143ー市場
久しぶりにベッドでぐっすりと眠れた翌日、何やら騒がしくて目が覚めた。
「サキ……」
「お嬢さまぁ、目が覚めましたかぁ?」
「うん、どうしたの?」
「それが、昨日捕まえた盗賊団ですぅ」
咲の話によると、昨日捕まえたのは盗賊団の一部だったらしい。
兵が拷問してアジトを吐かせたんだそうだ。そこに、これから捕縛に向かうらしい。
「え、そんなに大きな盗賊団だったの?」
「みたいですねぇ。お嬢さまぁ、お着換えしてくださいぃ」
「分かったわ」
昨日と同じ様に少年の恰好をして食堂へと向かう。父達はどうしているんだろう?
「あ、ココ嬢」
「殿下、おはようございます」
「おはよう。大変な事になったね」
「みたいですね」
「殿下! ココ様! お気になさらず朝食をどうぞッ!」
伯爵夫人が仕切っている。喋る度に『!』が飛び交っている。朝から、テンション高いな。
「有難う」
「有難うございます」
「お嬢さまぁ、また来ますからぁ。勝手に動かないでくださいねぇ」
「サキ、何もしないわよ」
「お願いしますぅ」
「サキはよく分かっているね」
「気を回し過ぎです」
「そうかなぁ。ふふふ」
いや、本当に。俺は何もしないよ? 他所の領地なんだし、大人しくしているさ。
「殿下、おはようございます。ココ、おはよう」
食堂に入っていくとロディ兄とディオシスじーちゃんがいた。
「ロディ兄さま、ディオシスお祖父さま、おはようございます」
「騒がしいね」
「父さまはどうしているのですか?」
「張り切っているよ」
「やっぱり」
「本当にね、兄上もだよ」
「ああ、やっぱり」
「ふふふ」
王子がまた笑っている。やっぱりな。て、王子もきっと思っているんだぜ。
俺達はゆっくりと朝食を食べた。ここには何日泊まるんだろう? そう長くは泊まらない筈なんだが。俺は翌日には出発するものだと思っていた。
だって、父達の影武者がバレないうちに距離を稼ぐんだろ? なら何日もゆっくりしていられないよな?
「今日、早々には出るつもりだったんだけどね」
ほら、やっぱりそうだ。なのにどうした?
「父上が張り切ってしまってね」
ああ、それもやっぱりだ。父は放っておけないのだろう。
盗賊団なんて民の安全を考えたら壊滅させておきたい。
「ココ、街に出てみるかい?」
「ロディ兄さま、いいのですか?」
「僕達は討伐には出ないからね」
「兄さま、街を見てみたいです」
だって、俺は自分の家近辺しか知らないから。領地のほんの一部しか知らない。
他の街って興味がある。見てみたい!
「じゃあ、一緒に行こう」
「はいッ」
「僕は留守番しているよ」
「え、そうですか?」
「流石に僕まで行くのは駄目だろう」
「えぇッ、駄目ですか?」
「ココ……」
「だってロディ兄さま。誰も殿下のお顔を知りませんよ」
「そうだったね、殿下さえ宜しければどうです? ご一緒に」
「いいのかい?」
「ココが言うように殿下のお顔は誰も知らないでしょうし。大丈夫でしょう。但し絶対に側を離れないでください」
「お守りしますッ」
「ハハハ。ココ嬢、有難う」
さあ、行こうぜ。行こうぜ。この世界で初めての街だよ。
どんな物が売られているのかなぁ? 楽しみだよなぁ。
「お嬢さまぁ、もしかして食い気ですかぁ?」
「なんでよ。違うわよ」
「ふふふぅ」
まあでも街にどんな食べ物があるのかは興味があるよな。
「ふふふぅ」
「いいじゃない、サキだって楽しみでしょう?」
「はいぃ」
ニッコリと良い笑顔で笑った。いつものあざとらしさがないぞ。どうした?
「ちょっと大人しくしようと思ってんスよ」
「リュウ、そうなの?」
「あざとすぎたッスからね」
「そうよね」
「そんな事ないですぅ」
口を尖らせて、顔の横で人差し指を立てている。やっぱあざとい。それを控えるんじゃないのか?
ロディ兄と王子と一緒に街へと向かう。乗ってきた幌馬車でだ。もちろん咲や隆、ロディ兄の従者のランスと王子の護衛のアルベルトも一緒だ。
皆、商人に見える格好をしている。が……
「やっぱ無理があるッス」
「リュウ、何が?」
「殿下ッス。どう見ても商人じゃないッス」
「リュウもね」
「え? どこら辺がッスか?」
「細マッチョな身体とその派手な髪かしら?」
「それは盲点ッス」
何言ってんだよ。教会に行く時にも同じ様な会話をしたぞ。
「1番商人らしくないのはココだろう」
「あたしは商人の息子です」
「男の子でいくんだね」
「はい、いきます」
「じゃあ、若ッスね」
「おう」
「ハハハハ。いいコンビだよ」
なんだと。隆とコンビは嫌だなぁ。まあ、咲よりマシか?
「お嬢さまぁ、何ですかぁ?」
「なんでもないわ」
「サキもココをお嬢様と呼んだら駄目じゃないか」
「あ、そうでしたぁ。若ッ♡」
また、♡を付けるんじゃない。嬉しくもなんともねーぞ。
「酷いですぅ」
馬鹿な事を言いながら、街に着いた。馬車止めから少し歩く。
「兄さま、何を見ますか?」
「そうだね、まず市場だよね」
「はい、そうですねッ」
「ココ、嬉しそうだね」
「だから、初めてなので嬉しいです」
「そうだった」
市場に着いて俺はテンションだだ下がりだ。
本当に品薄だった。まだ、午前中だというのに商品が並んでないんだ。野菜も、小麦も、肉もだ。あるのは雑貨位か。だからか買い物に来ている領民も少ない。
「これは酷いね」
「兄さま、しかも値段が高いですよ」
「本当だ」
「伯爵は何の手も打っていないのか?」
「盗賊団を捕縛するまでの間と思っているのかも知れませんね」
「ロディ、それにしても商品がなさすぎる。これだと民達は満足に食べられていないだろうに」
「そうかも知れませんね」
皆、そう思いながら市場を見て歩いていた。
投稿が遅くなりました。申し訳ありません。
なんせまだWi-Fiがないので(T . T)
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