126ー反撃だ
俺と母、クリスティー先生は防御壁の上を目指す。咲と隆、ノワも一緒だ。クリスティー先生が、何故かアキも抱っこして連れている。ちびっ子には危険じゃないか?
「あ、そうだ。母さま」
「なあに、ココちゃん」
「母さまの戦闘服ができましたよ」
「あら、嬉しいわ。早速試着したいわ」
「はい、これが終わったら」
「そうね」
「ふふふ、お2人ともそろそろですよ」
これが、防御壁に上る間の母と俺の会話だ。全く緊迫感がない。
これ位が丁度良いんだ。肩の力を抜いて、自然体でいるんだ。それが1番の力を引き出す秘訣だ。俺はそう思っている。
もちろん、もっとヤバイ時は別だぜ?
「さあ、ココ様」
「はいッ、クリスティー先生」
防御壁の上に着いた俺は、下の様子を見渡しながら笛を胸元から取り出し思い切り吹いた。
――ピーーピーー!!
下で戦っているじーちゃんや父に兄、そして領主隊の隊員達が一斉に魔物から距離をとった。この合図は『距離をとれ』の合図だ。何故、距離をとるのか? それはもちろん決まっている。
「サキ、リュウ、いくぞッ!」
「おうッ!」
「はいですぅ!」
「「「アースウォール!」」」
先ずは、魔物との間に障壁を作る。そして俺はまた笛を吹く。
――ピピーーー!!
皆が障壁の方へと魔物を追い立て始めた。これは、『各自攻撃せよ』の合図だ。この場合は皆が魔物を障壁の方へと追い立てる。そう訓練している。
そして、下の様子を見て俺はまた笛を吹く。
――ピーピーピー!! ピーピーピー!!
また、隊員達が魔物から離れた。『魔法攻撃を開始するぞ』の合図だ。
「いっとけーッ!」
「「「エアリアルブロークン!」」」
これは風属性魔法の上級魔法だ。咲と隆と3人で、魔法を使う時は何パターンか決めている。
森の中だと火は使えない。だが、多数の魔物を一気に討伐したい。そんな時に使う魔法だ。
空気を凝縮させ、爆発を起こすんだ。それによって、爆風と空気の塊が広範囲で敵を襲う。一網打尽だ。
そして俺はまた笛を吹く。
――ピピーーー!!
魔法攻撃終了。『各自攻撃せよ』だ。
下を見ていると、じーちゃんや父が見えた。
「ココーッ! よくやったぞぉーッ!」
「はいッ!」
父が剣を持ち上げ叫んでいる。アハハ、上まで聞こえるなんてどんだけデカイ声なんだよ。
少し討ち漏らした魔物が森の奥へと逃げて行く。深追いはしない。まだ近くで息があるだろう魔物達を漏らさず討伐していく隊員達。もう大丈夫だ。
ああ、ほら。ロディ兄が上ってきた。
「ココ!」
「ロディ兄さま」
「よくやった、上出来だよ!」
そう言って俺をガシッと抱き締め頭を撫でる。
「はい」
「シールドも張ったのか?」
「はい、完璧ですよ!」
「アハハハ! ココ、スゴイぞ!」
ロディ兄のテンションが高い。普段はしないのに、俺の頭をガシガシと撫でてくる。
討伐でテンションが上がっているんだな。まあ、仕方ない。
「さあ、降りましょう。怪我人を治さないとでっす」
「はい、クリスティー先生」
今日は入り乱れていたからな。多少の怪我人は出ているだろう。
「えりあひーる」
「おぉ!」
びっくりだよ、マジで。そんな事、俺は予想もつかなかったよ。クリスティー先生、恐るべしだ。それで連れてきたのか?
「えへへ」
「アキ、凄いわ。いつの間に!?」
「クリスティー先生に教わったの」
「アキちゃんは癒しの能力が高いのでっす」
アキはいつの間にか、範囲回復が使える様になっていたんだ。
保護して直ぐにクリスティー先生は2人を鑑定眼で見ていたんだ。いや、クリスティー先生はエルフで精霊魔法の使い手だから鑑定眼ではなく精霊眼と言うのだそうだ。
ぶっちゃけ俺が持つスキル、鑑定眼の上位バージョンだ。
そして、逸早くアキに癒しの能力があるのを見抜いていた。そのクリスティー先生が言うには……
「ほんの少し教えただけなのでっす。そしたら最も簡単に覚えてしまいました!」
だ、そうだ。普通さ、4歳の子供に教えるか? と思ったんだ。
「ココ様、魔法は早くに修練する方が良いのでっす」
なら、俺達が8歳の鑑定式まで待っているのはどうなのよ?
「全く意味がありませんね。それまでの時間が勿体無いでっす」
あらら。全否定されちゃった。
「だからココ様も早い時期から使っていたでしょう? なのに今までご指導できなくて歯痒いのなんのッ!」
そうだったのかよ。そういえば、俺も小さい頃から母に教わって使っていたな。母が面白がって教えたんだ。
「私も仲間に入りたかったのでっす」
うん、ちょっと意味が不明だ。
とにかく、アキの『エリアヒール』のお陰で、隊員達は怪我も癒え元気に後始末をしている。
「さて、何がどうなっているかだ」
「ロディ兄さま?」
「捕まえたぞーッ!!」
「不審者2名確保!!」
後始末をしていた隊員が叫んでいる。
「ロディ兄さま」
「ああ。どうせ実行犯だろうけどね。黒幕には辿り着けないだろう。それでも、何もないよりはマシだ」
そう言って降りて行った。
「嫌だわ。本当にやめてほしいわね」
「奥様、本当にいい迷惑ですね」
呑気な人がここに2人もいるぞ。
「奥様、お嬢さまぁ、降りましょうぅ」
「サキ、そうね」
「あら? リュウ、ノワは?」
「ノワなら下にいるッスよ」
いつの間に? 途中まで一緒だったよな?
「あれッス。多分ノワが、不審者を見つけたんス」
「ノワちゃんは可愛いだけじゃなくて、とってもお利口さんよね」
「ノワちゃん途中から気付いていましたねッ」
え、そうなのか? 俺はそんな事全然気がつかなかったよ。
読んで頂き有難うございます!
少しですがお話が進み始めます。
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