘った道筋へと水が流れて行く。
その前にクリーンをかける。汚い水のまま川に流すとまた別の問題が起こるかも知れない。だから、川に合流するまでにクリーンだ。
「ディオシスお祖父さま、でも領主邸で流すのを止めてもらわないとキリがありません」
「大丈夫だ。そっちにはアレクシスと兄上が向かっている」
ああ、とうとう明かすのだろうな。
しかし、街の人達がみんな見に出てきている。領主隊がアースウォールで、壁を作っている辺りからみんな見ている。これは不味い。
「お祖父さま、ロディ兄さま」
「ああ、ココ。分かっている」
「不味いですね」
と、話しながらも俺はクリーンだ。もっと広範囲にできないか? 領主邸で流すのを止めてくれたら一気にクリーンするのだが。
「元で止めてやればいいんだ」
「キリシマ、元って?」
「その領主邸でだよ。邸の中で排水が溢れたら流石に焦るだろうよ」
確かにそうだが、無理矢理だな。それは無茶だ。
「最悪、そうするしかないだろう」
「お祖父さま」
「自業自得だ」
「ロディ兄さま」
そうなんだよな。元々自分達が溢れさせた排水なんだから。でも、できれば父とユリシスじーちゃんの説得に期待したい。
て、あの2人が穏便に説得できるのか?
「ココ、兄上も一緒だから大丈夫だろう」
バルト兄が一緒ならなんとかなるか?
と、色々考えているがずっとクリーンだ。少し排水が減ってきたか?
「話がついたみたいだね」
街に向かって勢いよく流れていた排水が緩やかになってきた。キリシマが掘ってくれた溝へと流れていく排水も少なくなってきた。もう下で溢れる事はないだろう。
これで一気にできるぞ。
「クリーン」
俺は広範囲にクリーンをかける。一気に排水だけでなく下水道もクリーンしたんだ。
「え、ロディ兄さま」
「あぁ、そうなるか」
「え? 意味が分かりません」
「ココ、下水道に棲みついていたんだろう」
俺が一気にクリーンしたものだから、下水道に棲みついていたスライムがピョンピョンと何匹も飛び出てきたんだ。
それはよくアニメに出てくるような綺麗な水色ではなく、濁った灰色をしているブヨブヨとした大きなスライムだ。
「げ、汚いじゃん。可愛くない……」
「ココ、スライムが可愛い訳ないだろう」
「これ、どうするんですか?」
「こうするに決まっている」
そう言ったディオシスじーちゃんが、大剣で薙ぎ払った。
ブヨブヨのスライムがスパッと切断された。
「おぉー」
「ココ、ピュリフィケーションだ」
「はい、お祖父さま」
俺は言われた通り、一息に詠唱した。
「ピュリフィケーション」
すると光に包まれたスライムが一瞬のうちに消えていった。
「おぉーッ!」
「スゲーッ!」
見学していた領民達から歓声があがる。
ロディ兄が合図を送ると、領主隊がアースウォールを解除した。すると、そこで見ていた街の人達が領主邸へと向かって行った。
「旦那達、すまねえ! ありがとうよ!」
「本当だよ、街を守ってくれてありがとう!」
わざわざこっちにそう言いに来てくれる人もいる。だが、大半は怒り心頭で領主邸へと向かって行く。
「ああ、やはりな」
「お祖父さま、不味いですよ」
「仕方ないさ」
「ですね。自分がした事だ。キリシマ、もう大丈夫そうだ。流れを戻せるかな?」
「おうよ、任せな」
また霧島がバッグの中から半分だけ顔を出し指を振った。すると、あら不思議。あっという間に、川まで作った溝が元通りになる。
「本当、舐めてたわ」
「ココ、マジひでーぞ」
「フフフ」
いい奴だ。ん? 足下がソワソワするぞ。
「アン……」
「ノワは可愛いわよ」
「アン」
ノワの尻尾だった。今回はノワの出番がなかったから少ししょげているんだな。可愛いぞ。
「若ッ」
「若さまぁ」
「おう、もう大丈夫みたいだ」
領主隊と一緒にアースウォールで下水を堰き止めていた咲と隆がやって来た。
さて、これからどうなるかだ。
「行ってみよう」
「え? お祖父さま、良いのですか?」
「だってココ、どうなるか知りたいだろう?」
「アハハハ、ディオシスお祖父さま。確かに」
「はい、知りたいです」
行こうぜ、行こうぜ。見物しに行こうぜ。
「ココ、何かあったら領民を守るんだよ」
「はい、兄さま」
自分の領地の民相手に無謀な事はしないだろうが、念の為だな。多分それを心配して行くのだろう。
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