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11ー毒

 早速だが、母と一緒に王子殿下の部屋へと来ている。母がノックをしようとしたところ……


「殿下! フィルドラクス殿下!」


 部屋の中からメイドの声が聞こえたんだ。只事ではない様だ。


「母さま」

「何かあったのかしらね?」

 

 また、呑気な言い様だ。だが、母が直ぐに部屋の中へと入って行く。


「どうされました?」

「殿下が……! 急に苦しまれて!」


 見ると、王子殿下が身体を屈めて苦しそうに顔を歪めている。真っ青な顔をして脂汗まで流している。これは普通じゃないぞ。どうしたんだ?


「ベッドへお連れしましょう」

「はい!」


 母がメイドに指示して王子をベッドへと運ぶ。その間に母が俺に耳打ちして来た。悪魔の囁きだ。


「ココちゃん、今のうちに見ちゃってね」


 えぇー、やっぱり? 本当に見るのかよ。仕方がないなぁ……と、俺は鑑定眼で王子を見る。

 ……なんだって!? ビックリだよ! そこまでするのか!? 一体誰がこんな事を!? 俺は母に耳打ちをする。


「母さま、毒ですわ」

「まあ……!」


 母が、王子が寝かされたベッドの横に立ち、腰を落として目線を合わせ王子の手をそっと取る。


「殿下、私は聖属性魔法が使えますのよ。処置させて頂いても宜しいでしょうか?」

「そんな……お手を煩わせる訳にはいきません」


 苦しそうな顔をしながらも、王子は気を遣っている。健気だ。俺、前世のあの歳の頃って何してただろう? 確実にな〜んも考えてなかったぞ。ペットの霧島と一緒にお腹出して昼寝していて姉貴に踏ん付けられていたぞ。


「殿下、お願い致しましょう」

「しかし……ソフィ……うぅ……」

「殿下、直ぐに済みますわ。よろしいですね?」

「は、はい……お願いします」

「はい」


 母は王子に向かってニッコリしてから手を翳し、『アンチドーテ』と唱えた。


「夫人……それはまさか……毒?」

「ええ、王子殿下。毒に侵されておられましたわ」

「そんな……そこまで!?」


 ソフィと呼ばれたメイドが驚いて言葉が続かない。そりゃそうだ。迫害なんて酷い事をしておきながら、その上毒だ。しかも、遅効性の毒だったんだ。後からジワジワと身体を蝕んでいくんだ。いくら母親が違うと言っても兄弟じゃないか。いや、王妃が指示しているかも知れないのか。誰が指示してるんだ? そんな事を考えながら、俺は再度、鑑定眼で王子を見る。ボロボロじゃないか。


「母さま、ヒールもお願いします」

「そう? 分かったわ」


 母が『ヒール』と唱えると淡い光に王子が包まれた。どんどん顔色が戻ってくる。呼吸も落ち着いてきた。もう大丈夫そうだ。


「ああ、とても楽になりました。ありがとう」

「とんでもございませんわ。お腹は減っていませんか? お食事はされましたか?」

「はい、道中は伯爵が気に掛けて下さって、いつも沢山食べさせて頂きました」

「それは良かったですわ。では、お飲み物をご用意致しましょうね」


 母が、メイドに目配せをする。


「ありがとう」

「今は身体を休めるのが1番ですわ。ゆっくりなさって下さい」


 母が、王子付きのメイドへと目配せをして部屋を出て行く。俺も母の後に続く。こりゃ、思っていた以上に酷い。

 俺達の後を付いて部屋を出て来たメイドに母が指示をする。


「分かっていますわね? 他言無用ですわよ」

「はい。殿下の命を救って頂き有難うございます」


 ソフィと呼ばれていた第3王子付きのメイド、ソフィリア・アローレンが深々と頭を下げた。少し震えている様に見える。その様子を見る限りこのメイドは関係ない様だ。王子の1番そばにいるメイドだ。それだけ、毒を盛る機会もあるだろうと思ったのだが。

 ソフィは、オレンジブラウンの髪をお団子にしていて、オレンジの瞳だ。歳はロディシスより少し上だろうか? 王子の母である側室様が生きておられた頃から付いているらしい。王子殿下なのに侍女じゃないのか。侍従もいない。どれだけ迫害していたんだ。


「ソフィ殿! どうしました!?」


 王子の護衛が廊下を急ぎ足でやって来た。


「何でもありませんのよ。殿下の護衛だったかしら?」

「はい。護衛のアルベルト・シュタインと申します」

「主人の執務室までご一緒しましょう」

「は、はい」


 そうだよ、こんな廊下なんかでは話せない話なんだよ。

 第3王子の護衛、アルベルト・シュタイン。マロン色の短髪に、栗色の瞳で優しそうな目をしている。

 しかし、まいったなぁ。初日からこれだ。どんな仕打ちを受けていたんだ。いくらなんでもひど過ぎる。この世界はこれが普通なのか? そんな事ないよな。王族だからか? 俺はこの家に生まれて良かったよ。


 俺と母、護衛のアルベルトやメイドのソフィリアと一緒にまた父の執務室へと向かった。


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