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第95話 謝罪と報告


「ふあ~あ、よく眠れた」


 王都からアニックの街へ無事に帰ってきた昨日の夜は本当によく眠れた。道中の野宿はともかく、王都での高級宿では今の俺の部屋のベッドよりも寝心地は良かったが、それでも昨日ほどぐっすりとは眠れなかった。


 やはり眠り慣れたこのエルミー達のパーティハウスが一番落ち着く場所だな。


「ソーマ、おはよう。顔色がいいな、よく眠れたようでなによりだぞ」


「エルミー、おはよう。やっぱりここが一番落ち着くよ。朝ご飯の準備をしちゃうね」


 1階に降りるとすでにエルミーは起きていた。疲れていたとはいえ、昨日はだいぶ早い時間に寝たから、今日は朝に起きることができた。


 今日からは王都でたくさん購入してきた味噌と昆布もどきを使って毎朝味噌汁が飲めるからな。やはり日本人として毎朝味噌汁が飲めるということは非常に重要である。




「ソーマ殿、昨日はよく眠れましたかな? 今日は午後からでもよろしかったのですが」


「おかげさまで昨日は本当にぐっすり眠れました。目も覚めて疲れもほとんどないので大丈夫ですよ」


 実はあのあとパーティハウスでフロラがパンツ一枚の姿で1階に降りてくるというハプニングがあった。おかげさまで一気に目が覚めている。


 パーティハウスでみんなと暮らし始めてすぐのころは、フェリスが何回か同じようなことをしてしまったことはあったが、フロラがこんなミスをしたのは初めてだ。王都への長距離移動でフロラもよっぽど疲れていたんだろうな。


 ……フロラの胸のふくらみはささやかだが、真っ白な肌がとても綺麗だった。最近はこういうハプニングが少なくなってきていたこともあって、あまりにも刺激的過ぎたな。


「ソーマ殿が昨日街に戻ってきたこともあり、治療は午後からと伝えていたのですが、すでに大勢の患者が治療所に並んでおります。ソーマ殿が問題ないようでしたら、早速治療をお願いしたいと思います」


「ええ、もちろん大丈夫ですよ。それでは治療を始めましょう」


「……その前にひとつだけ報告しなければならないことと、謝らなければならないことがあります」


「えっ!?」


 なぜか冒険者ギルドマスターのターリアさんが突然頭を下げてきた。


「実は3日ほど前に、この街のすべての孤児院に襲撃があり、パンを販売している屋台がすべて壊されるという事件が起こりました」


「えっ、襲撃!?」


 まさか例の悪徳治療士の差し金か! リーチェは!? 院長のマーヴィンさんやミーナさんは!?


「落ち着いてください! 屋台が壊されただけで、大きな怪我をした者はおりませぬ」


「そ、そうですか……本当に良かった!」


 とりあえずみんなが無事なようで心底ほっとした。俺が街を離れている時にリーチェ達に何かあったら、本当に後悔していたところだった。


「しかし、どういうことだ。襲撃したやつらは捕まえることができたのか?」


 エルミーの言う通り、いったいどこのどいつが何のためにそんなことを?


「……残念ながら襲撃者については今調査をしているところだよ。襲撃は深夜から明け方にかけて行われたらしい。孤児院の子供達が襲撃した犯人を見たようだが、7~8人の集団だったようだ。こちらはまだ調査中だよ」


「しかしなんでまた孤児院なんかを襲撃したんだ? もうパンのレシピはとっくに公開しているんだろ?」


「ああ。フェリスの言う通り、ソーマ殿がこの街を出発してから1週間後には例のパンのレシピを有料で公開している。もうすでに例のパンの販売を始めている店もあるくらいだよ」


 元の世界の知識を使って果物から作った天然酵母を使った発酵した柔らかいパン。みんなで相談した結果、このパンのレシピを有料で公開することにした。


 孤児院やパン屋のドルディアさんのお店で例のパンを独占して売り続けると、レシピを狙ってちょっかいを出してくる同業者や貴族が出てくる可能性があった。


 しばらくはこの街でそこそこ知名度のある俺がプロデュースしたこともあって、手を出してくるやつはいないが、独占状態が続けばどうなるか分からないからな。


 孤児院もドルディアさんのお店も十分にアドバンテージを取れたことだし、レシピを公開しても十分な売り上げは確保できる。それにレシピを公開することで、よりおいしいパンがこの街で食べられるようになる。


 パンのレシピは公開しているし、孤児院をわざわざ狙うということは金目的の強盗でもない。


「……パンのレシピが目的じゃないとするとソーマへの嫌がらせが目的?」


「っ!? ドルディアさんやユージャさんやデルガルトさんは無事ですか!」


 この街で特に俺と関わりがあるのはパン屋のドルディアさんやポーション屋のユージャさん、元鍛冶師のデルガルトさん達だ。


「ワシらもそれは考えて、すでにソーマ殿に関わりのある者を警備しておりますが、今のところ彼らは狙われておりません」


「それはよかった」


 そうなると俺に対する嫌がらせの線が濃いか。人を狙っていないということは、そこまで大きな問題にする気はないということなのかな。やはり例の治療士の差し金の可能性が高そうだ。


「襲撃者については子供達からの証言をもとに調査しておりますので、もうしばらくお待ちください」


「……わかりました。俺も今日の治療が終わったら孤児院に寄ってみます」


「承知しました。本来ならば昨日お伝えすべきでしたのに、ワシの判断で今日お伝えしました。本当に申し訳ありません」


「いえ。ターリアさんのお気遣いに感謝します」


 昨日俺に伝えなかったのは俺に気を使ってくれていたのだろう。昨日その報告を受けたところで、俺がすぐにできることは何もない。


 王都からの道のりで疲れていたとはいえ、その報告を受けていたら、昨日はあんなにゆっくりと休めてはいなかったはずだ。その心遣いは本当にありがたいと思う。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。

誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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聖男


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