151ーその設定は?
宿へと移動すると、もう王子達がくつろいでいた。
「疲れていませんか?」
「全然大丈夫だよ。街を歩いたのは初めてなんだ。とても楽しいんだ」
「そうですね」
「ココ嬢も楽しそうだ」
「はい。堅苦しくないですから」
「辺境伯は全然気さくな方だよ?」
「でも、外に出ているというだけで何か気分的に違いませんか?」
「そうだね。それはよく分かるよ」
王子だってずっと城にいたんだ。俺以上に外の世界を知らないで育ったのだろう。
俺はまだ領地の中だと邸から出た事がある。必ず、ロディ兄か誰かが一緒だが。それでも王子よりはずっと自由だっただろう。
もっともっと色んな世界を知って欲しい。俺も知りたい。
この世界に転生して辺境伯領しか知らないんだからな。おまけに女児だ。せめて男児だったらなぁと何度思った事だろう。
だからかな? 今はとっても楽しいぞぅ。
「アハハハ、ココ嬢も目がキラキラしているよ。楽しいんだね」
「旅の理由を考えたら楽しいなんて駄目なんですけど」
「そんなことはないさ。僕だって楽しいんだ。街はどんな風なのか。民はどんな生活をしているのか。この食べ物は何だろう。って、興味津々さ」
「分かります。知らない事を知るのは楽しいです」
「そうだね」
王子も気に病んでいなさそうで良かった。
クーデターの旗頭なんてとんでもない事に巻き込まれているのかも知れない。
でも、この旅は楽しい。良い転機になれば良いなと思う。
そして、王子がはっきりさせたい事。
王は健在なのか?
誰が王子を幽閉しろと命じていたのか?
何がどうなっているのか?
明確にしなければならない。
父やじーちゃん、兄達はどう思っているのだろう? 何か探りでもしているのだろうか?
「お嬢さまぁ、難しいお顔になってますよぅ。眉間に皺がよりますよぅ」
うっせーんだよ。
「大丈夫ですよぅ」
「サキ、何か知っているのか?」
「いいえぇ。でも、旦那様達なら大丈夫ですぅ」
「そうだな」
「はいぃ」
そうだった。不可能を可能にじゃなけど、父達に任せておけばきっと大丈夫だ。母の実家もついている。
「ココ、フィル様、疲れてませんか?」
ディオシスじーちゃんだ。じーちゃん達も普段よりずっとラフな格好をしている。俺達の護衛といった感じだ。ラフな分、体型がよく分かる。もうじーちゃんなのに、2人とも良い筋肉してるぜ。
「ありがとう、大丈夫だ」
「お祖父さま、大丈夫ですよ」
「そうか、よかった」
「お祖父さま達の設定は何なのですか?」
「設定かい?」
「はい。旅芸人にも商人にも見えません」
「そうだろうね。アハハハ」
ディオシスじーちゃんは優しい。ユリシスじーちゃんや父と違って声も無駄に大きくないし落ち着いている。
「私達はね、一行を護衛する冒険者の設定だよ。でないと剣を持っていたら不自然だろう?」
「確かにそうですね。じゃあ、アルベルトさんもそうなんですね」
「そうだよ。アルはどうやっても商人には見えなかったんだ」
どうやっても見えなかったって、もしかして色々試したのか?
「ミリー達も困っていたね」
「お祖父さま、そうなんですか?」
そりゃそうだろうな。ガタイが良すぎるよ。
「じゃあどうしてリュウはあれなんでしょう?」
「え? お嬢、あれって何っスか?」
「だってリュウだけ系統が違いすぎる」
「アハハハ。でもリュウはピッタリだろう? ミリーが一押しの吟遊詩人だ」
一押しなのかよ。だけど、似合っているぞぅ。
「あ、お嬢。今何か嫌な気がしたッス」
「気のせいよ」
なんだよ、こんな事には敏感なんだな。
「ココー!」
「アンアン!」
あ、また煩いのが来たぞ。
「キリシマ、どうしたのよ。ノワ、良い子ね~」
ノワをヒョイと抱き上げてモフる。
「俺は外に出られなかったんだぞ!」
そりゃあ当然だろう。霧島は自分が何なのか分かってんのか?
「キリシマ、それは無理よ」
「なんでだよッ! 俺だけ留守番なんて嫌じゃねーかッ!」
「だってキリシマはドラゴンだもの。みんなが恐れて驚くわ」
「そ、そうか?」
「そうよ。偉大なドラゴンのオーラは隠せないでしょう?」
「お、おう! そうか、俺様は偉大だからなッ!」
手を腰にやって胸を張っている。チョロい奴だ。チョロドラだ。
「ココォーッ!!」
「アハハハ!」
「こら、フィル。笑い事じゃねーぞ! ココはな、言ってる事と思っている事が違う時があるんだぞッ!」
「嫌だ、キリシマ。偉大なドラゴンなのに小さな事に拘るんじゃないわよ」
「えぇー」
「アン!『おれは街を歩いたぞ。メイドさんが一緒に連れて行ってくれたんだ』」
「そうなの? ノワ、良かったわね」
「アン!『うん、楽しかった』」
「なんだよなんだよ! 俺だけじゃん!」
本当に賑やかな奴だ。どうせ馬車で昼寝していたんだろう?
「ココ、だから俺には思っている事が分かるからな」
「だから、何度も言っているけど人の心を読むんじゃないわよ」
「ココは特別だ」
そんな特別いらねーよ。
「ココォッ!」
「アハハハ。ごめんごめん。でもキリシマ、本当に仕方ないわ。ドラゴンだって分からなくても魔物だと思われたら大変じゃない」
「キリシマ、そうだぞ。普通、とかげは喋らないんだからな」
「だからじーちゃん、俺はとかげじゃないってのッ!」
まあ、本当に霧島の場合は仕方ない。けどなぁ、ずっと留守番ってのもなぁ…… 可哀想じゃね?
「ココ、そうだろ? 俺って可哀そうだろ?」
「ん~、あたしのバッグにでも入る?」
俺が肩から掛けているバッグ。余裕で入れるんじゃないか?
「おうッ! それで外に出られるのか?」
「出られるけど、絶対に喋ったら駄目よ」
「おうッ。ココなら念話が使えるからな。楽勝だぜッ!」
「アン! 『おれも一緒に行くぞ』」
はいはい。みんな一緒に出掛けような。引率の先生になった気分だ。
読んで頂きありがとうございます。
今日は少し遅くなってしまいました。すみません。
ココちゃんは旅を楽しんでいます。その雰囲気が伝わればと思います。
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