149ー入れるのか?
「ココ、何言ってんだ。普通に親子喧嘩だぜ。まだ可愛らしいもんだ。ワッハッハ!」
え……小さくされて力も制限されて、その上汚い卵みたいなところに閉じ込められていたんだぞ。
かなり酷くないか? まあ、霧島がそれだけの事をしたからなんだろうが。
だがその霧島の父ドラゴンは、なんと若い頃に母親と喧嘩してドラゴンブレスを放ったらしい。
「親父は街を1つ壊滅させたらしいぞ」
「え……マジ?」
「ああ、大マジだ。そん時に母親にこてんぱんにやっつけられて叱られたんだと。それからドラゴンブレスを使う時は、一度考えるようになったって言ってたぞ」
なんてこったい! エンシェントドラゴンの親子喧嘩は街が壊滅する規模らしい。しかも母ドラゴンとの喧嘩でだ。怖い怖い。
だから今回は霧島へのお仕置きなのか?
確かにドラゴンブレスを放ったり、こてんぱんにやっつけられたりするよりはマシなのか?
「親父はまだ優しい方だ」
「……そうなの」
言葉が出ないな。価値観が違い過ぎるというやつだ。
霧島とそんな話をしながらやっと次の街が見えてきた。
すると、馬車に乗ったメイドさん達が歌を歌い出した。
「ピクニックみたいね」
俺はまた、ディオシスじーちゃんの馬に乗せてもらっていた。
もちろん、男の子に変装している。父やじーちゃん達もちょっとだけ裕福そうな平民の格好をしている。
そうは見えないけどな。だってみんな帯剣してるし、ガタイは良いし。どっちかっていうと護衛の冒険者だ。
「次の街は、うちとは相反する領主が治めているんだ」
「お祖父さま、相反するですか?」
「そうだよ。だからといって、喧嘩したり仲が悪い訳ではないんだ。ただ、考え方と言うか思想が違うんだね」
ディオシスじーちゃんが話してくれた『相反する』領主。
うちは歴代が、貴族や領民も皆一緒に安心して生活できるようにがモットーらしい。
「安心して生活できる事がどれだけ有難い事なのか、あの辺境の地で育ったココなら少しは分かるだろう?」
もちろん分かる。いつ何時魔物に奪われるか分からないんだからな。安心して生活できるという事は大切だ。
「次の街の領主はね、先ず貴族である自分達が潤う生活をと考える人なんだ。そんな事を言えるのも、強い魔物が出ないからだね」
なるほど。
「でも、お祖父さま。いつも、貴族は民の為にあると、民あっての国だと教わりました」
「そうだね。その通りだ。民がいないと国とは言えないだろう? 実際に民達も税を納めているんだ。それによって国が動いている。そんな事も考えないのだろうね」
貴族だからといって偉い訳ではない。偶々、貴族に生まれただけだとじーちゃんは言う。
俺は、前世の平和な世界の経験もあるからか、貴族だ平民だと思う気持ちが薄い様に思う。
選挙の度に政治家が訴える。国民の為にと。それが完璧に為されているのかは知らないが、でもそれと同じなんだな。
「その事とメイドさん達が歌い出した事と、どう関係があるのですか?」
「それはね。ほら、変装しているだろう? メイド達は旅芸人の変装をしている。自分達は旅芸人だとアピールしているんだろうね。ココは馬車に戻って大人しくしていなさい」
と、ディオシスじーちゃんに下ろされちゃった。
でも、そういう事か。なるほどね。俺もあっちのメイドさん達の仲間に入れてくれないかなぁ。
メイドのお姉さん達、いつもは皆同じ黒のメイド服で髪を後ろで1つにまとめている。メイドだからそれが定番なのだろう。
でも、今は旅芸人だ。皆、長い髪をおろしてカラフルな衣装に身を包んでいる。化粧もいつもとは違うのか? 超可愛いんだよ。いつもより若くて色っぺー。
「みんな楽しんでますねぇ」
「て、サキだってそうじゃん」
そうなんだよ。咲だって変装している。踊り子の様なヘソ出しルックだ。ヒラヒラのロングスカートには、膝上まで深いスリットが入っている。
この世界でそれは大丈夫なのか?
超張り切ってるじゃん。俺に付いてる使用人って設定じゃなかったか? いつの間に設定変更したんだよ。その変装は必要か? て、話だ。
「ふふふぅ。だって1度こんな格好をしてみたかったんですぅ」
そうかよ、もう何も言わねーよ。
「お嬢、言っても無駄ッスよ。あれ、気に入ってんス」
「リュウ、分かってるさ」
「そうッスか」
「リュウだって気に入ってるだろ?」
「え、何スか? 俺、変ッスか?」
いや、変じゃないよ。変じゃないけどさ。
何故か隆は遊び人の様な、いや吟遊詩人みたいなラフな格好をしている。後ろの長い上着を着て、長い羽根のついた帽子まで被っている。
どうしてそれをチョイスした? 俺は未だにお前達姉弟が分からんぞ。隆だって俺に付いてる使用人の筈だぞ。
「ミリーさん達に適当にって頼んだらこうなったんスよ。なんでも俺は髪が派手だからと言われたッス」
「髪が派手だと吟遊詩人なの?」
「知らないッス」
あ、そう。もうなんでもいいよ。お前達姉弟は好きにすればいいよ。
そろそろ街に入る門だ。こんな集団、無事に通過できんのか? 前の街は、父と仲の良い領主だったから大丈夫だったんじゃないのか?
マジでさ、超怪しい集団じゃね? 絶対に止められるぜ。
「お嬢、今日は宿に泊まれますからベッドで眠れるッスよ。フカフカだったらいいッスね」
隆、今からベッドの心配かよ。俺はそんな事より無事に通過できるかが心配だよ。
「お嬢さまぁ、大丈夫ですよぅ」
本当かよ? なんて思っていたんだが、何も言われず無事に通過した。超スムーズだったよ。
門番の兵達にメイドさん達が愛想を振り撒いている。
じゃあね~なんて言いながら手を振っている。こら、門番。鼻の下を伸ばしてんじゃねーぞ。
「ありがとぉ〜!」
なんて言っている。甘いぜ。甘すぎるぞ。俺なら絶対に止めるね。チェックしまくるぞ。
読んで頂きありがとうございます!
旅芸人に扮したメイドさん達、大人しくしているのでしょうか?明日をお楽しみに。^_^
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