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第85話 ゴブリンの巣穴


 この世界のゴブリンは基本的に単独で行動をする。しかし、稀にゴブリン達が集まって群れを作る。そしてゴブリンの群れは巣を作り、狩りをして人族の男を攫い、さらに群れを大きくしていくらしい。


 この世界のゴブリンはメスしか生まれないため、人族の男を攫って繁殖する。そもそも、どうやってその気のない男を勃たせるのかという点についてだが、この世界には森や草原のあちこちに、強制的に生物を発情させる幻覚剤と興奮剤が混ざったような草が生えているらしい。


 ゴブリンやオーク達はその草を男に無理矢理食べさせて繁殖をする。盗賊達や闇ギルドの連中などもその草を元に薬を精製し、男を犯すそうだ。他にも男を発情させる魔法なんかもあったりするらしい。


 改めてとんでもない世界だな……


「こいつらの武器や防具もゴブリン達が持つにしては上等な代物だ。おそらく人を襲って奪ったものだろう。それに先発隊だけでもこれだけの数だ。こいつらの巣に男性が連れ去られた可能性が高いな」


 エルミーの言う通り、ゴブリンが持っていた武器の中には、石斧や木でできた槍の他にも金属製のナイフがあった。金属製の武器は知能の低いゴブリン達では作れないらしい。


「もしも男が連れ去られたとしたら、早く救出しないと手遅れになるぜ」


 肉体的……というよりは精神的にだろう。もしも俺があの醜悪なメスゴブリン達に連れ去られて、強制的に大勢のメスゴブリン達に犯されて子供を作らさせられたら……うん、死にたくなると思うに違いない。


「ゴブリン達の繁殖力はかなりのものです。基本的に我々冒険者がゴブリンの群れや巣を発見したら、可能な限り殲滅し、殲滅が難しいと判断する場合には、即座に冒険者ギルドへ報告する義務があります」


「ティアの言う通りなんだが、現在はソーマの護衛依頼が最優先だ。ソーマを安全に護衛して街まで帰り、冒険者ギルドに報告するのが適切な行動なのだろう……」


 ティアさんとエルミーが言いたいことはよく分かる。今は護衛対象の俺がいるわけだし、たとえゴブリンが相手だとしても、少しでも危険があるのなら、無理をする必要性はない。


 しかし、まだ生存者のいる可能性があるなら、それを助けたいと、きっとここにいる誰もが思っているに違いない。


「……俺も障壁魔法や回復魔法が使えるから、みんなの援護くらいはできるよ。もしも生存者のいる可能性があるなら、みんなで助けてあげてほしい」


 俺も戦うことはできないが、援護くらいはできる。エルミー達やティアさん達はAランク冒険者だし、御者のポーラさんとイレイさんも凄腕の御者なので、ゴブリン達なら問題なく倒せるはずだ。


 それに同じ男性として、もしもゴブリンに捕らえられている人がいるとしたら、なんとしても助け出してあげたい。もちろん貞操の危機という意味で、メスゴブリン達の巣に飛び込むのはものすごく怖いけどな……


「ソーマ様……」


「ソーマ……」


「大丈夫だ、ゴブリン如きに遅れを取りはしねえよ!」


「ああ、俺達も力になるぜ!」


「ソーマ様、必ず生存者を救い出しましょう!」


「はい!」


 同じ男であるジェロムさんもルネスさんも同じ気持ちだったようだ。危険はあるが、みんなと一緒ならきっとなんとかなるに違いない!




「……洞窟の前に見張りもいる。ここがゴブリン達の巣穴で間違いないようだ」


 あのあとすぐにゴブリンの巣の探索を行った。どうやらあのゴブリン達は単独の小隊で動いていたようだ。そいつらの痕跡を追ってゴブリン達の巣穴を発見した。洞窟の入り口には数匹の見張りもいる。


 この洞窟の中にゴブリン達の巣があり、ここを拠点として近くにある道を通る人を襲っていたのだろう。この道は王都と近くにあるいくつかの村を繋いでいるため、人通りもそれなりにはある。


「ゴブリンがどれだけいるのかが分からないのは少し怖いところだけれど、引き際さえ見誤らなければ、これだけの戦力なら大丈夫だよ」


「そうだな。ティアの言う通り引き際だけは見誤らないように注意しよう。ポーラとイレイは洞窟の前で待機し、外に出ていたゴブリンが戻ってきたら始末を頼む。巣穴で挟撃されてしまうと面倒だからな」


「ああ、任せろ」


「承りました」


「基本的に私とティアで前に出る。フェリスは後ろのみんなを守ってくれ」


「おう、任せておけ」


「フロラとルネスは魔法で私とティアの援護を頼む」


「うん、任せて」


「了解です」


「ソーマはその後ろで私達に何かあったら回復を頼む。ジェロムは最後尾で後ろへの警戒を頼む」


「了解」


「わかりました」


 エルミーが次々と指示を飛ばしていく。さすがAランク冒険者パーティのリーダー、一時的なメンバーでもすぐに隊列を適切な指示をしている。




 シュッ


「ゲギャ!?」


 ザンッ


「ゲギ……」


 ザンッ


 速すぎる……


 洞窟の前で見張りをしているゴブリン2匹を、叫ぶ間もなく一瞬で切り捨てるエルミー。


 エルミーの速さはエルミーのジョブである『剣士』おかげというわけではない。そもそも剣士のジョブはとてもありふれたジョブであり、レアなジョブではないらしい。


 剣士は普通のジョブよりも身体能力が上がり、剣技が向上するらしいが、エルミーの速さはエルミー自身による鍛錬のおかげだ。自分自身を極限まで鍛え上げることにより、あの若さでAランク冒険者まで上り詰めたと聞いている。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。

誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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聖男


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