118ー走りだした
翌日から王子は走り出したんだ。
「殿下! もう1周頑張りましょうッ!」
「ああッ!」
俺達が鍛練している間、護衛のアルベルトと一緒にその周りをゆっくりと走る。
今までは、ソフィと一緒にのんびりと歩いているだけだった。
まだ目覚めたばかりだぞ? なのに、走っているんだ。危なっかしい走りではない。しっかりと足に力を入れ勢いよく地面を蹴っている。ゆっくりとだが力強い走りだ。
「ふぁいとー!」
「ふぁいとッ!」
シュンとアキまで一緒に走っている。これがまたこの2人、まだ小さいのにさすが獣人なんだよ。軽く走っている感じで王子について行く。
獣人の身体能力や体力ってどうなってんだよ。まだちびっ子なのにさ。
この日から、鍛練チームとは別にユリシスじーちゃんとディオシスじーちゃん、それにシゲ爺が王子について走りだした。おっと忘れてた。ノワとシュン、アキも加えて王子チームだ。
それがまた、微笑ましいんだ。まあ、その原因はシュンとアキ兄妹とノワなんだけどな。
「ふふふ、可愛い」
「お嬢さまぁ、集中ですぅ!」
「アンアン!」
「ふぁいとッ!」
ノワが先頭を走って行く。尻尾をピンと立てて余裕の走りだ。可愛い。癒される……だが、今は俺達も鍛練中だ。
「ココアリア! 集中せんかぁッ!」
「お嬢様ぁ! ちゃんと気合い入れて下さいぃ!」
「おうぅーッ!」
「ココォッ! 何だその言葉使いはぁッ! 精神一到!」
――おおー!!
――はぁ〜い!!
本当、俺もあっちのチームに入りたい。
「ココしゃまー! ガンバでしゅー!」
「ココ! 余所見している場合かーッ!」
あっちのチームにまで注意されちゃったよ。
なんとか鍛練を終え、俺はいつもの通り膝に手をついて肩で息をする。もうヘロヘロだよ。
「ココ、午後から親方と会うんだ」
「ロディ兄さま、親方ですか?」
「以前、ココが提案していただろう。領地をシールドで覆うって」
「兄さま! 出来るのですか!?」
「親方と試行錯誤したんだけどね」
と、俺は鍛練の後ロディ兄に呼ばれて執務室へと来ている。
以前、俺が発案した領地の防衛についてだ。
魔石でシールドを発生できる事を知って、それで領地を覆えないかと話していたんだ。
領地全体でなくていい。森の境だけでも良いんだ。
シールドを張る事ができたら、それだけで避難する時間ができる。
そうすれば、助かる領民達もいるはずだ。
それを、ドワーフの親方とロディ兄は考えてくれていたらしい。
「まだ、試作の段階なんだ。魔石を嵌め込む柱の様な物を建てようかと思っているんだ」
「柱ですか?」
「ああ。ただね、その柱を魔物に倒されてしまうと元も子もない」
「兄さま、魔物避けを混ぜるんですよね?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、強度ですか?」
「そうなんだ」
強度か……とすると鉄筋コンクリートみたいな感じか? この世界で鉄筋の代わりになりそうな物ってなんだ? そうだなぁ……
「兄さま、中に鉄鉱石の芯を通して」
「鉄鉱石かい?」
「はい。何本かこれ位の芯を通すんです」
俺は、指で太さを示す。
「そんな細くて良いのかい?」
「はい。これを何本か通してその周りに魔物避けと樹脂や石灰、砂利や砂等を混ぜて固めたらどうでしょう?」
「なるほど……親方に実際に作って強度を確認してもらおうか」
「はい!」
たしか、鉄筋コンクリートってそんな感じだったよな? 建築関係は全然知らないけど。
「兄さま、特に高さは必要ないのです。魔石を嵌められるのなら地面にでも良いのです」
「ココ、地面だと埋もれてしまうだろう。だから少し高さは必要だ」
「そうですね。じゃあ、こう折れにくい高さで」
俺は、自分の膝丈位を手で示す。
「そうだね。問題はそこに誰が魔力を流すかなんだけどね」
「兄さま、邸と連動させられませんか?」
「邸とかい?」
「はい。何かあれば必ず邸にシールドを張ります。その時に連動させるのです」
「なるほど、連動か……」
どうやって連動させるのかは、俺は全然分からないけどな。
と、いう事で午後からロディ兄達と一緒にドワーフの親方の工房に来ている。
「でね、どうだろう?」
ロディ兄が、俺の案を親方に話したところだ。
「お嬢、またえれーもんを考えたなッ!」
「でも親方、できれば領民の命が守られるわ」
「確かにな! 連動かぁ……その、なんだ。魔石を嵌め込む柱だけどな……」
と、親方が考えて話してくれる。
要は、その魔石を嵌め込んだ柱を邸を中心に領地の境に等間隔で建てようという話だ。
「そうすっとだな、お嬢が言っていた様に魔力に反応してシールドが展開されると思うんだ」
「親方、クリスティー先生にも聞く方が良いかな?」
「そうだな、魔法は俺には分かんねーからな」
早速、クリスティー先生にも来てもらった。
「素晴らしいでっす! ココ様のそのアイデアは一体どこから生まれるのでしょうッ!?」
どこからと言われてもだ。ぶっちゃけ、なんとなくの思いつきだ。
「かなりの魔力が必要なのですよ! 普通なら無理でっす! しかぁしッ! ココ様と奥様の魔力があればなんとかなるでしょうッ!」
そうなのか? そりゃ良かったよ。なんか、クリスティー先生のテンションがおかしいぞ。
「なら、話は早いぜ。その魔石を嵌め込む柱だけどな……」
で、俺の鉄筋コンクリートの真似をした案が採用された。ちゃんと紙に描いて説明したんだ。
「これは頑丈だぜ! どっからこんな事を思いつくんだ!?」
すまないね、前世のパクリだ。
読んでいただき有難うございます!
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