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第87話 ホブゴブリン


「……ここに閉じ込められていたようだな」


「でも今はいねえってことは、連れ出されている可能性が高えな」


 ゴブリンの巣穴の広場の先へ進むと、そこには木の柵でできた牢屋がある。どうやらここに攫った男を閉じ込めていたようだ。


「人を引きずったようなあとがあります! 急ぎましょう!」


 確かに地面に人を引きずったようなあとがある。このあとを追えば、残りのゴブリン達がいるに違いない。


「くそ、巣穴の外に逃げたようだな」


 さらに先へ進むと洞窟の外に出た。出口はうまく岩肌にカモフラージュされており、ここに洞窟があるのか分からないようになっている。見張りを置いたり、非常用の脱出口を準備していたり、どうやらこの世界のゴブリン達はかなり知能があるみたいだ。


「……人を引きずったあとの他に、通常のゴブリンよりも大きな足跡があるな」


 確かに地面にはゴブリン数体の他に、一際大きな足跡があった。


「おそらくはホブゴブリンだ。この群れのボスだろうな」


 ゴブリンメイジやらホブゴブリンやら、ゴブリンにも様々な種類が存在するらしい。


「ホブゴブリンだろうと、このメンバーなら問題ねえ。とはいえあの数とホブゴブリンだったら、ランクの低い冒険者だと手も足も出なかっただろうな」


「そうだね。たまたまこの道を通って、今のうちに潰せておけて本当に良かったよ。あとは攫われた男性が無事なら、本当に良いのだけれどね」


 どうやらたとえホブゴブリンであろうと、みんななら大丈夫なようだ。単体や数体のゴブリンであれば、普通の駆け出し冒険者でも倒すことができるが、やはり数は力である。外に出ているゴブリンも含めれば100匹近くいるゴブリンを、ランクの低い冒険者で倒すことは難しい。


 ……俺だったら武器を持っていたとしても、1匹倒せるかどうかも怪しいところである。そもそもこの世界では女性のほうが力も魔法も強いらしいからな。



 

「いたぞ!」


「見つけました!」


 洞窟の外に出て森の中を進んで数分、すぐにゴブリン達の集団に追いついた。ホブゴブリンは他のゴブリンに比べてだいぶ身体が大きいようで、その痕跡を追うことは容易であった。


 ゴブリン達の中に一体だけ他のゴブリンの背丈の倍以上ある個体がいる。普通のゴブリンの大きさは1mくらいだが、ホブゴブリンの大きさはその倍以上で俺よりも大きい。やはりというべきか、このホブゴブリンにも胸はあるのでメスらしい。


 その顔はゴブリン達と同じ醜悪な顔をしており、木でできたこん棒のような巨大な武器を右手で持っている。そしてホブゴブリンの左肩にはひとりの裸の男性が担がれていた。


「ゲグルルルル!!」


「ゲギャギャ!」


 向こうも俺達に気付いたようだ。ホブゴブリンの周囲には5体のゴブリンがおり、もうひとりの男性を引きずって進んでいる。そしてゴブリン達の腹は大きくなっていた。……つまりはそういうことなのだろう。


「男性の救助を最優先! ティアはあのデカいのを頼む!」


「任せておいてくれたまえ!」


 エルミーとティアさんがゴブリン達へと突っ込んでいく。


「ゲグルルル!」

 

「くっ! エルミー、任せたよ!」


「ああ!」


 ホブゴブリンが臨戦態勢に入り、肩に担いでいた男性を軽々と片手で持ち上げ、思いっきり2人のほうへ投げ飛ばした。


「……ふう、こちらは大丈夫だ!」


 普通の人なら間違いなく一緒に吹き飛ばされてしまうほどの速度だが、エルミーはその男性を見事にダメージを受けることなく受け止めた。


「せいやあああ!」


「グギャアアア!」


 うおっ、マジか!?


 ティアさんの斧がホブゴブリンをたった一撃で真っ二つにした。しかもホブゴブリンが振るってきたこん棒ごとである。


 本当にものすごい力だな。闇ギルドのアジトの地下室への扉を無理やり破壊した時と同様に、よっぽどの力がなければこうはできないはずだ。エルミーはスピードタイプで、ティアさんはパワータイプか。エルミーはティアさんのことが少し苦手だと言っていたが、2人とも本当に良いチームワークだと思うぞ。


「ゲギャギャ!?」


「ギャギャギャ!」


 群れのボスがあっさりとやられたことにより、残りのゴブリン達に動揺が走る。そして残りのひとりの男性を人質にするかのように俺達の前に突き付けてきた。


 わざわざ巣穴から男2人を連れてきたのは、逃げ切れた場合には新しい仲間を増やすことと、万が一の際は人質にするためのようだ。本当にずるがしこい奴らだ。


「ソーマ、いくよ!」


「ソーマ様、お願いします!」


「任せて!」


 最後の最後で、今まで何ひとつ出番がなかった俺にも役に立てることができた!


障壁魔法(バリア)!」


 障壁魔法を使い、目の前に突き付けられた男性の四方に障壁を張る。


「エアカッター!」


「アイシクルバレッド!」


「ギャギャ!?」


「ゲギャギャ!」


 人質にしている男性がいるにもかかわらず、魔法を撃ってきたことにゴブリン達は驚くが、フロラの風魔法とルネスさんの氷魔法によりゴブリン達が一掃される。


「うう………………」


「大丈夫です、まだ生きております!」


 すぐにジェロムさんが男性に駆け寄ってくれた。障壁魔法のおかげで、攫われた男性も無事だったようだ。


 何度も練習してきた障壁魔法がようやくまともに役に立ってくれて本当に良かったよ。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。

誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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聖男


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