123ー移動しよう
俺達がそんな事を考えている頃、ユリシスじーちゃんは邸に入っていた。
皆に聞こえる様に叫びながら指示を出していた。
「皆、武器を持てぃッ!!」
「お祖父様! 何が起こっているのですか!?」
「バルト、ロディ、どうやら裏の防御壁を破られたらしいッ!」
「父上ぇッ!」
「おうぅッ! 戦闘態勢だぁッ!!」
「おうぅッ!」
「守るぞぉッ!!」
「はいッ!」
ユリシスじーちゃん、さすがに百戦錬磨だ。皆を鼓舞していく。確実に戦う準備をしていた訳だ。
そして、父やバルト兄だけでなく、普段は頭脳派のロディ兄も手に武器を持ち臨戦態勢だ。
うちの皆は強い。従者達だけでなく、メイドさん達まで戦う気満々だ。皆手に武器を持っている。
ああ、俺は見たかったよ。メイドさん達が戦闘モードになっているのをさ。
だってカッコいいじゃん! え、そんな場合じゃない? まあ、そうなんだけど。
そして、もう1人のじーちゃんディオシスじーちゃんだ。
響き渡っていた合図の笛、これを吹いていたのがディオシスじーちゃんだ。
ディオシスじーちゃんは、1番危険な場所にいた。
見回りに出ていた領主隊の報告を受け、防御壁の状態を確認する為に走っていたディオシスじーちゃん。
防御壁の一部を、粉々に壊されているのを確認し取り敢えずの再建を試みていた。
どうするかというと、土属性魔法が得意な者を集めていたんだ。そして、一時的にでも防御壁を塞ごうとしていた。
だが、そんな中でも魔物は迫ってくる。それを倒しながら土属性魔法で防御壁の再建を試みる。さすが、ディオシスじーちゃんも冷静だ。
魔物が多少入ってしまってもそれ以上入れない様に、防御壁を再建しようとしているんだ。
壊されたままで、雪崩れ込まれるよりはずっといい。
「ディオシス様! 土属性魔法が得意な者を集めましたッ!」
「よしッ! よいか! 合図をしたらアースウォールだ! できない者はロックウォールでもストーンウォールでも構わん!」
「「はいッ!」」
「いくぞッ! 3 ! 2! 1!」
「「アースウォール!!」」
「「ロックウォール!!」」
こうして、領主隊とディオシスじーちゃんとで緊急の防御壁が作られた。
元ある防御壁ほどの強度や高さもない。一時しのぎだ。だが、この壁があるうちに体制を立て直せる。
この時点でディオシスじーちゃんが攻撃を始める合図の笛を吹いていたんだ。
この笛の合図で今どんな状況なのか分かる。
それに合わせて俺達も行動開始だ。
「リュウ、取り敢えず下の爺さん達と合流しましょう」
「了ッス」
「みんな、下に降りるわよ!」
「「はいッ!」」
「殿下、行きます」
「ああ、分かった!」
下の階にいるじーさん達と取り敢えず合流だ。
その後、向かいの屋舎にいるだろう母とクリスティー先生に合流したい。向こうには子供達もいる。守らないと。
階段を下へと下りて行く。2階にはロウ爺さんとルイソ爺さん、そして後から入ってきた爺さんが2人。
4人共、手にはショートソードを持っていた。ショートソードなんて、どこに置いてあったんだよ。俺、見た事ねーぞ。
「お嬢、みんな自前ッス」
「知らなかったわ」
「ココ嬢、僕の事は気にしなくてもいい。動きたいように動いてほしい」
「殿下」
「大丈夫だ、アルベルトもいる。向かいの屋舎に行けば良いんだね?」
「はいッ、取り敢えず向かいの屋舎にいる母やクリスティー先生と合流したいです!」
「よしッ、今のうちに行こう!」
おお、王子がやる気だ。今までの、ほんわかしていた王子とは印象が全く違う。自分の意思で決断している。
「元々、フィル殿下は剣術や体術にも秀でておられたのです。それをあんな別宮に閉じ込められたので……今の殿下の方が本来の殿下だと思います」
アルベルトが言った。別宮に軟禁されてから精神干渉も受けていたのだろう。性格まで変えてしまう精神干渉。
それだけ王子は優秀だったのだろうな。それを脅威とみなした者がいるんだ。
多分……この襲撃もそんな奴等じゃないか?
「ココ、多分そうだろう」
「キリシマ、そう思う?」
「ああ。あの防御壁が魔物に破られるはずがない」
「キリシマ、僕に構わずココ嬢を守ってくれ」
「何言ってんだ!?」
「ココ嬢を犠牲にはしたくないんだ」
「犠牲も何もみんな助かるんだよ!」
「そうです、殿下。大丈夫です!」
「はい、殿下!」
皆、全く諦めていない。これしき乗り越えてやるさ。そんな意気込みを込めた目をしている。
「キリシマ、ココ嬢、アルベルト分かった!」
「よし、爺さんいいッスか? 皆で向かいの屋舎へと移動するッス!」
「おう、いいぞ!」
「私は外の様子を見てくるんですねぇ」
爺さん達も平常心だ。誰も怖がったり慌てたりしていない。それがこの領地の強さなんだ。
「今ならまだ魔物はここまで来ていないんですねぇ。行くなら今ですねぇ」
ルイソ爺さんが戻って来て、今だと判断した。
よし。行くぞ。
「いい? 頑張って思いっきり走ってね。魔物が見えたとしても、構わず向かいに走るのよ!」
「「「「はいッ!」」」」
心配なのはミリーさん達だ。彼女達は普通の領民だ。
戦闘訓練をしている訳じゃない。魔物を間近で見た事もないだろう。
恐怖心で、足が動かなくなったりしなければ良いが。
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