112ー毒と呪い 2
「さて、フィル君の毒と呪いですね」
クリスティー先生が言うには、実行犯はソフィだった。
「そんな……ソフィ殿がまさかそんな事!?」
「ただし、ご自分の意志ではないのですよ」
「クリスティー先生、どういう事ですか?」
その時だ。廊下から大きな声が聞こえてきた。
「どうしてだッ!? なぜにぃッ!」
ああ、ユリシスじーちゃんだ。
「じーちゃん、落ち着けって!」
「これが落ち着いていられるものかッ!」
霧島もいるな。また、一緒だったのかよ。
そして、バタンとドアが開き雪崩れ込んできた。
ユリシスじーちゃん、ディオシスじーちゃん、霧島、シゲ爺、それにノワだ。
もう『チームじーちゃんズ』でも作っちゃうか? 最近いつも一緒だ。
霧島がフワリフワリ俺の肩に乗ってきた。
「ココ、どうなってんだ!?」
「これからクリスティー先生のお話しを聞くのよ」
「クリスティー先生ッ! 殿下はぁッ!?」
「おやおや、ユリシス様。大丈夫ですよ、もう手当はすんでいまっす」
そして、やっとクリスティー先生のお話しだ。
「ソフィさんと言いましたか? 彼女が最近毒に侵された事はありませんか?」
「あります。こちらに来て直ぐの頃です。部屋のクローゼットにサシェの様な物があったのです。そこに毒が仕込んであった事がありました。その時に彼女は倒れています」
「ロディ様、その時は彼女だけですか?」
「はい、その部屋に入ったのが彼女だけでしたので」
「その時でしょうね。サシェに仕込んであったのか、又は発動したら消滅するようにしてあったのか。何れにせよ、その時に魔法が掛けられ精神干渉をされていますね」
そんな前からなのかよ。あの時もっと詳しく調べていれば良かった。
「ココ様、不可抗力ですよ。こんな緻密な悪意のある事を誰が思いつきますか」
「クリスティー先生、念のためその時のサシェを保存してあります」
と、父の側近兼執事のシーゲルが言い出した。
「おや、そうなのですか? 分析してみましょう。で、それが置かれていたお部屋も見たいですね」
ジーゲル、やるじゃん!
「で、クリスティー先生。ココが考えた下着を着けているのに、どうしてまた毒と呪いなのでしょう?」
「はい、ロディ様。ご説明しましょうね」
これは、ソフィじゃないと不可能だっただろうとクリスティー先生の見解だ。
俺が作った下着や服は、1日中ずっと着ている訳ではない。必ず脱ぐ時がある。着替える時や、風呂に入る時に必ず脱ぐ。そんな少しの時間に根気よく毒を仕込み、呪いをかけていったのだろうと言う事だった。
「しかし、ソフィ殿は呪いを掛けることなんて出来ない筈です」
そうだな、アルベルトの言う通りだ。
「そうですね、ですから魔法で操られていたのでしょう。何らかの魔導具を持っているかも知れませんね。彼女がその部屋に入った時に何等かの罠が仕込んであったのではないでしょうか? これは普通に知られている魔法ではありません。それなりに詳しく専門的に学んだ者しか知らない魔法ですね」
例えばだ。火属性に耐性があるモンスターでも、それ以上の炎で攻撃するといくら耐性があったとしても耐えられない。それと同じだそうだ。
「いくら状態異常無効の物を身につけていたとしても、それ以上の事があれば状態異常に掛かってしまうのです。100パーセント無効にするものではありませんから。例えばですよ。毎日顔を洗う水に毒を入れられたりすると、蓄積してしまいまっす。毎日飲む水やお薬等もそうですね。そして、呪いでっす。これも毎日の積み重ねですね。そんな面倒な事が出来るのは、お世話をしている者が適任ではないでしょうか?」
油断した。あの時、ソフィだって倒れたんだ。その時にちゃんとクリスティー先生に見てもらっていれば良かったんだ。
「あたしのミスです。油断しました」
「いいえ、ココ様。これも予測に過ぎませんが、きっと誰かが反応すれば消滅する魔法陣でも仕組んであったのでしょう。彼女はそうとは知らずに毎日のお世話をしていただけでしょう。通常の鑑定では見破れないように隠蔽されていました」
隠蔽だって!?
「はい、そうでっす。フィル君にかけられた呪いは『存在意義を剥奪する』そんな呪いでした。お分かりですか? 自分はどうなっても仕方がない、そんな存在なんだと思わせるのでっす」
王子は『迫害されても仕方がない』と、話していた。あれが、そうなのか?
「ココ様、その通りでっす。自分で自分の心を傷付けるのでっす」
「クリスティー先生、呪いを掛けた者を特定できませんか?」
「ロディ様、今回あまりにも執拗で人間性を疑うような内容でしたので、実は呪詛返しをしておりまっす」
呪詛返し!? また怖いワードが出てきた。
「私が解呪した際に呪いの元に返しておりまっす。術者を特定することは無理ですが、代わりにその者の首筋や腕に棘模様のアザが浮き出ている筈でっす。そして実行した魔術師は、1人ではありませんね」
うわ、こっわッ。執念を感じるぜ。
「ココ様、仕掛けてくる方が悪いのでっす。呪いを掛けるにはそれなりの覚悟が必要でっす」
「クリスティー先生、ソフィは覚えているのですか?」
「さあ、微妙なところだと思いまっす。彼女は気持ちがそう強くない様ですから。強ければこんなに簡単には掛かりませんね」
執拗に仕掛けてくる。なんだ? 嫌な感じだな。
またまた王子の危機でっす。
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