15ー新じゃが揚げたて
「さあ、皆さん! 新じゃが揚げたてです! 沢山食べて下さい!」
料理人が一斉に、大皿にこんもりと盛ったジャガイモをテーブルへ置いていく。毎年毎年よくやるよ。お陰でうちの料理人が作るフライドポテトは揚げ加減が絶妙だ。最近では、ケチャップらしきものまで付いてくる。粗みじんに切ったトマトが少し残っていてこれもまた超美味い。
領主隊の隊員達やメイドさんも頑張った。皆良い笑顔でフライドポテトが運ばれてくるのを待っている。
「やったッ!」
「ココはもうフォークを持ってるよ。クリーンはしたかい?」
「はい、もちろんです」
「芋を揚げるの?」
「殿下、そうです。美味いですよ」
「初めて食べるよ」
「でしょうね! アハハハ!」
「兄さま、きましたよ!」
俺は徐にフォークで芋を突き刺し食べる。アツッ! あれだよ、くし形に切った厚みのあるフライドポテトだ。新じゃがの皮付きフライドポテト。外がカリッとしていて中がホックホクだ。超美味い。塩加減も丁度いい。
「ハフッ、美味しいー!」
「アハハハ。ココはもう、女の子なのに。殿下も食べて下さい。熱いから気をつけて下さいよ」
「うん。じゃあ、遠慮なくいただこう」
王子がフライドポテトをフォークに刺して口に入れた。熱いぞ。フライドポテトなのに、お上品だな。
「ハフッ、美味しい」
「でしょう? 沢山食べて下さい」
「ココが1番食べてるじゃないか」
「やだ、兄さま違います。1番食べてるのはサキです!」
「エヘッ!」
エヘッ! じゃないだろ。隣りでリュウもがっついて口いっぱいに頬張っているし。
「温かい料理はとても美味しい。ここに来て初めて知ったよ」
「え……」
「そりゃ、城ではこうはいきませんよ。王子殿下なのですから」
「そうだね。身分だけはね」
「殿下、まだまだですよ。もっと体力をつけないと」
「そうです、地獄の鍛練が待ってます!」
「地獄なのかい?」
「はい、地獄です。あたしは毎日何度も気絶しそうになってます」
「アハ、何度も?」
「はい、超キツイですから」
「僕も早く皆と一緒に鍛練したいよ」
「えぇー!? 殿下は物好きですね」
「そう?」
「はい、あたしは鍛練なんてやりたくないけどやります」
「やりたくないのに鍛練するの?」
「はい。守りたいものを守れなくて後悔するのは嫌ですから。父さまが、自分で自分を守れる様になりなさいと言ってました」
「そうか」
「殿下、この領地は豊かですが直ぐ近くに魔物が生息しています。だからですよ。だからこそ、鍛練します。団結力も必要なのです」
「そうか」
「ほら、食べて下さい! ハフッ」
「ココ、食べ過ぎると夕食が食べられなくなるよ」
「兄さま、その前に昼食です」
「アハハ、食べられるのかい?」
「もちろんです。食べます。これから少し鍛練がありますから」
「ココ、お腹いっぱい食べて鍛練したら気分が悪くなるよ」
「やだ、兄さま。美味しく食べているのに」
「ロディシス殿、僕も鍛練を見学してもいいかな?」
「もちろんです。殿下、僕の事はロディとお呼び下さい。殿なんて付ける必要はありませんよ」
「あたしはココです」
「僕はフィルだ。ロディ、ココ嬢、ありがとう」
眉を下げて泣きそうな顔をするんじゃないよ。ほら、食べな食べな。腹一杯食べて、しっかり身に付けるんだ。
身体が弱くなっていると、心も弱くなる。しっかり食べて動いて、ぐっすり眠るんだ。先ずは身体を作らないとな。まだまだ細いし、力も出ないだろう。ジャガイモを掘り起こすのにもあんなに時間が掛かっていたんだ。
親父が無理にでも、お連れして良かった。そうでないと、本当に命が危なかった。
毒だと母が話した時に、王子は然程驚かなかった。普通は驚くよな。まるで、覚悟をしていたかの様だ。
そういえば、あの毒を盛られていた件はどうなったんだろう?
母が実家を頼るとか言ってたけど。たしか、文を書いた筈なんだ。翌日、早馬が出たから。
そう言えば、王子の護衛を暫く見ないな。どうしたんだろう? 王子専属の護衛なのに、離れてもいいのか? ま、うちにいる間は大丈夫だけどな。
俺は、1人そんな事を考えていた。両親が抜かりなく、調べを進めているとも知らずにさ。
遅くなってしまいました!
今日も1話だけになります。
宜しくお願いします!