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14ー芋掘り大会 Round 1

 ジャガイモの畝の前でしゃがんで準備する。


「サキには負けねー」

「キャハハ、受けて立ちますぅ!」


 くぅー! ゼッテーに勝ってやるぜ!


「これは早く掘ったら勝ちなの?」


 と、王子が俺に聞いてきた。

 

「そうですよ。優しく丁寧に、且つ早くです」

「うん、分かった」

「準備はいいかぁーッ!?」

 ――おうー!

 ――はぁ〜い!


 木箱に乗った父が、上げていた片腕を勢いよく振り下ろす。


「始めぇー!!」

 ――おおぉー!

 ――キャ〜ッ!


 意味不明。キャ〜ッて何だ? キャ〜ッて。ま、盛り上がるからいいけどさ。女子の黄色い声って、良いよねー。俺も今は女子だけど。


「殿下、最初は優しくです」

「うん」

「芋が見えてきたら、スコップで一気にです!」

「う、うん!」


 そうこうしているうちに、早速声が上がり出す。

 

 ――俺、1番!!

 ――げげー!

 ――掘り起こしましたぁ〜!

 ――やだぁ〜! めちゃ早いぃ〜!


「はい! 終わりましたぁ!」

「えッ!?」

「あらあらぁ? お嬢さまぁ、まだですかぁ?」

「クッソー!」

「キャハハ! お嬢さまぁ、クッソーなんて言っては駄目ですよぅ」


 あ、そうだった。つい、出ちゃうんだ。


「終わった!」

「今年も私の勝ちですねぇ」

「来年こそはッ!」

「ドンと受けて立ちますぅ! キャハハハ」

「あー、掘れない!」

「殿下、手伝いましょうか?」

「いや、僕1人で掘り起こしたいんだ!」

「もう少し深く掘る方が良いです」

「そうかい?」

「はい」


 なんだかんだと、結構な時間を掛けて王子はやっと掘り出した。顔に土が付いてしまっている。すかさず、そばにいたメイドのソフィリアが拭いている。


「お疲れ様でした、殿下」

「アハ、ありがとう。僕、凄く時間が掛かっちゃったね」

「殿下は初めてだから、仕方がないですよ」

「そうかな?」

「はい、そうです」

「ありがとう。楽しかった!」


 俺は、その時初めて王子の笑顔を見た。社交辞令での微笑みではなく、弾ける様なキラッキラな笑顔だ。それに、王子は途中から『僕』と言っていた。『私』ではなく『僕』だ。

 それが素なのだろう。今まで、毎日警戒し怯えながら暮らしていたんだ。楽しい事なんて、あったのだろうか。


「殿下、調理場に行きますよ!」

「え? 調理場?」

「はい。普段は使用人用の食堂なんですけど、掘りたてのお芋を揚げて皆で食べるんです!」

「芋を揚げるの?」

「はい、すっごく美味しいですよ。行きましょう!」


 俺は、思わず王子の手を取って引っ張っていた。


「分かった、分かった。アハハハ」

「サキ、行くわよ!」

「はいぃ、お嬢さまぁ!」

「早く行かないと、みんな来ちゃうわ。良い場所が取れないもの!」

「お嬢さまぁ、そんなに急がなくても大丈夫ですよぅ!」


 俺と王子が走る直ぐ後ろを、咲と王子付きのメイドのソフィリアが走って付いてくる。


「アハハハ。凄いや!」

「何がですか?」

「僕、こんなに走った事がないよ」

「えッ!? 大丈夫ですか? 休みますか?」

「大丈夫! 行こう!」


 王子の言葉を聞いて、思わず立ち止まった俺を今度は王子の方が先になって俺の手を引いて走って行く。スッキリとしたいい笑顔でだ。

 調理場に着くともう沢山の人がいた。みんな早いなぁ。毎年恒例だから、美味いの分かっているんだ!


「ココ! こっちこっち!」

「お嬢さまぁ、ロディ様が呼んでますぅ。席を取っていて下さったみたいですよぅ」

「うん、兄さま!」


 人を掻き分けて、ロディシスの元へと急ぐ。使用人やら兵やら、グチャグチャだ。無礼講もいいとこだ。

 今日は、調理場に続きの食堂から隣りの部屋まで全部仕切りを取っ払って開放してある。そこに、ズラリとテーブルや椅子を並べて全員集合だ。


「殿下、掘れましたか?」

「ああ。初めて掘ったよ」

「兄さま、今年の1番は誰ですか?」

「リュウだよ。ぶっち切りで1番だった」

「また今年もリュウですか?」

「うふふぅ。景品が楽しみですぅ!」

「え? どうして?」

「殿下、リュウとサキは姉弟なんですよ。2人共、ココ付きです」

「そうなんだ」

「リュウは去年も1番だったのです」

「それは凄いね」

「みなさん、飲み物持ってきました」

「リュウ、また1番だって?」

「はい、頂きました!」


 一体、何を頂いたのだろう?


「お嬢、その意味じゃないッス。1番を頂きましたって意味ッス」


 分かってるっての。だけど、景品は何だろう?


「リュウ! リュウエル・アサンミーヤ!」

「はい!」


 ほらほら、大将がお呼びだ。仕切りたがりの父がさ。


「2年連続だ! おめでとう!」

「あざーッス!」


 軽ッ! なんだ、その軽いノリは!? 超軽くね? 周りにいた者達が口々に、おめでとう! と、言いながら拍手をしている。


「今年の景品は、なんと! ワイン1樽だ! 持ってけ!」

「あざーッス!!」


 ――おおー!

 ――リュウ! ごちー!


 口々に何か言ってるよ。アハハハ、平和だ!


読んで頂きありがとうございます!

前作までとはちょっと雰囲気が違いますが大丈夫でしょうか?前世、極道の若頭と言う事もあり、言葉が悪いですがそのうち馴染みます。お嬢様になっていく予定です。

宜しければ、評価とブクマをお願いします!励みに先を頑張ります!

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